Pioneering Precision Oncology in Japan
〜膵臓がんステージ4と診断された方・ご家族へ〜
膵臓がんステージ4や標準治療後の段階では、「もう治療法がないのか」「次に何ができるのか」という不安を抱える方が少なくありません。膵臓がんの多くにはKRAS変異が関与し、近年はRAS阻害薬などの新薬、免疫療法、腹膜播種への対応といった研究・開発が進んでいます。
プレシジョンクリニックグループでは、治療歴・遺伝子検査結果・全身状態をもとに、分子標的治療・腫瘍微小環境の改善・免疫療法の観点から、次に検討できる治療選択肢をご提案します。
2026年に承認された膵臓がんの新薬は、ダラクソンラシブ(daraxonrasib/RMC-6236)です。2026年8月26日、米国FDAが販売名 RASONQUE(ラソンク)として、化学療法歴のある、または多剤併用療法の適応とならない転移性膵腺癌に対して承認しました。転移性膵臓がんに対する分子標的薬としては、世界初の承認です。第III相 RASolute 302 試験では、全生存期間の中央値が13.2ヶ月(化学療法群6.7ヶ月/全登録集団)と約2倍に延び、死亡リスクは60%低下しました(HR 0.40。O'Reilly EM ら, NEJM 2026, DOI:10.1056/NEJMoa2605555)。膵臓がんの90%以上に存在するKRAS変異を、変異の型を問わず広くねらえる点が特徴で、米国の承認ではRAS変異検査(コンパニオン診断)は必須とされていません。ただし日本国内では未承認であり、保険診療での使用はできません(2026年8月時点)。
What is Pancreatic Cancer Stage 4
膵臓がんは「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期症状がほとんどなく、診断時にすでに進行していることが多いがんです。ステージ4は肝臓・肺・腹膜などへの遠隔転移が確認された状態を指し、診断時の約80%が切除不能と判断されます。
膵管がんではKRAS遺伝子変異が高頻度に認められます。この変異により細胞増殖シグナルが過剰に活性化し、がん細胞の増殖に関わります。変異の「型」(G12D・G12V・G12R など)を知ることが、治験・RAS阻害薬・個別化医療の可能性を整理する第一歩になります。

Takai E, et al. Scientific Reports. 2015;5:18425, Figure 3. CC BY 4.0. 改変なし。
膵臓がんの代表である膵管がんでは、KRAS(約90%)のほか、TP53(50〜75%)・CDKN2A(約40%)・SMAD4(約50%)の変異が見られます。またBRCA1/2変異(5〜7%)も一部に存在し、治療方針(プラチナ製剤・PARP阻害薬の選択など)に影響します。
これらの変異情報を遺伝子検査(エクソーム解析・リキッドバイオプシー)で把握することで、個々の膵臓がんの「地図」を読み解くことができます。
用語集:KRAS変異とは →Standard Treatment Options
現在の標準化学療法はFOLFIRINOX・GnP療法・オニバイド療法が中心です。これらは「殺細胞性」抗がん剤であり、がん細胞だけでなく正常細胞も攻撃するため、骨髄抑制・末梢神経障害・消化器症状などの副作用管理が重要になります。
一方、MSI-H陽性例では免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)が保険適用となります。また遺伝子検査(CPS・TMB・HER2等)の結果によっては、さらに検討できる選択肢が広がる場合があります。
ゲムシタビン+nab-パクリタキセルの2剤併用。全身状態や年齢、合併症、既治療歴を踏まえて選択されます。末梢神経障害や骨髄抑制などの副作用管理が重要です。
用語集:GnP療法 →一次治療後に増悪した場合の二次治療として用いられます。イリノテカンをリポソームで包み、5-FU/ロイコボリンと併用します。骨髄抑制や下痢などの副作用管理が重要です。
用語集:オニバイド療法 →MSI-H・HER2・BRCA変異などのバイオマーカー陽性例で選択肢になります。コンパニオン診断による適応確認が前提です。
免疫チェックポイント阻害薬 →現在の標準治療の多くは「腫瘍の進行を遅らせる」ことを目標とした治療であり、ステージ4での根治は難しいとされています。標準治療に加えて、あるいはその後に何が検討できるかを知りたい方は、現在の遺伝子検査結果・治療歴をご持参のうえご相談ください。
New Drug Approval 2026
2026年8月26日、米国FDAが、転移性膵腺癌に対する分子標的薬として世界で初めてRASONQUE(ラソンク/一般名:ダラクソンラシブ)を承認しました。ここでは「この承認がご自身に関係するのか」という観点から、適応・試験結果・日本での現状を整理します。
米国での適応は、転移性膵腺癌の成人のうち、①1つ以上の全身療法を受けたことがある方、または②多剤併用の全身療法の適応とならない方です。膵臓がんの90%以上に存在するKRAS変異を、変異の型を問わず広くねらう薬であるため、米国の承認ではRAS変異検査(コンパニオン診断)は必須とされていません。用法は1日1回300mgの経口投与です。
一方で、未治療で多剤併用療法を受けられる方、遠隔転移のない局所進行、手術後の再発予防(術後補助療法)は、米国でも承認の対象外です。ご自身がどこに当てはまるかによって、確認すべきことは変わります。
| ご自身の状況 | 米国での適応 | いま日本で確認できること |
|---|---|---|
| 一次治療(FOLFIRINOX・GnPなど)のあとに増悪した | 適応内 | 遺伝子検査でKRAS変異の型・MSI・HER2・BRCAを確認/国内で実施中の治験・臨床試験の有無/分子標的治療と免疫療法の組み合わせ |
| 全身状態などから多剤併用の抗がん剤が難しい | 適応内 | 上記に加え、栄養状態・支持療法の整備。全身状態によって選べる範囲が変わるため、まず現状の評価から |
| まだ未治療で、多剤併用療法を受けられる | 対象外 | まず標準治療。並行して遺伝子検査を受けておくと、次の選択肢を早く整理できます |
| 遠隔転移はなく、局所進行にとどまる | 対象外 | 手術・放射線を含めた集学的治療の検討。コンバージョン手術の可能性の評価 |
| 手術後の再発予防として使いたい | 対象外 | 術後補助化学療法が基本。再発時に備えて検査結果を整理しておくこと |
「米国での適応」は米国FDAが承認した適応の範囲であり、日本での使用可否を示すものではありません(日本国内は未承認)。「いま日本で確認できること」は一般的な考え方であり、実際に何を選べるかは治療歴・全身状態・検査結果によって異なります。
500名を1対1で無作為に割り付け、RASONQUEと医師選択の標準化学療法を比較した国際共同試験です。全登録集団では、次の結果が報告されています。
安全性については、米国の添付文書に皮膚・軟部組織障害、口内炎・口腔障害、下痢、消化管穿孔、間質性肺疾患(ILD)・肺臓炎、胚・胎児毒性に関する警告および使用上の注意が記載されています。効果と副作用の両面を踏まえた判断が必要な薬です。
RASONQUE(ラソンク)は日本国内では未承認であり、保険診療での使用はできません(2026年8月時点)。
ただし、今回のFDA審査は各国が同時に審査を進める国際的な枠組み「Project Orbis」のもとで行われ、日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)と欧州のEMA(欧州医薬品庁)が公式オブザーバーとして参加していました。FDAは、申請が他の規制当局で審査中である可能性にも言及しています。また本承認は、リアルタイム・オンコロジー・レビュー(RTOR)およびFDA長官のNational Priority Review Voucher(CNPV)パイロットの対象となり、本来の審査期限より約6.5ヶ月早い決定でした。ブレークスルーセラピー指定・希少疾病用医薬品指定も受けています。
日本での承認時期について、公式な発表はありません。上記の経緯は国内での承認を約束するものではありませんが、日本の規制当局が今回の審査に関与していたという事実は、今後の動向を追ううえでの手がかりになります。
いちばんの出発点は、ご自身のKRAS/RAS変異の型を知っておくことです。G12D・G12V・G12R・G12Cといった型に加え、MSI・HER2・BRCAの状態がわかると、国内で参加できる治験、すでに承認されている分子標的治療、免疫療法との組み合わせなど、検討できる範囲が具体的になります。将来この薬が国内で使えるようになった場合にも、検査結果は無駄になりません。
当院では、これまでの治療歴と検査結果をもとに、分子標的治療・腫瘍微小環境の改善・免疫療法という3つの観点から、次に主治医と確認すべき論点を整理してお伝えしています。薬剤そのものの詳しい解説はダラクソンラシブ(RASONQUE/ラソンク)とは|完全解説、変異の型ごとの整理はRAS変異がん専門外来をご覧ください。
出典:U.S. Food and Drug Administration「FDA approves daraxonrasib for metastatic pancreatic adenocarcinoma」(2026年8月26日)/O'Reilly EM, et al. 「Daraxonrasib or Chemotherapy in Previously Treated Metastatic Pancreatic Cancer」N Engl J Med. 2026. DOI:10.1056/NEJMoa2605555/Revolution Medicines Japan 株式会社(最終確認:2026年8月28日)
Frequently Asked Questions
膵臓がんステージ4の患者さま・ご家族から実際に多く寄せられる質問にお答えします。
Our Three Scientific Approaches
膵管がんではKRAS遺伝子変異が高頻度に認められます。当グループが目指すのは、この変異情報を起点に、分子標的治療・腫瘍微小環境への介入・免疫療法を統合して、検討可能な選択肢を医学的に整理することです。効果や副作用には個人差があるため、病状・治療歴・検査結果を確認したうえで慎重に検討します。
最終的には3つのアプローチをゲノム解析の結果に基づいて組み合わせます。標準治療との並行・順次・補完といった関係性も、個別の状況に応じて設計します。
KRAS変異の型・CPS/TPSスコア・MMR・HER2などの分子情報に基づき、薬剤選択・免疫療法適応・ワクチン抗原設計の手がかりを得ます。エクソーム解析および各種リキッドバイオプシーを個別に実施します。
RAS変異がん専門外来 →がんは自らの周囲に免疫が働けない環境(TME)を作り出します。当グループ独自の解析のもとで処方する薬物療法により、腫瘍微小環境を整えることを目指します。
TME解説コラム →免疫チェックポイント阻害薬と樹状細胞ワクチン療法(腫瘍関連抗原+ネオアンチゲン)の2本立てで、自己の免疫でがんを攻撃できる体をつくることを目指します。
樹状細胞ワクチン療法 →3つのアプローチはそれぞれがとても重要です。「ゲノム解析で判明した変異の型と免疫・TMEプロファイルをもとに、どのような治療の組み合わせが考えうるか」をチームで整理、ご提案いたします。
Pancreatic Cancer Precision Medicine Team
開院以来、ステージ4の膵臓がん治療に力を入れてきた専門医チームです。消化器(肝胆膵)内科・外科、薬物療法、免疫療法、ゲノム解析の視点を持ち寄り、標準治療後に検討すべき選択肢をご提案いたします。
Treatment Results
当グループの膵臓がん症例の一部をご紹介します。治療効果には個人差があります。
膵臓がんステージ4(腹膜播種あり)に対して抗がん剤と免疫療法を実施。画像上で腹膜播種の消失が確認された症例。
※治療効果には個人差があります肝転移を伴う膵臓がんステージ4に対する治療後、画像上で原発巣と肝転移の消失が確認された症例。
※治療効果には個人差があります標準治療終了後、遺伝子情報に基づく分子標的薬と免疫療法を組み合わせ、画像上の改善が確認された症例。
※治療効果には個人差がありますステージ3膵臓がんに対し免疫療法を行い、手術により寛解。その後無再発で経過している30代の症例。
※治療効果には個人差があります
Director's Message
How to Consult
膵臓がんについて、初めての方でも相談しやすいよう、4つのステップで進めます。ステージ4・標準治療後・腹膜播種・KRAS/RAS変異のいずれの段階でもご利用いただけます。
相談フォームに、診断名・現在の治療状況・相談したい内容をご入力ください。
画像検査・病理診断・腫瘍マーカー・遺伝子検査・これまでの抗がん剤治療歴を確認します。
標準治療、臨床試験、分子標的治療、免疫療法、支持療法の観点から、主治医と確認すべき論点を整理します。
ご入力内容を確認したうえで、担当者より折り返しご連絡します。
プレシジョンクリニックでは、膵臓がん専門の外科医・内科医・がん薬物療法医・ゲノム解析に精通した医師がチームを組み、KRASをはじめとする遺伝子変異の解析に基づいて、お一人おひとりに合った膵臓がんの個別化医療をご提案しています。標準治療に加えて検討できる選択肢をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。