投稿日:2026.2.1/更新日:2026.4.6
2026年1月、膵臓がん診療の現場では「標準治療」のその先を見据えた、データの蓄積と解析に関するニュースが相次ぎました。 今月のトピックを、ゲノム解析・TME(腫瘍微小環境)・個別化医療の視点から紐解きます。
がんゲノム医療の普及により、膵臓がんでも「遺伝子変異」に基づいた治療選択が議論されています。
臨床的な意味: 膵臓がんではKRAS変異が大半を占めますが、一部の患者さんにはBRCA変異やMSI-Highなど、特定の薬が劇的に効く可能性のある変異が見つかります。今月の報告では、これらが単なる「研究」ではなく、実際の病院でどう機能しているかが示されました。「まず敵(遺伝子)を知る」という個別化医療の第一歩が、着実に標準化しつつあります。
国立がん研究センターなどから、最新の生存率データが公表されました。
臨床的な意味: 膵臓がんの生存率は依然として厳しい数字ですが、これは「発見時のステージ」に強く依存しています。数字を悲観するのではなく、「いかに早く精密な診断に繋げるか」という課題を再認識させるデータです。当院がゲノム解析や微小環境の評価を重視するのは、この数字を打破するための「戦略」が必要だからです。
1月の動向を総括すると、ゲノム解析という「情報の武器」が揃い始めています。 しかし、膵臓がんにはTME(腫瘍微小環境)という物理的な壁が存在します。遺伝子情報(Precision)に、環境(TME)への介入をどう組み合わせるか。この「統合」こそが、2026年における膵臓がん治療の本質であると私たちは考えています。
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。