2024.4.12
ワクチン療法の基本的な考え方は、特定の病原体が体内に侵入する前にその病原体に対する(=特異的な)免疫力を高めておこう、というものです。
私たちの体内では絶えず「自己」でないもの(抗原)を排除する仕組みが働いています。なかでも免疫細胞の一種であるリンパ球は、病原体を1種類ずつ、特異的に認識して排除した上、その相手を記憶して再び同じ病原体に出会ったときにすぐに認識・排除に移れるよう準備します(抗原抗体反応)。これをうまく利用したのがワクチン療法で、毒性を弱めたり死滅させた病原体を接種してリンパ球にあらかじめ記憶させ襲来本番に備えます。
「がんを治すワクチン(がんワクチン)」という発想の始まりは、1991年にヒトのがんではじめて「正常組織でほとんど発現が見られず、がんでのみ発現が認められる遺伝子」が確認されたことによります。この遺伝子をもとに生み出される物質を「がん抗原」として標的にすれば、抗がん剤や放射線治療と違って正常組織を傷害することなく、がん細胞のみを攻撃することが可能だろう、という考え方が出て来たのです。もちろん、副作用が起こりにくことが予想されます。
そこで本来のワクチン療法の意味からは少し逸脱しますが、抗原抗体反応のような特異的な免疫応答を人為的に作り出すという点で「ワクチン」の言葉が使われるようになりました。
がんを治すワクチン療法、すなわちがんワクチン療法には「樹状細胞ワクチン療法」と「ペプチドワクチン療法」の2種類があります。