1. 膵臓がんとは
膵臓の構造と働き
膵臓は胃の後ろに位置する長さ約15cm、重さ約100gの臓器です。消化酵素を分泌する外分泌機能と、
血糖値を調節するホルモンを分泌する内分泌機能の2つの重要な役割を担っています。
膵臓は以下の部位に分けられます。
- 膵頭部(約60-70%のがんが発生)
- 膵体部(約20-25%のがんが発生)
- 膵尾部(約10-15%のがんが発生)
この解剖学的特徴が、膵臓がんの症状や治療方針に大きく影響します。
発生メカニズムと危険因子
膵臓がんの主な危険因子として、以下が挙げられます。
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生活習慣関連因子
- 喫煙(リスクを2-3倍上昇)
- 過度の飲酒
- 肥満(BMI 30以上)
- 運動不足
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既往歴・合併症
- 慢性膵炎
- 糖尿病(特に発症2年以内の新規糖尿病)
- 膵のう胞性疾患
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遺伝的要因
- 第一度近親者の膵臓がん罹患歴
- 遺伝性膵炎
- BRCA1/2遺伝子変異
2. 膵臓がんの症状と初期サイン
早期症状の特徴
膵臓がんの初期症状は非常に曖昧で、以下のような一般的な不調として現れることが特徴です。
- 原因不明の背部痛や腹痛
- 食欲不振
- 原因不明の体重減少
- 疲労感の増加
- 新規発症または急激な悪化を示す糖尿病
見逃してはいけない警告サイン
以下の症状が出現した場合は、要注意サインとして認識する必要があります。
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黄疸
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 無痛性黄疸は膵頭部がんの重要なサイン
- 急な発症が特徴的
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上腹部痛
- 食後の痛みが特徴的
- 背中に放散する痛み
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消化器症状
- 急激な食欲低下
- 説明のつかない吐き気・嘔吐
- 便通異常(特に脂肪便)
3. 診断・検査
推奨される検査の種類
膵臓がんの診断には、段階的なアプローチが重要です。
- 血液検査(腫瘍マーカーや血糖値検査など)
- 画像診断(CT、MRI、超音波検査、PET-CTなど)
- 精密検査(EUS、ERCP、組織生検など)
4. 最新の治療法
治療戦略の概要
膵臓がんの治療は、病期(ステージ)と患者さんの全身状態を考慮して、以下の選択肢から最適な方法を選択します。
- 手術療法(膵頭十二指腸切除術など)
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化学療法
- FOLFIRINOX療法
- オニバイド+5FU/LV療法
- ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法
- 放射線療法(IMRTなど)