投稿日:2022.9.20/更新日:2025.5.1
膵臓がんは、悪性度が高く死亡率が高いガンの一つです。
この病気は早期には症状が出にくいため、発見が遅れることが多いのが大きな問題です。
しかし、年1回の超音波内視鏡検査やMRCP(確数的腕細胞細胞検査)を行うことで、膵臓がんを早期に発見し、治癒に近づける可能性が高まります。
膵臓がんは日本においても死亡率が高い疾患ですが、明確な原因はまだ解明されていません。
しかし発症リスクを高める要因が、いくつか明らかになっています。
繰り返し膵臓に炎症が起こることで、膵臓がんのリスクが高まります。
近年、日本人を対象にした大規模な研究で、肥満と膵臓がんの関係が詳しく調べられました。
全国9つのコホート研究から集めた34万人以上のデータをもとに分析した結果、男性では、BMIが30以上の肥満に該当する人で膵臓がんのリスクが明らかに高いことがわかりました。
さらに、若い頃(20歳時点)に太っていた人も、将来膵臓がんになるリスクが高くなる傾向が見られました。
女性では、統計的に有意とまでは言えないものの、BMIが高くなるにつれてリスクも少しずつ上がる傾向があることが確認されました。
つまり、女性にとっても、日ごろの体重管理は無関係ではないと言えるでしょう。
また、20歳の頃はやせ型で、その後に体重が増えて適正体重に近づいた男性では、むしろリスクが低くなる傾向も見られました。
ただし、この傾向についてはまだ検討の余地があり、今後の研究が待たれます。
お肉はたんぱく質が豊富で、大切な栄養源ですが、食べ方や種類によっては注意が必要です。
特に、牛肉や豚肉などの赤身肉、ソーセージやベーコンといった加工肉をよく食べる人は、膵臓がんのリスクが高まる可能性があるといわれています。
これらの食品には、飽和脂肪酸や硝酸塩といった成分が含まれており、調理の過程で発がん性物質ができることもあります。
まだ病気を発症していない人であっても、将来のリスクを減らすためには、こうした肉類の摂りすぎには注意したいところです。
たばこを吸うことが、膵臓がんのリスクを高めるという事実は、これまでの多くの研究で明らかにされています。
最近では、日本人を対象にした大規模な調査でも、この関連性が改めて確認されました。
全国10のコホート研究から35万人以上のデータを集めて行われた解析では、現在たばこを吸っている人は、吸ったことのない人に比べて、膵臓がんになるリスクが明らかに高いことがわかりました。
男性では1.6倍、女性では1.8倍と、男女ともにリスクが上がっていたのです。
また、たばこを吸う量が多いほどリスクも高くなる傾向があり、たばこをやめてからの年数も重要なポイントでした。
特に男性では、禁煙して5年ほど経つと、吸わない人とほぼ同じくらいまでリスクが下がっていたという結果も出ています。
女性では、禁煙によるリスクの低下がはっきりと見られなかったものの、これは喫煙経験のある女性が少なかったことなども影響している可能性があり、今後のさらなる研究が待たれます。
膵臓がんの予防には、生活習慣の改善が不可欠です。具体的な取り組みを以下に詳しく解説します。
毎日の生活の中で体を動かすことは、膵臓がんだけでなく他のがんの予防になり、健康を守るための大切な習慣です。
研究では、身体をよく動かす人ほど、がんや心臓病などの病気にかかるリスクが低くなることがわかっています。
特別な運動でなくても、通勤時の歩行や掃除、買い物など、日常の中でこまめに体を動かすことでも効果は期待できます。
厚生労働省では、18歳〜64歳の方に「1日60分の歩行や同等の活動」、さらに「週に60分ほど息がはずむ運動」をすすめています。
65歳以上の方には、「毎日40分程度、強度にこだわらず体を動かすこと」が推奨されています。
体を動かすことで、がんだけでなく心と体のバランスも整い、毎日の元気につながっていきます。
無理なく続けられる運動習慣を、自分らしく見つけてみることが、健康づくりの第一歩になるかもしれません。
前述のとおり、たばこを吸うことが膵臓がんのリスクを高めるということは、今でははっきりとわかっています。
でも、「なかなかやめられない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、禁煙を始めてから時間が経つほど、膵臓がんのリスクは下がっていくことがわかっています。
特に男性では、禁煙から5年ほどで、リスクが非喫煙者と同程度にまで下がるという研究結果も出ています。
すぐに完全にやめるのが難しくても、「1本減らす」「吸わない日を作る」といった小さな一歩が、体にとっては大きな変化になります。
大切なのは、自分のペースで、少しずつでも喫煙と距離をとっていくことが大切です。
毎日の食事は、体をつくるだけでなく、病気を予防する大切な役割も担っています。
最近の日本人を対象とした大規模な研究では、果物を多く食べる人は、膵臓がんのリスクが低いという結果が示されました。
特に柑橘類などに含まれるビタミンや抗酸化成分が、膵臓を守る働きをしている可能性があると考えられています。
食事で大切なのはバランスです。果物や野菜、魚や豆類など、さまざまな食材を無理なく取り入れて、続けられる食生活を目指すことが、膵臓がんを含めた病気の予防につながります。
さらに、定期的な検診を受けることが最も有効な早期発見の手段となります。
年1回の超音波内視鏡検査やMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)検査は、膵臓がんを早期に発見するための非常に有効な方法です。
これらの検査は、膵臓に病変が発生していても症状が現れる前にその兆候を見つけることが可能です。
これらの日常生活での対策と定期検診を組み合わせることで、膵臓がんの発症リスクを大幅に軽減することが期待できます。
予防は自分の健康を守る第一歩です。
都大学名誉教授 西川伸一先生が主催されておられるNPO aasj『論文ウオッチ』コーナーに興味深い論文の解説がupされました。
(内容)
ジョンズホプキンス大学を中心とした多施設共同研究で、遺伝的ハイリスクグループでも、1年に1回の検診で進行前の膵臓ガンを見つけられることを明らかにした論文です。
ご興味を持たれた方は、原論文は下記で、 調べてみてください。
内容は驚くべきもので、
一般に膵臓ガンは、診断時85%がステージⅣで、生存期間は平均1.5年ですが、
今回の定期検診で見つかった膵臓ガンの57%がステージⅠで、平均生存期間は9.8年と素晴らしい結果でした。
一方手術をして悪性所見がなかったケースは13例ありましたが、基本的に全員生存しておられます。
内視鏡超音波かMRCPによる検査は、間違いなく膵臓ガンの早期発見を保証することが示されています。
少なくとも遺伝リスクのある人は、年1回の超音波内視鏡検査+MRCP検査を考慮されてはいかがでしょうか?
2022年6月15日 Journal of Clinical Oncology 掲載:「The Multicenter Cancer of Pancreas Screening Study: Impact on Stage and Survival(膵臓ガン早期発見のための多施設研究;定期検診のステージと生存に対するインパクト)」
(詳細下記参照ください)
7月15日 定期検診で膵臓ガンを早期発見できるか(6月15日 Journal of Clinical Oncology オンライン掲載論文)
膵臓がんに対しては、国が推奨する対策型検診がまだ存在しないため、人間ドックや専門検査が重要な役割を果たします。
特に以下に当てはまる方は、定期的な検査を検討してください。
近親者に膵臓がん患者がいる
糖尿病を新たに発症した、または悪化した
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や膵嚢胞を指摘された
膵臓がんのリスクを抱える方は、適切な検査を受けることで早期発見につながります。
当クリニックでは、専門的な検査やご相談を随時受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
監修医師
岡崎 能久医師
内視鏡診断/治療・研究開発
大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。