2025.3.11
患者様は今年の3月11日、晴れて81歳のお誕生日を迎えられました。
2020年8月、膠芽腫の診断を受け手術を行った際には「余命半年」と告げられましたが、2025年8月には、いよいよ診断から5年の節目を迎えます。
現在、主治医のもとで抗がん剤治療を継続しつつ、当院では樹状細胞ワクチン療法と免疫チェックポイント阻害剤を併用した治療を続けています。
ご子息様はお母様を深く思いやり、脳腫瘍の治療について日々学ばれ、主治医とも積極的に意見を交わしながら、まさに三人四脚で治療に取り組まれています。
遺伝子パネル検査ではFGFR3の融合遺伝子が検出されており、それを踏まえて分子標的治療、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、ウイルス療法(G47Δ)などの選択肢について、外来のたびにご子息様と共に慎重に検討を重ねています。
この5年弱の間には、脳梗塞や大腿骨頸部骨折という大きな困難にも見舞われました。また、新たな樹状細胞ワクチンを製造するための手術にも果敢に挑まれました。
ご年齢や脳梗塞によるQOLの低下を考慮しながら、今後の治療戦略をどのように描くべきか、ご子息様と共に一つひとつ丁寧に道筋を探っています。
患者様の笑顔を拝見するたびに、医療人としてこの歩みを忘れてはならないと、あらためて心に刻みます。
患者様とご家族に寄り添い、ともに歩む医療を、これからも大切に育んでまいります。