投稿日:2026.1.23/更新日:2026.1.23
リンパ腫の治療法は、近年大きく進歩しています。薬物療法や放射線治療といったこれまでの治療法に加えて、造血幹細胞移植や免疫細胞療法など、新しい方法が確立されてきました。病気のタイプや進行度、患者さまの体の状態に合わせて、もっとも合っている治療法を選ぶことができます。
本記事では、リンパ腫の治療方法や生存率について、詳しく解説します。
リンパ腫の治療には、いくつかの方法があります。
主な治療法としては、薬を使った「薬物療法」、放射線を当てる「放射線治療」、造血幹細胞を移植する「造血幹細胞移植」があります。また、最近では患者さま自身の免疫の力を活用する「免疫細胞療法」も治療方法のひとつとなっています。それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。
リンパ腫の治療では、複数の薬を組み合わせて使う方法が中心となっています。
例えば、非ホジキンリンパ腫では、3種類の抗がん剤とステロイドを組み合わせたCHOP療法や、これにリツキシマブ(リツキサン)という薬を加えたR-CHOP療法などがよく用いられています。
最近では、ポラツズマブ ベドチン(ポライビー)を使ったPola-R-CHP療法や、ベンダムスチン(トレアキシン)とリツキシマブ(リツキサン)を組み合わせたBR療法なども選択肢に加わりました。
ホジキンリンパ腫に対しては、4種類の抗がん剤を使うABVD療法や、ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス)を含むA-AVD療法などがあります。
これらの治療は、入院をせずに通院で受けることが可能です。病気のタイプや患者さまの体の状態に合わせて選んでいきます。再発した場合には、最初とは異なる組み合わせの薬を使って、改善を目指していきます。
ゆっくりと進行するタイプのリンパ腫で、病変が限られた範囲にとどまっている場合は、放射線治療だけで対応することもあります。
放射線治療は、病気を治すことを目指す場合だけでなく、つらい症状を一時的に和らげて生活の質を保つ目的でも行われます。また、造血幹細胞移植を行う前の準備として使うケースもあります。
造血幹細胞移植は、血液を作る細胞のもとになる造血幹細胞を移植する治療法です。
この治療には大きく2つのタイプがあります。
一つは「自家移植」で、患者さま自身の造血幹細胞をあらかじめ採取して冷凍保存しておき、強力な抗がん剤治療の後に体に戻す方法です。
もう一つは「同種移植」で、提供者(ドナー)から造血幹細胞をいただく方法です。
リンパ腫の治療では、自家移植が主に選ばれています。特に自家末梢血幹細胞移植という方法がよく用いられます。これは、造血幹細胞を増やす薬(G-CSF)を使って血液中に造血幹細胞を送り出し、専用の装置で採取する方法です。通常、造血幹細胞は骨髄の中にいるため、血液中から取り出せるようにする必要があります。
免疫細胞療法は、患者さま自身の免疫の力を活用してがんと闘う治療法です。体の中にある免疫細胞を取り出して、処理を加えたり、数を増やしたりしてから体に戻していきます。
近年では技術の進歩により、さまざまなタイプの免疫細胞療法が開発されています。それぞれに特徴があり、患者さまの状態に合わせて、どの方法にするか選んでいきます。
人間の体には、異物から身を守る免疫システムがあります。この免疫システムは慎重に働くようになっていて、簡単には攻撃のスイッチが入らないようになっています。もし簡単にスイッチが入ってしまうと、食べ物や体に住む無害な細菌にまで反応してしまい、アレルギーのような問題が起きてしまうからです。
免疫の働きを調整しているのは、T細胞というリンパ球です。がんが発症してしまうのは、このT細胞のスイッチががん細胞に対して入らなくなった状態だと考えられています。(実際には、抗原消失やMHC低下、T細胞の疲弊、免疫抑制性の腫瘍微小環境など複数要因が関係しています。)
CAR-T細胞療法は、バイオテクノロジーの技術を使って、患者さま自身のαβT細胞にがんへの攻撃スイッチを入れられるようにした治療法です。「CAR」というのは「キメラ抗原受容体」の略で、異なる機能を持つパーツを組み合わせたセンサーのようなものです。これをT細胞に取り付けることで、がん細胞を見つけて攻撃できるようにします。(現在承認されているCAR-T細胞療法は、主にCD19やBCMAなど特定抗原に反応するように設計されています。)
しかしこれは、すべての患者さまに効果があるわけではありません。リンパ腫が悪性だった場合、治る方は半分に満たないのが現状です。まだ治療法としては新しいため、長期的な効果や副作用についても研究が続けられています。それでも、従来治療が効きにくかった方に新しい選択肢を提供し、根治や長期寛解の可能性を拓いた点は大きな前進といえます。
そして、この治療法には課題もあります。CAR-T細胞は患者さま自身のリンパ球から作るため、製造に6〜8週間かかります。その間に病状が進行してしまうリスクや、何度も抗がん剤治療を受けた患者さまではリンパ球が弱っていて製造できないこともあります。
また、免疫が過剰に働いてしまう副作用にも注意が必要です。発熱や筋肉痛が起きたり、重い場合はショック状態になることもあります。そのため、投与後は2〜3週間の経過観察が必要です。
▼代表的なCAR-T製品
・Kymriah®(チサゲンレクルユーセル / tisagenlecleucel:CD19)
・Yescarta®(アキシカブタゲン シロルユーセル / axicabtagene ciloleucel:CD19)
・Breyanzi®(リソカブタゲン マラルユーセル / lisocabtagene maraleucel:CD19)
・Tecartus®(ブレクシカブタゲン オートルユーセル / brexucabtagene autoleucel:CD19)
・Abecma®(イデカブタゲン ビクルユーセル / idecabtagene vicleucel:BCMA)
・Carvykti®(シルタカブタゲン オートルユーセル / ciltacabtagene autoleucel:BCMA)
アルファ・ベータT細胞療法は、がんへの攻撃力がもっとも強い細胞の一つであるT細胞を活性化させて増やしてから体内へ戻す治療法です。T細胞の多くは「アルファ・ベータT細胞」という種類であることから、この名前がつけられています。
CAR-Tでは、このアルファ・ベータT細胞に「CAR(キメラ抗原受容体)」を導入して特定の標的抗原を認識できるように設計します。現在の承認CAR-T細胞療法の標的は主にCD19やBCMAです。
この治療法は、特定のがん抗原(がん細胞の標的(目印))に頼らずに効果を発揮します。そのため、がん細胞の目印がはっきりしない場合や、がん細胞が目印を隠してしまっている場合でも対応可能です。
がん患者さまは、免疫の働きにブレーキがかかってしまっていることが多くあります。この治療法には、そのブレーキを外す働きもあることが分かっているため、免疫療法の効果を高めることが期待されています。
NK細胞療法は、免疫療法のひとつです。
免疫療法とは、患者さま自身の免疫力を強化して、がん細胞に対抗する治療法のことを指します。がん細胞の増殖を抑えることに加えて、免疫力そのものを高めることを目指す治療です。
NK細胞療法では、患者さまの血液からNK細胞を取り出し、活性化させて培養します。特殊な培養培地を使うことで、がん細胞への攻撃能力が高いNK細胞を効率良く増やすことができます。
培養して数を増やし、力を強めたNK細胞を点滴で体内に戻すのがこの治療法です。安全性が高いことが特徴で、他のがん治療と組み合わせることもできます。
またCAR技術を用いたCAR-NK細胞療法も研究が進んでおり、拒絶反応(GVHD)が低く、重い副作用(CRS/ICANSなど)が比較的少ない傾向が報告されています。一方で、体内での持続性と大規模製造の再現性が課題で、普及はこれからの領域になります。
悪性リンパ腫と診断された場合、生存率が気になる方が多いでしょう。生存率は、病気のステージやがんの状況によって変わってきます。あくまで参考となる数字ですが、ここでは「サバイバー生存率」という指標についてご紹介します。
サバイバー生存率とは、診断から一定の年数が経過した後も生存している方が、その後どのくらい生存できるかを示した数字です。例えば「1年サバイバーの5年生存率」というのは、診断から1年後に生存している方に限定して計算した、その後の5年間の生存率のことを指します。
つまり、診断時点から数えると合計6年後の結果ということになります。
悪性リンパ腫のサバイバー5年相対生存率は、以下のようになっています。
|
サバイバー年数 |
女性 |
男性 |
|
0年 |
58.1% |
9.6% |
|
1年 |
73.0% |
68.3% |
|
2年 |
80.2% |
78.4% |
|
3年 |
84.1% |
82.3% |
|
4年 |
87.0% |
84.8% |
|
5年 |
87.1% |
86.9% |
(参考:血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫とは? 余命の目安となる生存率と治療法について解説 | がん免疫療法コラム | 一般社団法人同仁会 同仁クリニック)
この表から、診断後の時間が経過するほど、その後の生存率が高くなっていることが分かります。