投稿日:2026.1.8/更新日:2026.3.30
悪性リンパ腫は、血液細胞の一種であるリンパ球ががん化する病気です。リンパ球は本来、体を守る免疫システムとしての役割を担っていますが、この細胞に異常が生じることで悪性リンパ腫につながります。
悪性リンパ腫にはさまざまな種類があり、それぞれのタイプによって進行の速度や治療方法が異なります。本記事では、悪性リンパ腫の原因や検査方法、治療方法などについて詳しく解説します。
悪性リンパ腫は、リンパ球という血液の細胞ががん化してしまう病気です。リンパ球は白血球の一種で、普段は細菌やウイルスと戦ったり、がん細胞を攻撃したりする大切な役割を担っています。
この病気には多くの種類があり、大きく分けて「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2つがあります。さらに非ホジキンリンパ腫は、B細胞、T細胞、NK細胞など、どのリンパ球ががん化したかによって数十種類以上に細かく分類されています。「悪性」という名前がついていますが、ほとんどの場合、治療によって病気の症状が消える状態(寛解)を目指すことが可能です。
首や脇の下、足のつけ根などのリンパ節が腫れてくることが多く、腫れていても痛みを感じないのが特徴です。しかし、リンパ球は全身に存在するため、胃や皮膚、脳などさまざまな場所に病変ができることもあります。発熱や体重減少、寝汗といった症状が現れることもあります。
悪性リンパ腫がなぜ発症するのか、原因についてはまだ完全には解明されていません。
現在わかっているのは、リンパ球の遺伝子に何らかの異常が起こり、細胞の寿命や増え方がおかしくなることが関係しているということです。また、一部のタイプでは、EBウイルスやHTLV-1などのウイルス感染、あるいは胃のピロリ菌感染が発症に関与していることが確認されています。
さらに、免疫機能が低下している状態が発症につながるケースがあることもわかっています。ただし、多くの患者さまにおいては、はっきりとした原因を特定することは難しいのが現状です。
悪性リンパ腫が疑われる場合、病気の有無や種類、進行度合いを正確に把握するために、血液検査や画像検査など複数の検査を組み合わせていきます。診断に用いられる主な検査方法は以下の通りです。
血液中の白血球、赤血球、血小板の数や、肝臓・腎臓の働きを調べる検査です。悪性リンパ腫では「LDH(乳酸脱水素酵素)」という数値が高くなることがあります。
また、「sIL-2R(可溶性インターロイキン2受容体)」という物質が腫瘍マーカーとして役立つことがわかってきました。腫瘍マーカーとは、がんがあるときに特徴的に現れる物質のことで、診断の手がかりや治療効果の確認に使われます。ただし、悪性リンパ腫でもこの数値が変わらないこともありますし、逆にリンパ腫以外の理由で数値が上がることもあるため、この検査だけで判断することはできません。
腫れているリンパ節や病変の一部を取り出して、詳しく調べる検査です。一般的には局所麻酔で行いますが、腫れている場所によっては全身麻酔が必要になることもあります。
リンパ節が腫れる原因には、感染症などの炎症や、がんの転移、悪性リンパ腫などいろいろな可能性があります。取り出した組織を顕微鏡で観察し、正確な診断を行います。近年は採取した組織を用いて遺伝子検査などを行い、より最適な治療薬を選択するための情報収集も行われます。
胸部X線検査や腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査などを行い、全身の病変の広がりを確認します。
①胸部X線検査 最も基本的な画像検査で、胸のリンパ節の腫れや肺の異常を確認できます。
②腹部超音波検査 超音波を使っておなかの中のリンパ節や臓器の状態を調べます。ただし、体格によっては見えにくいこともあります。
③CT検査 X線で体の断面を撮影し、病変の大きさや広がりを詳しく調べます。より鮮明な画像を得るために造影剤を使うこともあります。
④MRI検査 磁気を使って体の内部をさまざまな角度から画像化します。脳や脊髄などの病変を調べるのに適しており、放射線を使わないので被ばくの心配がありません。
⑤PET検査 特殊な薬剤を注射して、全身のがんの広がりを調べます。病気の進行度合いを判断したり、治療の効果を確認したり、再発のチェックにも使われます。
悪性リンパ腫の細胞が、血液を造る工場である骨髄にまで広がっているかどうかを確認するために行います。
腰の骨などから骨髄液や骨髄組織を採取し、顕微鏡で異常な細胞がないか調べます。細胞の表面にある特徴的な目印(マーカー)を調べたり、染色体の異常を確認したりすることもあり、どのタイプの悪性リンパ腫なのかを正確に判断するためにとても重要な情報になります。
悪性リンパ腫の治療は、病気のタイプや進行度、患者さまの体の状態などに応じて最適な方法が選ばれます。複数の抗がん剤を組み合わせた薬物療法を中心に、放射線治療や造血幹細胞移植、さらに近年では新しい免疫療法など、いくつかの治療法があります。
悪性リンパ腫の治療では、複数の抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを組み合わせて使う「多剤併用療法」が中心となります。薬の組み合わせ方にはいくつものパターンがあるため、患者さまの病気のタイプや体の状態に合わせて選んでいきます。
非ホジキンリンパ腫(代表的な「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」など)の初めての治療では、CHOP療法(3種類の抗がん剤とステロイドの組み合わせ)がよく使われます。これにリツキシマブという薬を加えたR-CHOP療法、ポラツズマブ ベドチンを加えたPola-R-CHP療法(ポラアールチップ療法)、ベンダムスチンとリツキシマブを組み合わせたBR療法などを採用する場合もあります。
ホジキンリンパ腫に対しては、ABVD療法(4種類の抗がん剤の組み合わせ)や、A-AVD療法(ブレンツキシマブ ベドチンという薬を含む組み合わせ)などが用いられます。 これらの初回治療の多くは、入院せずに外来で受けることができます。もし再発した場合には、初回とは違う組み合わせの薬を使って治療することが一般的です。
ゆっくりと進行するタイプの悪性リンパ腫で、病変が体の限られた範囲にとどまっている場合は、放射線治療だけで治療できることもあります。 病気を治すためだけでなく、腫瘍による痛みや圧迫感などの症状を一時的に和らげ、患者さまの苦痛を軽くする目的でも行われます。また、造血幹細胞移植を行う前の準備として使われることもあります。
骨髄などから血液をつくるもとになる「造血幹細胞」を取り出して、患者さまの体に戻す治療法です。通常の抗がん剤治療では治癒が難しい場合や、再発した際に行われることがあります。
この治療には大きく2つの方法があります。一つは患者さま自身の造血幹細胞をあらかじめ採取して冷凍保存しておき、強力な抗がん剤治療の後にそれを体に戻す「自家移植」です。もう一つは、別の人(ドナー)から造血幹細胞を提供してもらう「同種移植」です。悪性リンパ腫の治療では、自家移植が主に行われています。
自家移植では、通常は血液中にいない造血幹細胞を、特別な薬(G-CSF)を使って骨髄から血液中に呼び出してから採取します。採取した造血幹細胞は凍結保存され、強力な治療の後に患者さまの体に戻されます。この方法を「自家末梢血幹細胞移植」といい、悪性リンパ腫ではよく用いられる治療法です。
近年承認された新しい免疫細胞治療です。患者さま自身のT細胞(免疫細胞)を血液から取り出し、がん細胞を強力に攻撃するように遺伝子を改変してから体内に戻します。
現在、悪性リンパ腫(主に再発・難治性のB細胞リンパ腫)を対象とした製品として、「キムリア」「イエスカルタ」「ブレヤンジ」が国内で承認されています。これまでの治療が効きにくかったり、再発してしまった患者さまに対して行われ、画期的な治療効果が期待されています。
悪性リンパ腫は一部のゆっくり進行するタイプ(年単位で進行するもの)を除き、原則として自然に治ることのない病気なので、適切なタイミングでの治療が必要です。治療を受けずにいると病気が進行し、命に関わる危険性が高くなってしまいます。
首や脇の下、足のつけ根などのリンパ節の腫れやしこり、発熱、体重減少、ひどい寝汗といった症状が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう。適切な治療を受けることで、多くの場合、病気をコントロールすることが可能です。