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免疫療法

投稿日:2026.10.22/更新日:2026.10.23

プレシジョンメディシン最前線:ぜんそく・がん・耐性菌の個別化医療

この記事でわかること

  • 個別化医療(プレシジョンメディシン)は、がんだけでなくぜんそくや耐性菌にも広がっています
  • がん領域では、遺伝子検査の結果が使える薬の選択に直結します
  • 検査で使える薬が見つからない方もいます。その場合も、次に取れる手はあります
  • 当院は検査結果を、免疫療法をどう組み立てるかの判断材料として使います

病気の予防や治療が、一人ひとりの体質や病状に合わせて最適化される「精密医療」は、多くの方にとって関心の高いテーマです。今月も、ぜんそくの早期予測やがんのゲノム医療の進展など、私たちの生活に身近な病気に関する新しい情報が届きました。これらのニュースは、将来の医療のあり方を示しています。プレシジョンクリニックグループでは、これらの進展を常に注視し、患者さまへのより良い医療提供を目指しています。

ぜんそくの個別化医療への期待

今月、ぜんそくの予防や治療に役立つ可能性のある二つの研究が発表されました。一つ目は、デンマーク・コペンハーゲン大学のチームによる、子どものぜんそく発症リスク予測に関する研究です。妊娠中の母親の血液中に特定の脂質が検出されない場合、その子どもがぜんそくを発症するリスクが約60%高い傾向がみられたと報告されました。この発見は、将来的に妊娠中にリスクを把握し、早期に予防的介入を行う「個別化医療」につながるかもしれません。私たちの外来でも、お子さんのぜんそくについてご心配される親御さんが多くいらっしゃいます。将来的に、妊娠中にリスクを把握し、早期の予防的介入が可能になれば、多くのご家族にとって大きな安心につながるでしょう。この研究はまだ基礎的な段階ですが、今後の進展に注目が集まります。ぜんそくの家族歴がある方や、お子さんのアレルギーが気になる方は、ぜひ主治医にご相談ください。 一方で、重症ぜんそくの治療に関する慶應義塾大学などの共同研究も注目を集めています。この研究では、重症ぜんそく患者さまを対象とした臨床研究において、生物学的製剤「ベンラリズマブ」が自然リンパ球(ILC2)の機能を選択的に抑制するものの、Th2細胞の機能にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかにされました。これは、ぜんそくの病態に関わる2種類の免疫細胞(ILC2とTh2)が、重症ぜんそくの異なる側面に関わっている可能性を示唆しています。当グループでも、重症喘息で生物学的製剤を使用されている患者さまから、「この薬は本当に自分に合っているのだろうか」「もっと良い治療はないのか」と質問されることがあります。今回の研究は、どの患者さまにどの治療がより効果的かを見極める、精密医療の実現に向けた重要な一歩と言えます。現在の治療効果について疑問をお持ちの方は、主治医や当グループにご相談ください。

がんゲノム医療のさらなる普及へ

がん治療の分野では、「ゲノム医療」の普及促進に関する動きが活発です。国会議員や研究者らで構成される「ゲノム医療推進研究会」が、がん患者さまのゲノム医療の普及促進を厚生労働省に提言しました。具体的には、ゲノム医療の保険適用範囲の拡大や、研究体制のさらなる強化が要望されています。私たちの外来でも、ゲノム医療について「どんな検査ですか」「費用はどのくらいかかりますか」といったご質問をいただくことが増えました。この提言が実現すれば、より多くの患者さまがゲノム情報を活用した個別化医療を受けられるようになる可能性があります。 また、早期発見が難しいとされる膵がんにおいて、希望の光となるニュースも報じられました。広島県尾道市では、JA尾道総合病院と地域の診療所、行政が連携する「尾道方式」により、膵がんの早期発見率と5年生存率の向上が報告され、国際学会誌に論文が掲載されました。これは、地域全体で連携することで、早期発見と治療成績の向上が期待できる具体的な成功事例です。また、岡山大学病院でも「岡山早期膵癌プロジェクト」として、かかりつけ医との連携を強化し、膵がんの早期発見に取り組んでいます。膵がんは診断が難しいがん種の一つですが、当グループも他施設との連携を重視し、患者さまの早期発見に努めています。特にご家族に膵がんの既往がある方や、気になる症状がある方は、かかりつけ医や当グループにご相談ください。 さらに、がん患者さまの生活の質(QOL)向上に貢献する新しい治療薬の話題もありました。塩野義製薬が開発した、がん患者さまの便秘改善薬「ナルデメジン」が、中国国家薬品監督管理局(NMPA)から新薬承認を取得しました。この薬は、がん患者さまの強い痛みを和らげるために用いられるオピオイド鎮痛薬の副作用として起こる便秘(OIC)の治療を目的としています。便秘は、がん治療中の患者さまの生活の質を大きく低下させる要因の一つです。外来でも、がん治療中の患者さまから便秘のつらさを訴えられることが少なくありません。日本でも既に承認・使用されているこの薬が、中国でも承認されたことで、世界中のより多くの患者さまの苦痛軽減に貢献することが期待されます。がん治療に伴うつらい症状がある場合は、遠慮なく主治医にご相談ください。

薬剤耐性菌への精密医療からのアプローチ

既存の抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」が世界中で深刻な問題となっています。世界保健機関(WHO)の推計によると、耐性菌が直接の死因となった人は年間114万人に上り、関連死を含めると471万人に達すると報告されています。日本でも、特定の2種類の耐性菌だけで年間1万人もの死者が出ているとされ、非常に身近な脅威です。 この問題に対して、プレシジョンメディシン、すなわち精密医療のアプローチが求められています。患者さま個人の感染状況や耐性菌の遺伝子情報を迅速に解析することで、どの抗菌薬が効果的かを正確に判断し、最適な治療法を選択する「個別化医療」のニーズが高まっています。ゲノム解析技術の進歩は、耐性菌の特定と適切な治療薬選択に大きく貢献するでしょう。安易な抗菌薬の使用は避け、医師の指示に従うことが大切です。また、感染症が疑われる際には、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

当院の実例

上腸間膜動脈に浸潤し手術も放射線も適応外だった膵頭部がんステージ3が、抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法で縮小し、陽子線治療が可能になった62歳男性

診断時は血管浸潤のため手術・放射線ともに適応がなく、抗がん剤(FOLFIRINOX)と樹状細胞ワクチン療法から開始しました。腫瘍が半分に縮小し血管浸潤も軽くなったことで陽子線治療が可能となり、終了後にはさらに縮小して診断時の4分の1になりました。検査と画像で反応を確かめながら、次に取れる手を組み替えていく。個別化医療とは薬を選ぶことだけでなく、治療の順番を設計し直すことでもあります。

症例の詳細を見る →

※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

まとめ

今月のニュースは、プレシジョンメディシンが予防から治療、そしてQOL向上まで、医療のあらゆる側面に深く関わっていることを示しています。特にゲノム医療の普及促進は、多くの患者さまにとって希望となるでしょう。プレシジョンクリニックグループでは、これらの最新の知見を積極的に取り入れ、患者さま一人ひとりに合わせた精密医療の提供を追求しています。当グループが創業以来最も取り組んでいるがん種の一つである膵がんにおいては、早期発見のための地域連携や、ゲノム解析に基づいた個別化治療の実績を積み上げています。また、ぜんそくや感染症などの分野でも、個別化医療の可能性を探り、患者さまの生活の質を高めることを大切にしています。ご自身の病気や治療についてご不安なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

検査結果をどう治療に生かすか迷っている方へ
遺伝子検査の結果から、次の一手を一緒に考えます

「使える薬がない」と言われた検査結果にも、読み解き方があります。
当院は遺伝子検査と腫瘍微小環境の評価をもとに、免疫療法を含めた治療を設計します。
これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

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    よくある質問

    プレシジョンメディシン(個別化医療)とは何ですか?

    遺伝子や免疫の状態を検査で調べ、その結果に合わせて治療を選ぶ考え方です。同じ診断名でも、変異の型や体の状態は一人ひとり異なります。当院ではプレシジョンメディシンのページで、検査から治療設計までの流れを説明しています。

    遺伝子検査で使える薬が見つからなかった場合はどうなりますか?

    承認薬に結びつく変異が見つかる方は1〜2割程度と報告されています。見つからなかった場合も、腫瘍微小環境や免疫の状態をもとに、樹状細胞ワクチン療法や放射線・抗がん剤の組み合わせを設計できます。結果を「使えない」で終わらせないことが大切です。

    検査はどこで受けられますか?

    保険の遺伝子パネル検査は、標準治療が終了または終了見込みの方が対象で、実施できる医療機関も限られます。当院では自費のパネル検査や血液で調べるリキッドバイオプシーも扱い、結果の読み解きと治療への反映まで担当医が行います。

    参考にした記事

    監修医師:矢﨑 雄一郎医師

    監修医師

    矢﨑 雄一郎医師

    免疫療法・研究開発

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

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