投稿日:2026.1.29/更新日:2026.1.29
大腸がんは、日本人において最も罹患数の多いがんです。また、早期に発見できれば、ほぼ改善することが期待できるがんです。近年の医療の進歩により、治療法も多様化し、患者さまの体への負担が少ない方法も増えてきました。
本記事では、大腸がんの概要やステージ、治療方法などについて詳しく解説します。
大腸がんは、40歳代から増え始め、年齢とともに発症リスクが高まります。日本人では直腸がんとS状結腸がんが多いとされています。早期に発見できれば治療成績が良好ながんなので、検診を受けることが大切です。以下では、大腸がんの原因や危険因子などについて解説します。
大腸がんの発症には、生活習慣や遺伝的な要因が関わっています。食生活の欧米化に伴う動物性脂肪や加工肉の摂りすぎ、運動不足、肥満、喫煙、飲酒などが危険因子とされています。
また、炎症性腸疾患がある場合、大腸がんの危険性が高くなるとされています。さらに、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、大腸がんになる可能性が高いことがわかっています。
家族に大腸がんの患者さまがいる場合は、若いうちから定期的な検査を受けることが推奨されます。
大腸は結腸と直腸に分けられ、がんができた部位によって結腸がんと直腸がんと呼ばれますが、基本的な治療方針は大きく変わりません。直腸は大腸の最後の部分で肛門に近いため、症状が現れやすいとされています。直腸がんの出血は便に血液が付着して発見されることが多く、比較的鮮血に近い状態です。
また、がんで直腸内が狭くなると、便が細くなったり、排便した後も残便感が残ることがあります。治療面では、直腸がんに対してはロボット支援手術が健康保険適用となり、精密な手術が可能になりました。がんが肛門の近くにあり、手術によって肛門の機能が残せない場合には、人工肛門を造設することがある点も、直腸がんの特徴といえます。
大腸がんの治療方針を決める上で、がんの進行度を示す「ステージ(病期)」の判定は非常に重要です。大腸がんのステージは0から4までの5段階で表記され、がんの深達度、リンパ節転移、遠隔転移の3つの因子を組み合わせて決定されます。ステージが早期であるほど治療の選択肢が広がり、予後も良好になります。
ステージ0は、がんが大腸粘膜内にとどまっている状態です。この段階のがんは、リンパ節転移の可能性がほとんどなく、治療成績が非常に良好です。粘膜内にとどまっている場合は、内視鏡で切除します。がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを早期がんと呼びます。
ステージ0の大腸がんは、適切な内視鏡治療により完治が期待できます。早期に発見された場合、ほぼ100%に近い5年生存率が報告されており、検診による早期発見の重要性が示されています。この段階で治療できれば、体への負担も少なく、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
ステージ1は、がんが固有筋層までにとどまるものです。この段階でも、リンパ節への転移がない状態を指します。ステージ1の大腸がんで、大腸の壁への浸潤が軽いものに対しては、内視鏡でがんを切除する治療を行います。
一方で、大腸の壁への浸潤が深いものには、内視鏡の治療だけではがんを取り残してしまう可能性があります。また、リンパ節転移を起こしている可能性もあるため、手術によって病変部分と、転移の可能性のあるリンパ節を切除します。
ステージ2は、がんが固有筋層を超えて浸潤する段階ですが、リンパ節への転移がない状態を指します。手術が選択され、腫瘍から十分な距離を確保した腸管と、転移の可能性のあるリンパ節を切除します。開腹手術と腹腔鏡下手術のどちらかが選択されます。腹腔鏡下手術は、開腹手術と比較して、お腹の傷が小さいために手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方で、手術に時間がかかる傾向があります。ステージ2のハイリスク群(T4症例、術前腸閉塞・穿孔例、リンパ節郭清個数不足例など)に対しては、手術後に再発予防のための補助化学療法が検討されます。
ステージ3は、がんの深さにかかわらず、リンパ節への転移を認めるものです。この段階では、がんが周囲のリンパ節に広がっている状態です。手術が選択され、腫瘍の大きさにより、適切な範囲の腸管と転移の可能性のあるリンパ節を切除します。切除手術ではがんと一緒に腸管を切除し、がんが転移している可能性があるリンパ節も取り除きます。
ステージ3に対しては、手術後に再発予防のための補助化学療法が標準治療として行われます。これにより、再発率を下げることが期待できます。
ステージ4は、がんの深さやリンパ節転移にかかわらず、他臓器への転移を認めるものです。肝臓や肺など、他の臓器への転移の有無によって判定されます。
切除が可能な場合は、原発巣、転移巣を切除します。手術は何度かに分けて行うこともあります。転移した場所や個数、患者さまの全身状態を考慮して、手術ができない場合は、薬物療法や放射線療法、緩和治療が行われます。
大腸がんは他のがんと異なり、遠隔部位への転移があったとしても切除ができれば根治を目指 せる場合があります。また、化学療法によって当初切除できなかったがんが切除可能になることもあります。
大腸がんの治療は、ステージや患者さまの全身状態に応じて選択されます。内視鏡治療、手術(外科治療)、薬物療法、免疫療法、放射線治療などがあり、これらを組み合わせて行うこともあります。治療は、がんの進行の程度や遺伝子変異などに応じた標準治療を基本として、患者本人の希望や生活環境、年齢を含めた全身状態などを総合的に検討していきます。
内視鏡治療とは、内視鏡を用いて、画像を見ながら大腸の内側からがんを切除する治療法です。がんが粘膜内、または粘膜下層の浅い部分にとどまっていると予想されるもの、技術的に1回で切除できる大きさのものが対象となります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)などの方法があります。大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、内視鏡治療でがんを切除しても痛みを感じることはありません。
早期大腸がん全体の約60%は内視鏡による治療を行うようになりました。開腹手術に比べて体への負担が少なく、回復も早いことが大きな利点です。
外科治療では、がんのある腸管とリンパ節を切除します。切除するリンパ節の範囲は、がんの部位と手術前に予測したがんの進行度を考慮して決定されます。
手術方法には、開腹手術と腹腔鏡下手術があり、近年ではロボット支援下手術も行われるようになっています。腹腔鏡下手術では0.5〜1cmから最大3〜5cm程度の傷で手術が可能で、術後の痛みが少なく、回復が早いことが最大の利点です。
手術の合併症として、腸閉塞、縫合不全、創部感染、排便習慣の変化などが生じることがあります。直腸がんの手術の場合は排尿や性機能に関係する神経を剥離または切離する必要があり、術後は排尿障害や性機能障害などの神経障害が生じることがあります。
薬物療法とは、抗がん剤を使用する治療方法です。再発をできる限り防ぐために、手術後に抗がん剤を使用する治療を術後補助化学療法といいます。
大腸がんの薬物療法は、がんの進行度や遺伝子検査の結果に基づいて選択されます。治療開始前には、RAS遺伝子(KRAS/NRAS)やBRAF遺伝子の変異、マイクロサテライト不安定性(MSI)の有無を検査することが推奨されています。これらの検査結果により、特に抗EGFR抗体薬の適応が決定されます。
切除不能進行・再発大腸がんに対する一次治療では、フルオロウラシル系薬剤を基本とした化学療法が行われます。代表的なレジメンとして以下が挙げられます。
これらの化学療法に、分子標的薬を組み合わせることで治療効果の向上が期待できます。分子標的薬には以下の2つのタイプがあります。
【抗EGFR抗体薬】 セツキシマブ(アービタックス®)・パニツムマブ(ベクティビックス®)
これらはRAS遺伝子野生型(変異がない)の患者さまにのみ有効であり、RAS遺伝子変異がある場合は効果が期待できません。主に左側結腸がん(脾彎曲部より肛門側)に対してより高い効果を示すことが報告されています。
【抗VEGF抗体薬】 ベバシズマブ(アバスチン®)・ラムシルマブ(サイラムザ®)
これらは腫瘍の血管新生を阻害する薬剤で、RAS遺伝子変異の有無にかかわらず使用可能です。
全身状態が良好な患者様には、化学療法と分子標的薬の併用療法(doublet+分子標的薬)が推奨されます。一方、高齢者や全身状態が不良な患者様には、5-FU単剤やカペシタビン単剤などの負担の少ない治療が選択されます。
一次治療で効果が不十分であった場合や、病勢が進行した場合には、二次治療に移行します。一次治療で使用しなかった薬剤を中心に選択されます。
分子標的薬についても、一次治療で抗VEGF抗体薬を使用した場合は抗EGFR抗体薬を(RAS野生型の場合)、一次治療で抗EGFR抗体薬を使用した場合は抗VEGF抗体薬を検討します。
また、二次治療以降で使用可能な薬剤として、レゴラフェニブ(スチバーガ®)やトリフルリジン・チピラシル(ロンサーフ®)などのマルチキナーゼ阻害薬があります。
二次治療後も病勢のコントロールが困難な場合、三次治療以降を検討します。前述のレゴラフェニブやトリフルリジン・チピラシル配合剤が選択肢となります。
さらに、BRAF V600E変異陽性の患者様には、エンコラフェニブ+セツキシマブ±ビニメチニブの併用療法が適応となります。また、HER2陽性の大腸がんに対しては、トラスツズマブ+ラパチニブやトラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ®)などの治療選択肢も登場しています[24]。
このように、大腸がんの薬物療法は患者さまの遺伝子検査結果や治療歴、全身状態に応じて段階的に選択されていきます。
副作用のコントロールが以前より良好となったため、多くの化学療法は外来で可能となっています。薬物療法の進歩に伴い、治療成績も向上し、生存期間中央値が30ヶ月を超えるまでになりました。
免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。現在、大腸がんの治療に効果があると証明されている免疫療法として、免疫チェックポイント阻害薬を使用する方法があります。
免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(キイトルーダ®)、ニボルマブ(オプジーボ®)±イピリムマブ(ヤーボイ®)も高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸がんに対する適応が承認され、治療の選択肢が広がっています。ただし、MSI-HまたはdMMRの大腸がんは全体の約5%程度と限られています。
大腸がんに対する放射線療法は、手術後の局所再発を防いだり、がんを小さくして肛門を温存することを目的に行われます。照射を行う時期は、手術前、手術中、手術後の3種類があります。
手術前の放射線治療には大きく2つのやり方があり、1つは短期照射といって1回あたり比較的多めの放射線を5日間かける方法で、もう一つは1回あたりの放射線量は少なくし、1ヶ月半ぐらい通院しながら長期に渡って少しずつ治療を行う方法です。
特に長期間の照射の際、放射線治療だけを行うのではなく、放射線と同時に抗癌剤投与などの薬物療法を行うことで放射線の治療効果を高めることができるとされています。
当グループには、免疫療法の専門医師に加えてがん薬物療法専門医が4名在籍しており、分子標的薬のご相談から処方まで、ワンストップで対応しています。
特に強みとしているのは、遺伝子パネル検査の結果解釈(病的意義の判定、治療標的・治験参加の可能性・コンパニオン診断の整理)、世界最新の論文・ガイドライン・学会発表の継続的なリサーチとご提案への迅速な対応、そして何よりも患者様の価値観や費用面を踏まえた治療方針のご提案です。また、主治医の先生との関係を重視しており、医療連携においても豊富な実績がございます。
遺伝子や免疫の分野は難解な言葉が多いため、専門用語は”患者様の言葉”に置き換えて、メリット・デメリット、費用や通院ペース、副作用対策まで、納得いただけるまで丁寧にご説明いたします。セカンドオピニオンやオンライン相談にも対応しております。
『大腸がんの標準治療に加えて、遺伝子パネル検査に基づいたゲノム医療(プレシジョンメディシン)や日常生活の工夫を含めて、患者さまに合った治療計画をご提案』
——それを、どこよりも実践しているクリニックグループと自負しております。
分子標的薬や免疫治療、それに関連する最新治療について、ご興味やご希望がございましたら、どうぞ気兼ねなくご相談ください。