用語集

あ行

アフェレーシス(成分採血)
成分採血装置を使用して血液中の特定成分だけを採血する方法です。プレシジョンクリニックグループでは樹状細胞に関係する細胞だけを取り出します。樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞を作るために単球という細胞を血液から分離するために、アフェレーシス(成分採血)を行います。
アブスコパル効果
アブスコパル効果とは、放射線療法や光免疫療法において照射野外の病変の縮小効果が認められる免疫学的現象です。照射により、がん細胞が死滅すると、がん抗原が放出され、樹状細胞を介したT細胞刺激により、がん特異的ヘルパーT細胞/キラーT細胞が誘導されることで、結果として遠隔にある転移巣に対してアブスコパル効果を示すといった免疫学的メカニズムが考えられています。この効果を誘導するために、条件があることが分かっており、①がんによって抑制されている抗腫瘍免疫を活性化すること、②がんによって誘導される免疫抑制を打破すること、が重要とされています。この考えに基づき、当グループでは樹状細胞ワクチン療法の独自のプロコールを開発し、アブスコパル効果を免疫学的に誘導できる取り組みを行っております。
胃がん
胃がんとは
胃がんは肺がんと並んで日本人に多いがんとして知られています。ただし、高齢化のため罹患数は多いものの、一昔前の同世代で比較すると、その数は男女ともに減っています。その背景には胃がんの独立したリスク要因であるヘリコバクターピロリ菌の感染者が少なくなり、除菌が進んでいることがあります。しかし胃がんのリスク要因はピロリ菌だけでなく、喫煙なども指摘されているので、これらを避けるとともに定期的ながん検診で早期発見に努めることが、胃がん予防および早期治療の要となります。

胃がんは胃の出口(幽門)に近い粘膜に発生しやすく、進行に伴い胃の壁に沿って広がったり、粘膜を超えて深く入り込んだりします。一方、胃壁の粘膜の下にもぐったまま広がっていくタイプもあります。これを「スキルス性の胃がん」といい、発見しにくいため、多くの場合、進行した状態で見つかります。

胃がんの種類
胃がんの種類ですが、ほとんどが腺がんで、細胞や組織の特徴から、大きく分化型と未分化型に分けられます。一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が速い傾向があるといわれています。また、未分化型は、がん細胞があまりまとまりを作らず、胃の壁にバラバラと浸み込むように広がっていくものが多くあります。

なお、スキルス胃がんは未分化型が多いですが、未分化型のすべての胃がんがスキルス胃がんというわけではありません。
(引用:がん情報サービス)

胃がんの治療
(1)一次化学療法
一次化学療法では、殺細胞性抗がん薬を用います。なお、胃がんでは、HER2ハーツーと呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関わっている場合があるため、治療前に病理検査を行い、HER2陽性の場合には、HER2タンパク質の働きを抑える分子標的薬を併用することが推奨されています。また、HER2陰性の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を併用する場合もあります。

(2)二次化学療法
二次化学療法では、一次化学療法で使用しなかった細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を組み合わせて用います。二次化学療法の前には、MSI検査と呼ばれるがんの遺伝子検査を行うことが推奨されています。MSI検査で、MSI-High(遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態)の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を用いることもあります。

(3)三次化学療法
三次化学療法では、HER2陰性の場合には、二次化学療法までに使用しなかった細胞障害性抗がん薬、もしくは免疫チェックポイント阻害薬のいずれか、HER2陽性の場合は、一次化学療法、二次化学療法とは異なる種類の分子標的薬を用いることがあります。なお、二次化学療法までに免疫チェックポイント阻害薬を使用した場合は、三次治療で用いることは推奨されていません。

(4)四次化学療法以降
四次化学療法以降は、三次化学療法までで候補になった薬のうち、使用しなかった薬剤に切り替えて治療することを検討します。

(引用:がん情報サービス)
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遺伝子パネル検査
栄養療法
適切な栄養管理は、身体機能を維持・増進させます。特に免疫療法のように、細胞を利用した治療の場合、栄養が重要な要素になると考えられます。 がん患者さまに対するダイエットカウンセリングは、治療中の体重減少抑制、栄養状態・QOL・身体機能の維持、がん治療の継続に有効との報告があり、ガイドライン 1,2)でも推奨されていますが、本邦の報告は多くありません。

1)日本静脈経腸栄養学会(編): がん治療施行時.静脈経腸栄養ガイドライン第3版,照林社,東京,2013,pp333-343
2)Arends J,Bodoky G,Bozzetti F,et al.: ESPEN Guidelines on enteral nutrition: Non-surgical oncology.Clin Nutr 25: 245-259, 2006

がんにおける栄養状態低下の誘因として食欲低下と代謝異常になりますが、これらを一つ一つに対して対策していく必要があります。当グループでは免疫の環境を改善するためにも積極的に栄養療法を取り入れています。

●食欲低下
味覚、臭覚の変化
疼痛、発熱 などの症状
がん悪液質 (サイトカイン・トキソホルモンが影響)
浮腫、腹水、疼痛等諸症状 不安などの精神的要因
意識障害 など
●代謝異常
エネルギー消費
代謝亢進
合成障害
吸収障害
エクソーム解析
エフェクターT細胞
温熱療法

温熱療法は、がん細胞が正常細胞と比べて熱に弱いという性質を利用し、がんの局所に電磁波等を当てるなどして熱を加え、がん細胞を死滅させようとするがん治療法です。

がん細胞が正常細胞よりも熱に弱いことを利用した治療ですが、体も適度に温まり、免疫力を高めます。樹状細胞についてはその働きを促進し、がん細胞の認識力を高めると報告されています。

免疫力を保ちながらがんを狙い撃ちするという、当グループのがん治療戦略に合致する治療法です。また温熱療法と抗がん剤治療の併用でもよい治療成績が報告されています。 歴史は古く、1960年代から本格的な研究がはじめられました。 温熱療法には全身温熱療法という全身を加温する方法と、 局所温熱療法というがんの周辺を加温する方法があります。 一般的には、局所温熱療法がよく使用される方法で、 マイクロ波や電磁波を用いた装置でがんの周辺を温めます。

国内では装置の普及が進み、全国の多くの病院に導入されています。1996年4月から、それまで限定的であった保険も全面適用となりました。 副作用も少なく、免疫療法と併用することにより、より効果が期待できます。

か行

獲得免疫
最初に攻撃をしかける自然免疫に対して、やや遅れて誘導されるのが獲得免疫です。初期攻撃で得た病原体などの特徴を記憶し、その特徴を目印にして、T細胞やB細胞が集中攻撃します。さらに、学習したこれらの免疫細胞は、次に同じ特徴の病原体が侵入すると素早く認識して攻撃し、防御できるようになります。T細胞のうち、がんの特徴を記憶して戦うがん特異的キラーT細胞、がん特異的ヘルパーT細胞が重要になります。
活性化リンパ球療法(LAK療法)
活性化自己リンパ球療法とは、患者さまの血液からリンパ球を採取し、体外で増殖させ患者さまの体内に戻す治療方法です。抗がん剤や放射線などの治療で弱った免疫力を回復させ、がんと戦う力が高めることができる治療法です。活性化したキラーT細胞などのリンパ球が出すサイトカインや成長因子が、体内の免疫環境を整え、がん免疫の働きを助ける効果も報告されています。
治療の流れ:
患者さまの血液から得られたリンパ球を、体外で細胞を刺激する物質(サイトカインなど)を用いて攻撃力の高いリンパ球へと培養していきます(約1,000倍に増えます)。約2週間で培養は完了します。点滴により活性化されたリンパ球を体内に戻して、がんを攻撃します。
適応:
免疫療法を希望される患者さま(血液がんなど、一部適応とならないものがあります)で、がんの部位や血液データをもとに決定いたします。主に樹状細胞ワクチン療法によってキラーT細胞が増殖した後に、本療法を実施します。
他の治療との併用:
ほぼすべてのがん治療(手術、抗がん剤、放射線療法、緩和医療など)、樹状細胞ワクチン療法との併用効果を狙って併用します。
肝臓がん
肝臓がんとは
原発性の肝臓がんは年間約4万人の方が発病し、3万5千人が亡くなっています。臓器別死亡者数では、男性では第3位、女性では第5位と、近年増加傾向にあるがんのひとつです。
肝臓がんの特徴は、8割以上の方が慢性ウィルス性肝炎(B型、C型など)や肝硬変をすでに患っていることです。肝切除後でも、ウィルス性肝炎などの影響で、3年以内に約7割の方で残った肝臓内に新たにがんが発生します。
ただし、小さいうちに再発を発見すれば、次の治療によってがんを消失させることも可能な場合があります。このため、治療後も定期的に血液検査や超音波検査・CT・MRIといった画像検査をお受けいただくことが重要です。

肝臓がんの治療
肝臓がんの治療法には、肝切除、肝移植、穿刺療法(ラジオ波焼灼療法(RFA)、経皮的エタノール注入(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT))や肝動脈塞栓術(肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE))があります。
がんが肝臓の一部に限局している場合に最も適した治療法は肝切除です。術前の検査では発見されなかった小さながんも、手術時に発見して同時に切除できる利点があります。
腫瘍の大きさが3cm以下、個数が3個以下といった場合には、切除ができなくても穿刺療法が非常に有効な治療法です。
切除も穿刺療法もできない方は、全肝臓がんの4割程度います。この場合は、肝機能に応じて肝動脈塞栓術などが考慮されます。
ただし4cmを超えるがんでは半数以上で肝臓内の血管などに目に見えないがん細胞が広がっており、肝動脈塞栓術の効果が不十分になりやすいと言われています。

薬物療法:
肝細胞がんの全身薬物療法では、分子標的薬による治療(分子標的治療)や免疫チェックポイント阻害薬による治療が標準治療です。肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などが行えない進行性の肝細胞がんで、体の状態を表す指標の1つであるパフォーマンスステータスと肝臓の機能がともに良好なChild-Pugh分類Aの場合には、全身薬物療法を行います。

肝細胞がんが4個以上の場合などには、鼠径部あるいは肘や手首の動脈からカテーテルを入れ、血管造影しながら先端を肝動脈まで挿入し、細胞障害性抗がん薬を注入する肝動注化学療法(TAI)が行われることがあります。
(引用:がん情報サービス)
緩和ケア
緩和ケアとは、2002年のWHO(世界保健機関)による定義による、「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな(霊的な・魂の)問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL;生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである。」と定義されています。

Palliative care

provides relief from pain and other distressing symptoms;
affirms life and regards dying as a normal process;
intends neither to hasten or postpone death;
integrates the psychological and spiritual aspects of patient care;
offers a support system to help patients live as actively as possible until death;
offers a support system to help the family cope during the patients illness and in their own bereavement;
uses a team approach to address the needs of patients and their families, including bereavement counselling, if indicated;
will enhance quality of life, and may also positively influence the course of illness;
is applicable early in the course of illness, in conjunction with other therapies that are intended to prolong life, such as chemotherapy or radiation therapy, and includes those investigations needed to better understand and manage distressing clinical complications.

すなわち緩和ケアとは、がん患者さまやそのご家族に対し、
現在の治療の目的を認識し、予後の見通しをたて、
患者さまが現在困っていることの見極めをおこない、その苦痛を緩和することにより、
患者さまやご家族のQOLを最大限まで高めることを目標とする医療行為といえます。
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がん・癌・ガン
がんとは、体を維持するために適切に細胞を増殖・調節することができなくなってしまい、無秩序に増えつづけるようになった細胞です。がん細胞の性質は2つあり、1つはがんが発生した場所を超えて、周囲の正常組織を破壊しながら拡がっていく「浸潤」、そしてもう一つは周囲の血管やリンパ管を壊してその中に侵入し、血液やリンパ液の中の流れに乗って離れた所で増殖する「転移」があります。がんがヒトの死因になるのは、多くの場合、「浸潤」や「転移」によって拡がって行った先で臓器が破壊され、生命の維持に必要な機能、例えば肺における呼吸や肝臓における毒物代謝が充分に行えなくなったり、出血を起こすことなどによります。
がんゲノム医療
ゲノムとは、その生物に含まれている、その生物を作るのに必要なすべてのDNAの情報を指します。一方、遺伝子とは、化学物質が意味のある順番で並んだ文字列で、それが生命を作る・起動するために必要な情報を指します。 がんゲノム医療とは、このゲノムに基づいたがん医療です。ゲノムは患者さま一人ひとり異なるため、個別化医療ともいます。プレシジョンメディスンと表現することもあります。
プレシジョンメディスンという言葉は2015年、オバマ前アメリカ大統領が一般教書演説で推進を約束したことで世界的にも知られるようになった言葉です。
「精密医療」と訳され、患者さま一人ひとりに合わせた治療全般のことを指しますが、主にがん患者さまの治療に用いられています。



【例】胃がんと診断された患者さまがいた場合
胃がんの患者さまのがん組織を採取して、遺伝子情報を解析すると、がんの原因となった遺伝子変異が見つかる場合があります。その情報を元に最も効果的な治療を行うのががんゲノム医療です。

胃がん患者さまの集団の統計から有効だと思われる抗がん剤を、その患者さま本人にも効くかどうか順々に試していく従来のやり方に比べれば、患者さまのがんの変異部分に効果を示すことが明らかな薬剤を使うため、その精度は飛躍的に高まると言えます。

しかし、現在においてはがん細胞を攻撃するだけでなく、正常な組織に対しても作用する殺細胞性抗がん剤が推奨されています。

「殺細胞性抗がん剤」とは、私たちが、がんゲノム医療で用いる「分子標的薬」とは異なります。従来より用いられている、いわゆる抗がん剤と呼ばれてきた多くの薬剤は、がんの無限増殖に伴うDNAの合成や細胞分裂を阻害することによりがん細胞を死滅させる作用をもつため、「殺細胞性抗がん剤」と言われます。これらは正常細胞においても、DNAの合成や細胞分裂の盛んな血液の細胞や、腸管、毛髪細胞などに影響を及ぼし、ダメージを与えてしまいます。一方、「分子標的薬」は、がん細胞や腫瘍環境で異常亢進を来たしている分子、すなわちがんの特性を規定する分子を標的として、その機能を制御する作用をもつ薬剤です。 標的分子ががん特有の分子と明確であるため、正常組織のダメージは少なく、より治療効果の予測が可能となります。ダメージという点でもう一つ重要なことは、正常な免疫細胞に傷害を与えないという点においてもがん治療に優位に働くと言えます。



事前に遺伝子解析を行うがんゲノム医療では薬剤の命中率が高まるだけでなく、効果が見られない薬による余計な副作用が避けられること、免疫にダメージを与えにくいというメリットがあります。

遺伝子解析の技術の発達、特定のがん細胞に有効な分子標的薬の登場でがん治療は新たなステージを迎えたと言えるでしょう。
がん抗原
免疫が、がん細胞を攻撃するのに目印となる重要な物質が、がん抗原です。通常、がんに存在する特有のタンパク質、そしてそのペプチドが、がん抗原となります。一般にアミノ酸が50個以上結合したものをタンパク質といい、50個未満のものはペプチドと呼ばれます。
がん治療の目標
がん治療の目標を大雑把に分けると、がん細胞を体内から一掃する「根治(完治)」、一掃は無理でも当面命を取られないようにする「共存・延命」、苦痛を抑えたり取り除いたりする「緩和」となります。 それぞれの目標に応じて、基本となる治療法が様々に組み合わせられます。まずは基本となるがん治療を、がんの分類に照らしながら押さえることが大切です。がんは、がん化する細胞の種類によって、癌、肉腫、白血病などに分かれます。 がんと肉腫、つまり固形腫瘍の場合、早期で原発部位に留まっているのであれば、丸ごと完治を望むことが可能です。このような場合に行われるのが「局所治療」で外科的に切除する「手術」が最も一般的です。がんの種類と広がりや全身状態によっては「放射線療法」が選ばれることもあります。

放射線療法はX線やガンマ線、重粒子線、陽子線といった放射線をがん細胞へ照射して死滅される方法です。最大の特徴は「切らずに治す」点。低侵襲、つまり臓器の形態や機能を温存でき、多くは手術よりQOL(生活の質)の低下が少なくて済みます。 白血病など全身性のがんや、固形腫瘍でも血管やリンパ管を通じてがん細胞が全身へ回ってしまっている場合(遠隔転移)には、「全身療法」が選択されます。具体的に行われるのは「化学療法」と呼ばれる抗がん剤の投与です。最近では、がんを狙い撃ちにする「分子標的薬」が進歩しています。また、乳がんや前立腺がんなど、ホルモンによく反応する性質がある場合にはホルモン剤等を使った「ホルモン療法」も選択肢となり得ます。

ほとんどの抗がん剤は細胞分裂を阻止したり、細胞の自殺を促すように働きます。がん細胞以外の細胞分裂の多い細胞にも作用しますので、副作用が生じます。効果自体も場合によって異なるので、向き不向きを見極めながら副作用を上手にコントロールする必要があります。なお、近年、多くの分子標的薬が誕生しています。分子標的薬は、がん細胞以外に悪影響がないことをめざした抗がん剤として開発が進んできたものです。したがって、副作用がこれまでの抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)に比べて副作用は少ない薬剤がほとんどです。これらは、根治率向上を目指すため、手術や放射線療法、免疫療法と組み合わせることも多くなっています。

免疫療法については前述の治療に比較して、直ぐに効果が表れる治療法ではありません。それは自己の免疫を回復させることで治療効果を得るものだからともいえます。一方、、一旦効果が表れてくると長く効果が持続することが分かっており、副作用も少ないことから、がんの一掃は無理だとしても共存・延命が期待できる治療ともいえます。医学的には、Long SD(長期的な進行停止)、Slow PD(緩慢な進行)と表現することもあります。
がん特異的免疫療法
がん特異的とは、がんだけを標的としたという意味になります。具体的には、がん特異的キラーT細胞ががん細胞を攻撃する主役の細胞になります。
このキラーT細胞が、免疫力の低下した患者さまの体の中で、どれだけ効率的に「数とパワー」を増し、がんの中に攻め込んでいけるかが、がん治療効果に重要であることがわかってきました。
このがん特異的キラーT細胞の「数とパワー」を増やすためには、もう一つのカギとなる細胞、がん特異的ヘルパーT細胞の存在が不可欠です。
これらの2つのがん特異的T細胞を同時に戦う力を与える、がん免疫の中心的役割を担う細胞が樹状細胞です。
がん難民
日本人の2人に1人が、がんになるといわれています。しかし現状のがん治療は早期に発見された非進行期(早期)がんの患者さまに対する根治治療が中心となっており、進行期や再発がんといった根治する可能性が極めて低いがんの患者さまは打つ手がないと治療を拒否されることがあります。このように自分が治療を望んでも受けられないがん患者さまが「がん難民」と呼ばれているようです。このような「がん難民」は毎年32万人、累計で160万人余りいるといわれています。
ガンマナイフ
ガンマナイフは脳腫瘍、脳動静脈奇形などを治療する 定位的放射線外科治療の装置のことです。 このガンマナイフでは、201個のコバルト(Co60)線源が半円球状に配列され、 201本のガンマ線のビームが一点に集中するように設計されています。

患者さまの頭に穴のあいたヘルメットのようなものをかぶせますが、このヘルメットの穴に合わせて201個のコバルト60の線源が置いてあります。この線源から穴を通してガンマ線を照射して、病巣に集中的にあてます。あてたい部分がヘルメット中心部にくるようにすればピンポイントでがんを狙い撃ちすることができます。

周辺の正常な脳組織へ与える影響を最小限に抑えながら、 中心部にある病変に対しては通常の放射線治療よりも、 極めて高い線量の放射線を一回で照射することが可能となります。 開頭することなく、脳腫瘍、脳動静脈奇形などを治療できます。

脳腫瘍の場合、周囲の脳を守りながら腫瘍だけを攻撃しなければなりませんが、ガンマナイフは非常に優れた力を発揮します。対象の多くは、肺や乳房など他の部位から転移した脳腫瘍で、小さな脳転移は、ガンマナイフによる治療だけで消えてしまうことが多いです。

このように狙撃主として優秀なガンマナイフですが、ひつとつだけ難点として、麻酔をかける必要があるということがあげられます。正確に照射するために、患者さまの頭に金属の固定枠をピンで取り付ける必要があり、その際に痛みが伴うため、局所または全身麻酔をかけなければなりません。
がんワクチン
がんワクチン治療には、以下の2種類があります。
【1】ペプチドワクチン
人工的に合成したがんの目印(人工がん抗原:多くの場合は、タンパク質よりももっと小さいアミノ酸が連結した「ペプチド」というものを使用。)を患者さまに投与して、体内でがんを狙い撃ちするリンパ球や抗体を作らせるがん治療法です。

患者さまに注入されたペプチドは、体内の樹状細胞に取り込まれて、樹状細胞からリンパ球(キラーT細胞)にその情報が伝達されます。情報を伝達されたリンパ球(キラーT細胞)が、がん細胞を攻撃します。また、「ワクチン」と呼ばれるように、がん抗原の記憶がリンパ球に残り、抗腫瘍効果が長期間期待できます。「樹状細胞を培養する必要がなく、患者さまの負担が小さい」という利点がある一方、「体外で大量に培養した樹状細胞にがん抗原を取り込ませて体内に投与すれば、より治療効果は高くなるのではないか?」という考えから、日本では樹状細胞ワクチン療法のほうが多く医療現場に取り入れられています。

【2】樹状細胞ワクチン療法
体外で大量に作製した樹状細胞にがん抗原を与えて、患者さまの体内に戻してキラーT細胞をより効率よく増やすことによって、抗腫瘍効果を狙った細胞がんワクチン療法です。
キラーT細胞
細胞表面にCD8という分子を持つT細胞の一種で、ヘルパーT細胞からの指示を受け、宿主(患者さま)にとって異物になる異常細胞(がん細胞、ウイルス感染細胞など)を認識し、たんぱく質の1種であるパーフォリンを放出して破壊する細胞です。細胞傷害性T細胞(CTL)ともいいます。

役目を終えたキラーT細胞はほとんど死滅しますが、一部はメモリーキラーT細胞として残り、同じ敵に備えることができます。
クール(セット)
「クール(セット)」とは治療期間の単位で、各治療法ごとに異なります。プレシジョンクリニックの樹状細胞ワクチン療法では、5~7回(3〜4か月の期間)の樹状細胞ワクチンの投与を1クール(1セット)としています。
ケトン食療法
ケトン食は、糖質制限食をさらに厳しくした食事療法です。動物試験では、既にケトン体を高値にすることでがん細胞の抑制効果が確認されています。ケトン食はもともとは、難治性小児てんかんの治療食で、1920代から欧米や日本で実施されていました。海外においても「コクランライブラリー 2010年版」「英国立医療技術評価機構・2011年版」に、小児てんかんの治療食として正式採用されており、またアイオワ大学+NIH(米国国立衛生研究所)」では、同様のケトン食研究が非小細胞肺がんⅣ期を対象に、2011年8月から開始されています。一方、国内においては、第53回日本癌治療学会学術集会で「肺癌患者におけるケトン食の有用性と安全性についての検討」と題して、大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座萩原圭祐教授らの発表で、2013年の肺腺癌Ⅳ期の患者様に対する臨床研究で、2症例に寛解、1症例は胸膜播種はあるものの長期間の進行停止、2症例は進行という研究成果を発表をされています。ケトン食は動物だけでなくヒトのがんに対して一定の効果が期待できるようです。
抗がん効果(抗腫瘍効果)
抗がん効果(抗腫瘍効果)とは、がんの増殖と浸潤を抑制し、減弱させる効果のことです。
抗がん剤治療(化学療法)
化学療法とは、薬を使って、がんを治療する方法のことです。 抗がん剤、ホルモン剤、免疫賦活剤などがこれに相当します。 ここでは、抗がん剤治療について説明します。

抗がん剤の種類
抗がん剤は作用の仕方や由来などにより、「殺細胞性抗がん剤」 と「分子標的薬」に分類されます。「殺細胞性抗がん剤」はさらにアルキル化剤、 代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物アルカロイドなどに分類されます。 最近は、がん細胞に特異性の高い標的分子を探し出し、その標的に効率よく作用する薬(分子標的薬)の開発が盛んに行われています。 使い方も静脈注射、内服などによる全身投与のほかに、肝臓の動脈へ注入して肝臓のがんに濃い抗がん剤が行き渡るようにする方法など、いろいろあります。

より薬物有害反応が少なく、効果の高い薬の開発が期待されています。

抗がん剤の特徴
抗がん剤は、基本的には全身にほぼ均等に作用するため、「全身治療」と言えます。がんには、抗がん剤によく反応するタイプのものと、そうでないものがあり、白血病などのがんは抗がん剤治療によって完全に治すことが期待できます。しかし、ほとんどのがんに対しては、抗がん剤だけでがんを完治させることは出来ません。抗がん剤を使う目的は、がん細胞の増殖を抑えて、がんの進行を抑えることです。 がんを完全に治すことができない場合でも、がんの大きさを小さくすることで、延命効果や痛みなどの症状を和らげることができます。
ただし、抗がん剤は、全身にほぼ均等に作用するため、がん細胞よりもはるかに数が多い正常の細胞にも悪影響を与えるため、抗がん剤の多くは副作用を伴うことが多いのが欠点です。

抗がん剤の副作用
抗がん剤(特に殺細胞性抗がん剤)には副作用が伴います。それは、がん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるためです。したがって患者さまの全身状態(体調)が良くないと、かえって悪い結果を招いてしまうこともあります。抗がん剤は効果と副作用のバランスを考えながら使うことが非常に重要です。

当クリニックが提供する「樹状細胞ワクチン療法」をはじめとする免疫細胞療法は患者さまご自身の細胞を使用し、がん細胞を「狙い撃つ」治療です。自分の細胞を用いるため正常細胞に対する影響が少なく、副作用はほとんどないことがその特徴になります。
抗がん剤の副作用
『抗がん剤』とは
がんに対する薬物療法で使われる代表的なものが「抗がん剤」です。従来から使われている殺細胞性抗がん剤と分子標的薬を合わせて「化学療法」といいます。

殺細胞性の抗がん剤は、細胞の核内でDNA合成や細胞増殖にかかわる分子に作用し、細胞の分裂や増殖を阻害することで効果を発揮します。しかしながら、活発に増殖、分裂する正常細胞に対しても毒性を示すことから、副作用などによる患者さまへの身体的負担も高いものでした。一方、分子標的薬の殺細胞性抗がん剤との大きな違いは作用の仕方です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関与する増殖因子や、増殖因子の受容体、細胞内シグナル伝達物質など、固有の標的分子に対して特異的に作用します。そのため、正常細胞への影響が小さく副作用の軽減が期待される薬剤です。この分子標的薬により治療成績も向上するたくさんの報告があり、安全性だけでなく有効性の面でもがん治療に大きく貢献しています。

薬物療法には他にも増殖がホルモンに依存するがん種に対しては、ホルモン剤による治療法(ホルモン療法)、また免疫療法として免疫チェックポイント阻害剤もあります。

抗がん剤は100以上もの種類があります。投与方法は経口(飲み薬)、点滴、注射など薬によってさまざまあり、投与量や機関もそれぞれ異なってきます。近年は分子標的薬をはじめとする新薬の開発も進み、2剤以上を組み合わせて投与する薬物併用療法が盛んになっています。

抗がん剤は、体内に投与されると血液にのって全身をめぐり、あちらこちらにあるがん細胞を攻撃します(抗がん剤を病巣に直接投与し、局所に効かせるような治療法もあります)。白血病や悪性リンパ腫など、いくつかのがんは抗がん剤がたいへんよく効き、治癒にまで持ち込むことが可能です。しかし、ほとんどのがんに対しては、活発に増殖しようとするがん細胞の勢いを止める作用はあるものの完全にがん細胞を殺すところまでは難しいと考えられています。

抗がん剤治療は、基本的にがんを縮小させ、病気の進行を遅らせることで延命したりがんによる痛みなどの症状を緩和したりすることが目的となります。

抗がん剤の副作用
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるので、多かれ少なかれ副作用を伴います。
もちろん副作用の内容や程度には個人差があり「副作用があると言われてびくびくしていたが、思っていたほどではなかった」という人もいれば、途中で休んだり、量を減らしたりしないと耐えられない人もいます。

主な抗がん剤の副作用には、脱毛や吐き気、しびれなどがありますが、こうした自覚症状だけではありません。白血球が減少するなど、自覚はないものの体の内部にも副作用が生じます。おもな免疫機能を担っている白血球が少なくなると、感染症にかかりやすくなるなど、いわゆる「抵抗力」が落ちてしまうと考えられます。
近年は副作用を緩和する薬も進歩しており、以前より抗がん剤によるつらい吐き気や悪心をコントロールできるようになっています。
当クリニックが提供する「樹状細胞ワクチン療法」は患者さまご自身の細胞を使用し、がん細胞を「狙い撃つ」がん治療です。そのため、この治療法は、正常細胞に対する影響が少なく、副作用はほとんど観察されません。
抗原
抗原とは、がん細胞上のHLA(主要組織適合抗原分子)と呼ばれるタンパク質に結合し、免疫反応を引き起こす物質です。
通常、細菌やウイルス、がんなどの異物のタンパク質などが免疫反応を引き起こす抗原となります。
抗原提示細胞
抗原提示細胞とは、細菌、ウイルス、がんなどの異物の断片を自分の細胞表面上にくっつけ(これを提示といいます)、T細胞を活性化させる細胞です。
抗原提示細胞は細胞表面上に主要組織適合抗原分子(HLAといいます)を持ち、これに抗原を載せて提示します。
T細胞はHLA上に提示された抗原を認識して活性化し、引き続いてそれに対する免疫反応をおこします。
樹状細胞は、非常に強力な抗原提示細胞であり、樹状細胞ワクチン療法はその機能を利用したがん治療法になります。

さ行

サイバーナイフ
コンピューター制御の可動式小型X線照射装置です。 患者さまの周囲を照射装置が回り、最大104カ所の停止位置から、 患者の病気部分を狙ってX線を照射します。 X線CTやMR画像に対応、誤差は1mm以内といわれています。

サイバーナイフは、エックス線を使用した細かい放射線ビームを病巣に集中照射する治療法で、頭部だけでなく頸部にも適応があります。ガンマナイフが頭部を固定して行われるのに対し、サイバーナイフはロボットアームに装置がつけられ、それが動き回って照射するので、固定の必要がありません。メッシュのマスクで固定するだけなので、数回に分けて放射線を照射(分割照射)できるという大きな利点があります。治療は1~2時間程度で入院も数日程度とガンマナイフと大きな差はありません。
細胞傷害性T細胞(CTL)
細胞表面にCD8という分子を持つT細胞の一種で、ヘルパーT細胞からの指示を受け、宿主(患者さま)にとって異物になる異常細胞(がん細胞、ウイルス感染細胞など)を認識し、たんぱく質の1種であるパーフォリンを放出して破壊する細胞です。キラーT細胞ともいいます。

役目を終えたキラーT細胞はほとんど死滅しますが、一部はメモリーキラーT細胞として残り、同じ敵に備えることができます。
自然免疫
体内に侵入した病原体などの非自己をいち早く発見し、最初に攻撃をしかける先天的な反応が自然免疫です。その役割を担うのがマクロファージ、樹状細胞、好中球、NK細胞などです。

免疫システムは、「自然免疫」と「獲得免疫」の2 段構えになっています。
自然免疫は「生まれつきに備わっている免疫システム」です。病原体だけが持っているパターンを認識し、病原体の侵入を素早く検知して、マクロファージ、樹状細胞、好中球が病原体を食べて分解します。
獲得免疫は「後天的に獲得した病原体などの非自己に特異的な免疫システム」です。一度侵入した病原体の情報を記憶し、再度同じ病原体が侵入したときには初回より素早く、より強力な免疫となり、この病原体を特異的に排除することができるようになります。
腫瘍血管
腫瘍血管とは、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)、肝細胞増殖因子 (HGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子 (bFGF)など腫瘍が出す因子によって作られた、腫瘍を栄養するための血管です。
正常の血管は、血管壁が3層構造になっていますが、新生された腫瘍血管は1層しかありません。この腫瘍血管にWT1と呼ばれる「がん抗原」が多く発現しているという報告もあり、プレシジョンクリニックが提供する樹状細胞ワクチン療法は、この腫瘍血管み攻撃していることが示唆せれています。
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)
腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte)の略で.腫瘍の中に浸潤している腫瘍反応性リンパ球,腫瘍抗原特異的なリンパ球が集中して存在することが明らかになっている。TILが多く浸潤しているがん組織をHot tumor、TILの浸潤が少ない腫瘍を、Cold tumorとも表現され、Hot tumorに関して免疫チェックポイント阻害剤の効果が高いことが入れている。本文中にもあるようにTIL中の腫瘍反応性T細胞を拡大培養して輸注する治療法が試みられている.
腫瘍浸潤リンパ球療法(TIL療法)
腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte)、具体的には腫瘍反応性T細胞・腫瘍特異的T細胞(がん特異的キラーT細胞、がん特異的ヘルパーT細胞など)を体外で大量培養して輸注する方法である。
腫瘍マーカー
腫瘍マーカーとは、腫瘍細胞が産生する特異性の高い物質です。
がんでない人の血液の中にも腫瘍マーカーは見つかることがあるため、腫瘍マーカーが検出されたからといって、必ずしもがんであるとは限りません。
腫瘍マーカーのほとんどが、腫瘍細胞も正常細胞も作る物質ですが、腫瘍細胞の方が大量に産生するという物質といえます。
がん患者さまでは、治療の有効性や再発の有無を知るために利用します。参考としていた腫瘍マーカーの値は一般的に、がんが再発すると高くなります。
一部の腫瘍マーカーは、呼吸器疾患や子宮内膜症、自己免疫疾患などの良性疾患と喫煙などの生活習慣で測定値が上昇する場合がありますので、複数の腫瘍マーカーを併用することでその欠点を補います。
腫瘍免疫
異物としてのがん細胞
免疫細胞たちの緻密な連携プレーによって、わたしたちのからだは守られています。からだは、自分自身(自己)の細胞で構成されており、そこへ侵入してきたウィルスや細菌などは”異物”(非自己)として認識され、免疫細胞たちの攻撃を受けて、やがて排除されます。 がん(腫瘍)細胞もまた”非自己”、すなわち異物と見なされます。
細胞の中には遺伝情報としてDNAが含まれています。これは、多少傷ついても修復され、元に戻りますが、稀に修復されず、これによって無秩序に細胞分裂を行うようになり、増殖の止まらない細胞があります。このような無秩序に増えている細胞は「がん細胞」と言われます。無秩序に増えるがん細胞は、正常な細胞に対して悪影響を与え、健康を害します。

“抗腫瘍免疫”-それはがん細胞を排除する免疫システム-
「正常細胞のがん細胞化」は、それほど珍しい現象ではありません。体内では毎日のように起こっている現象です。免疫細胞たちが、がん細胞を”非自己”として認識し、排除するため、大きながんに育つことはほとんどありません。
免疫細胞たちが行う、がん化した細胞への攻撃は、NK(ナチュラルキラー)細胞が優れています。特に、初期のがん細胞であれば、そのほとんどがNK細胞によって排除されます。NK細胞ががん細胞を減らす速度より、がん細胞の増殖能力が勝っているような場合でも、リンパ球や好中球など、他の免疫細胞たちが攻撃を加えて、最終的にがん細胞は排除されます。免疫システムは、ウィルスや細菌といった外敵だけではなく、同時にがんという病気からも私たちを守っています。

免疫細胞でも見分けにくいがん細胞
以上のように免疫細胞たちは、がん化した細胞を排除してくれますが、がん細胞も増殖するために、さまざまな手段で免疫細胞からの攻撃を回避しようとします。例えば、免疫細胞に攻撃されないために、時にがん細胞は正常細胞の「ふり」をして攻撃を逃れようとします。がん細胞は、もともと正常な細胞が変異して生じる細胞であるため、免疫細胞たちでも見分けずらい倍もあり、そして攻撃の機会を逃す場合もあります。その一方で、がん細胞の特徴を示す「がん細胞の目印」もあります。この目印をターゲットとして免疫細胞にがん細胞を攻撃させる免疫療法を特に「特異的免疫療法」といいます。
紹介状(診療情報提供書)
紹介状とは、診療情報提供書のことであり、医師が他の医師へ患者さまを紹介する場合に発行する書類です。
患者さまの個人情報ならびに症状・診断・治療など現在までの治療状況を記載しています。
大学病院など特定機能病院を受診する際、初診の患者さまは紹介状を持っていないと追加の料金を請求されることがあります。
紹介状は、患者さまの依頼によって作成される場合と、医師が他の病院の方が適切と考えて作成する場合がありますが、どちらの場合にも診療情報提供書(紹介状)を発行する場合には診療情報提供料という費用がかかります。
食事療法、栄養療法
栄養療法で、がんが治癒する訳ではないですが、
適切な栄養管理は、身体機能を維持・増進させます。特に免疫療法のように、体内の細胞を利用した治療の場合、栄養が重要な要素になると考えられています。
一方、がん患者さまに対するダイエットカウンセリングは、治療中の体重減少抑制、栄養状態・QOL・身体機能の維持、ひいては治療継続に有効との報告があり、各種ガイドライン
1,2)でも推奨されていますが、本邦の報告は多くありません。

1)日本静脈経腸栄養学会(編): がん治療施行時.静脈経腸栄養ガイドライン第3版,照林社,東京,2013,pp333-343
2)Arends J,Bodoky G,Bozzetti F,et al.: ESPEN Guidelines on enteral nutrition: Non-surgical oncology.Clin Nutr 25: 245-259, 2006


がんにおける栄養状態低下の誘因として食欲低下と代謝異常になりますが、これらを一つ一つに対して対策していく必要があります。


●食欲低下
味覚、臭覚の変化
疼痛、発熱 などの症状
がん悪液質
(サイトカイン・トキソホルモンが影響)
浮腫、腹水、疼痛等諸症状
不安などの精神的要因
意識障害 など
●代謝異常
エネルギー消費
代謝亢進
合成障害
吸収障害
診療情報提供書(紹介状)
診療情報提供書は、医師が他の医師へ患者さまを紹介する場合に発行する書類です。
患者さまの個人情報ならびに症状・診断・治療など現在までの治療状況を記載しています。
大学病院など特定機能病院を受診する際、初診の患者さまは診療情報提供書を持っていないと追加の料金を請求されることがあります。
診療情報提供書は、患者さまの依頼によって作成される場合と、医師が他の病院の方が適切と考えて作成する場合がありますが、どちらの場合にも診療情報提供書(紹介状)を発行する場合には診療情報提供料という費用がかかります。
自己がん組織
手術などで採取された患者さま自身のがん組織。
自己がん組織を利用して、免疫療法に応用したり、また遺伝子検査に利用して患者さまに合った抗がん剤(分子標的薬)を見つけたり、患者さまにとって非常に有用な治療資源です。
樹状細胞とは
樹状細胞は、皮膚や消化管などに存在する免疫細胞です。
1973年に米国のRalf Steinmanや京都大学の稲葉かよ先生らにより発見され、Steinmanはその業績で2011年ノーベル医学生理学賞を受賞したことで有名になりました。
名前のとおり、樹木の枝が伸びたような突起状(樹状様)の細胞表面を持った細胞です。
樹状細胞は、がん細胞・細菌・ウイルスなど、本来、体に存在しないもの(抗原)を見つけて己の細胞の中に取り込む(貪食)働きがあります。
がんをはじめとした異物を取り込んだ後、樹状細胞は活性化され、リンパ節に移動します。
リンパ節に入った樹状細胞は、まだ一度も抗原に出会ったことのないナイーブT細胞へと抗原を伝達(提示)し、ナイーブT細胞を活性化させます。このナイーブT細胞が、がんを攻撃するエフェクターT細胞(キラーT細胞、ヘルパーT細胞)へとなっていきます。これが獲得免疫の最初のイベントなります。
樹状細胞の働き
がん特異的免疫療法として注目される「樹状細胞」の働き
がんの「印」である「がん抗原」が明らかになったことで、免疫システムにおいてにわかに重要視されるようになったのが、「印」である「がん抗原」を認識する樹状細胞です。 樹状細胞が発見されたのは1970年代とされています。樹木の枝のような突起がいくつもある形態をしているため、このように名付けられたものの、その働きについてはほとんど分かっていませんでした。しかし年代を追うごとに、免疫システムにおいて敵を認識するという重要な役割が明らかになり、さらに「がん抗原」の発見によりがん治療や感染症治療などを語る上で欠かせない存在となったのです。 樹状細胞そのものにはがん細胞を攻撃する力はありません。しかし、がん抗原を細胞内に取り込んで、他の免疫細胞に「これが攻撃する相手の目印ですよ」と教える大切な役割をもっています。これがうまく機能しなければ、がん細胞を攻撃することは出来ません。
この樹状細胞の機能を応用した免疫療法が、当クリニックが提供する「樹状細胞ワクチン療法」です。

好中球、NK細胞、マクロファージや樹状細胞が、最前線で敵(細菌やウィルスなど)の体内への侵入を抑えると同時に、がん細胞を食べた樹状細胞やマクロファージ(特に樹状細胞が重要)は、リンパ節に移動し、細胞内で消化したがん細胞の断片である「がん抗原」を自分の細胞表面に掲げ、リンパ球の中でもがんの攻撃に司るT細胞に教えます。がんの目印の情報を持っていないリンパ球に、がんの目印を教えるのです(抗原を提示する、という言い方をします)。その働きのため、樹状細胞は「プロフェッショナル抗原提示細胞(がんの目印をT細胞に教える細胞)」とも呼ばれます。

免役システムの中で、樹状細胞はがんができたら、まず駆けつけて食べてしまう「見張り役」、そしてその後リンパ球を教育する「司令官」のような役割を演じています。すなわち樹状細胞は、自然免疫と獲得免役の「橋渡し役」と言えます。そしてがんの攻撃の主役がこの獲得免疫になります。さらにがんを攻撃する獲得免疫の主役はT細胞であり、具体的にキラーT細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、B細胞になります。

樹状細胞が細胞表面で「がん抗原」をのせる「器」には2種類あります。HLAクラスIとクラスIIです。一方、がんの目印を樹状細胞から教えられるT細胞も、CD8とCD4という2つのグループに分かれています。

CD8T細胞は、HLAクラスIという器に入っている「がん抗原」を覚えて、この抗原をもった細胞をがん細胞として攻撃します。このようなT細胞をがん特異的キラー細胞(細胞傷害性T細胞(CTL))と呼びます。CD4T細胞はHLAクラスIIという器に入ったものをがんの目印として記憶し、がん細胞を見つけるとインターフェロンガンマやインターロイキン2というサイトカインを放出します。これらのサイトカインは、いわばがん特異的キラーT細胞の栄養分です。サイトカインは、体内の細胞(主に免疫細胞)によって作られる、生理活性をもったタンパク質の総称であり、ホルモンのようなものです。

がん特異的キラーT細胞(CTL)はインターフェロンガンマやインターロイキン2といった「栄養」を摂取して元気になり、がん細胞をやっつけに行けるようになります。このような働きをするT細胞を、がん特異的ヘルパーT細胞と言います。これはいわばがん特異的キラーT細胞(CTL)の後方支援をする役目を負っています。

司令官である樹状細胞は、兵士であるキラーT細胞へがん細胞の目印「がん抗原」を教育するために必要な環境を作ります。これは自然免疫系のサイトカインであるインターロイキン12やインターロイキン18になります。これら自然免疫系のサイトカインに対し、インターフェロンガンマやインターロイキン2は獲得免疫系のサイトカインと言います。

つまり司令官が兵士たちに敵の情報を教えようとしても、真夏のクーラーもない教室で食事もとらずに指導しても、いくら優秀な兵士でも学ぼうとするモチベーションは保てません。兵士たちの学習意欲を向上させ、より優秀な兵士に育てるために必要な教室の環境作りを整えるのが、自然免疫系のサイトカインになります。自然免疫系の先行的な活性化があって、はじめてそれに続き起こる反応である獲得免疫系が正常に発動するのです。

一方B細胞は「がん抗原」を覚えると、ヘルパーT細胞の後方支援により活性化し、がんの目印だけに結合する抗体を作って、がん細胞を攻撃します。一般的には、がん細胞を攻撃することにおいて、B細胞が作る抗体よりもキラーT細胞(CTL)の方が中心的な任務をもって働いていると考えられていますが、抗体が中心になってがんを治したとする報告もあります。

このような獲得免疫反応は、がんの目印をしっかり覚えて狙い撃ちするために「がん特異的免疫」と呼ばれます。その中で中心的な役割を担っているのが樹状細胞なのです。樹状細胞は「自然免疫と獲得免疫の架け橋」であり、人体の持つ免疫のしくみにおいて極めて重要な役目を果たしていると言えます。
樹状細胞ワクチン療法
樹状細胞ワクチン療法とは、患者さまのがん細胞が持っている特徴「がん抗原」を目印として、そのがん細胞だけを狙い撃ちするような免疫力を高めるがん特異的免疫療法です。樹状細胞ワクチン療法は、活性化リンパ球療法(LAK療法)、NK細胞療法、ガンマデルタT細胞療法、といった他の免疫細胞を用いた治療にはない特質として、ワクチン効果というのがあります。これはがんに特異的免疫反応、すなわちそれによる抗腫瘍効果が数年に渡り持続するという意味です。

樹状細胞ワクチン療法とは、樹状細胞の働きを用いて、患者さま自身の体の中で、がんを攻撃する体制を作り上げる治療法です。患者さまのがんに対する免疫のみを高めるため正常細胞を傷つけることもなく、効率的で、重度な副作用が出ない体にやさしい治療法と言えます。
人工抗原
人工抗原とは、人工的に合成した抗原を指します。がんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチン療法、それらの研究に使用します。
膵臓がん
膵臓がんの特徴
膵臓がんは、食べ物を消化し、血糖値を調整する働きを持つ膵臓にできるがんで、そのほとんどは膵管にできます。また、膵臓がんは高齢になるほど多くなるがんで、年間約3万人が膵臓がんを新たに発症しており、ここ数年は増加傾向にあります。膵臓がんは、診断時点で既に進行例が多く、膵臓がんの5年相対生存率は7%(地域がん登録2005)の難治性のがんです。

膵臓がんの原因
膵臓がんの発症には不明な点が多く、はっきりとした原因はわかっていません。しかし、膵臓がんの原因としては、喫煙や過度の飲酒、糖分の多い炭酸飲料やコーヒーの摂取、動物性タンパク質や脂肪分の取りすぎなどが考えられています。

喫煙しない人に比べて、喫煙する人の膵臓がんの発症率は2~3倍との報告もあります。

また、慢性膵炎や糖尿病などのほかの膵臓の疾患がある場合、膵臓がんを発症しやすい傾向があります。糖尿病患者においては、健康な人に比べて膵臓がんになりやすく、膵臓がんによって糖尿病が悪化するといわれています。
膵臓がんの原因はいずれも生活習慣に関わるものですが、日本で膵臓がんが年々増加傾向にある背景には、食生活の欧米化や野菜不足があることも指摘されています。

膵臓がんのリスクファクターとして膵臓がんの家族歴があります。特に両親、兄弟姉妹に2人以上の膵臓がん患者がいる家族性の膵臓がん家系は一般人口に比べて6.79倍と優位に高く罹患します。

膵臓がんの種類
膵臓がんには、主に「膵管がん」と「神経内分泌腫瘍(神経内分泌がん)」があります。

膵臓がんの約90%は「膵管がん」で、膵臓の中心を通る膵管の上皮(膵管細胞)に発生します。
口から入った食べ物の消化を助ける消化酵素を含む膵液は、この膵管を通って、十二指腸に流れ込んでいます。膵臓は膵頭、膵体、膵尾に分けられますが、膵臓がんの多くは、十二指腸に隣接した膵頭部に発生します。膵頭部には、脂肪の分解を促す胆汁を肝臓から十二指腸に送り込む胆管が通っているため、膵管にできたがんが胆管を圧迫するようになると黄疸が出やすくなります。

「神経内分泌腫瘍」は、悪性腫瘍全体の1~2%と発症率は少ないものの、子どもから高齢者まで年代を問わずに見られます。膵臓には、ランゲルハンス島という、血糖値を調整する働きを持つホルモンを分泌している細胞の塊が散在していますが、このランゲルハンス島にできるのが、「神経内分泌腫瘍」です。
「神経内分泌腫瘍」には、「膵管がん」より治りやすいとされる悪性度の低い「神経内分泌腫瘍」と、進行が早く悪性度の高い「神経内分泌腫瘍」があります。

膵臓はからだの奥深くに存在するため、がんを見つけにくく、症状に気が付いた時にはがんが進行していることも少なくありません。
早期発見が難しく、治療困難ながんとして知られる膵臓がんですが、近年では新しい治療法の開発も進み、これまで通りの生活を送ることもできるようになってきています。

膵臓がんの治療
膵臓がんの治療は、全身状態が良好で切除適応となる場合は、外科的切除が治療の第一選択肢となります。一方、切除不能な膵臓がんについては、全身状態が良好であればFOLFIRINOX、ジェムザール(GEM)+アブラキサン(nab-paclitaxel)の併用療法が第一選択肢になります。一方、これらの副作用は強いため継続が困難になる場合が多く、それらが難しくなるとジェムザールの単剤、TS1の単剤、またはその併用などが行われます。

膵臓がんに対する免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ等)についてですが、これまでいい結果が出ていないのが現状です。その原因として膵臓がんの周りの組織の特殊性や遺伝子(ミスマッチ修復遺伝子)の異常の有無などが挙げられています。

一方、プレシジョンクリニックグループでは1,000例以上の膵臓がんに対する免疫療法の実績を持っておりますが、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ)とプレシジョンクリニックメソッドで行う樹状細胞ワクチン療法の併用することで、良好な成績が出てきています。
膵臓がんに対して免疫療法で効果が出てきている理由としては、プレシジョンクリニックメソッドの樹状細胞ワクチンを投与することで、膵臓がんやその周辺組織に浸潤し、膵臓がんを攻撃するT細胞が体内で増殖するからと考えています。実際に膵臓がんを攻撃するT細胞は、体内で2倍程度、多い患者で400倍弱まで増えていることが研究の結果明らかになっています。
また、抗がん剤(FOLFIRINOX、ジェムザール、アブラキサン)と比較して、副作用も軽度であるため体力が温存されるという利点もあります。
現在、プレシジョンクリニックグループのこれらのデータを活用して、日本初の膵臓がんに対する樹状細胞ワクチン療法の治験が和歌山県立医科大学で開始されています。
制御性T細胞
制御性T細胞は、キラーT細胞が正常細胞へ攻撃をしないよう、キラーT細胞の働きを抑制したり、免疫反応を終了に導く役割を担っている免疫細胞の一つです。
成分採血(アフェレーシス)
成分採血装置を使用して血液中の特定成分だけを採血する方法です。
プレシジョンクリニックでは樹状細胞に関係する細胞だけを取り出します。
樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞を作るために単球という細胞を血液から分離するために、成分採血(アフェレーシス)を行います。
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、かかりつけの医師とは良好な関係を保ちながら、それとは別にご病気のことや治療について他の医師から意見を聞くことです。がんのように、治療法が日々進歩している領域では、セカンドオピニオンの必要性はより高まっていると考えられます。治療法の選択肢が多岐にわたるため、専門家で さえどのような治療法であればその患者さまにとって一番いいのか、判断に悩むこともあります。セカンドオピニオンを受けることによって、患者さまにとって、より合った治療法を見つけられる可能性があります。
セット(クール)
「セット(クール)」とは治療期間の単位で、各治療法ごとに異なります。プレシジョンクリニックの樹状細胞ワクチン療法では、5~7回(3〜4か月の期間)の樹状細胞ワクチンの投与を1セット(1クール)としています。
セルプロセッシングセンター(CPC)
セルプロセッシングセンター(CPC)は、免疫細胞療法や再生医療、あるいは遺伝子治療など、細胞を利用した医療または研究を行なうための極めて高度な施設を指します。
プレシジョンクリニックでは、セルプロセッシングセンター(CPC)を安定的に運営するために、GMPという医薬品を製造するための厳格なルールに準拠しています。
前立腺がん
前立腺がんの特徴
前立腺がんとは男性だけにある前立腺という臓器に発生するがんです。前立腺の細胞が細胞生殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。
前立腺がんの特徴のひとつとして、一般的に発がんしてから臨床的ながんになるまで、40年近くかかるといわれるほど進行速度が遅いがんです。
前立腺がんの自覚症状として初期症状はほとんどあらわれませんが、がんが大きくなるにつれ、尿道の圧迫感、頻尿や残尿感が現れます。
さらに肥大すると排尿時の痛み、血尿や尿閉の症状、また前立腺の上部にある精嚢腺に広がると精液が赤くなることがあります。
診断がついた時にはすでに進展がんや転移がんとなっている人が7~8割にのぼっていました。
しかしPSA検査の進歩によりこのような進展がんは減ってきているため、自覚症状に頼らず検査を受けることが必要です。

前立腺がんの治療
前立腺がんの主な治療法は、監視療法、手術(外科治療)、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)や化学療法など複数の治療が選択可能な場合があります。これらの治療を単独あるいは組み合わせで行います。
治療法はPSA値、悪性度、リスク分類、また、患者様の年齢、全身状態や考え方などを基に治療法を選択することになります。
当クリックグループが提供する『樹状細胞ワクチン療法』は、副作用が少なく、放射線治療や抗がん剤治療と併用して、前立腺がんに対する治療効果が期待されます。

【トピックス】
予後不良である去勢抵抗性前立腺がんについて

去勢抵抗性前立腺がんの特徴
前立腺癌は男性ホルモンによって引き起こされるため、ホルモン療法が90%以上の患者さまに有効ですが、ホルモン療法を長期間継続すると、数年の経過で半数以上がホルモン療法に抵抗性を示す癌細胞が増え、治療効果が消失してしまうことが知られています。
このホルモン療法抵抗性となった状態は、外科的去勢後に症状が増悪した患者と合わせて「去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)」と定義しています。

去勢抵抗性前立腺がんの治療
去勢抵抗性前立腺がんの治療は抗がん剤になりますが、副作用が比較的少なく有用と評価されているドセタキセル、その効果が無くなると、抗がん剤カバジタキセル(ジェブタナ)、ホルモン治療剤エンザルタミド(イクスタンジ)とアビラテロン(ザイティガ)になります。
これも効かないとなると一般的に他に方法がないため、緩和医療を勧められます。
プレシジョンクリニックが提供する免疫療法『樹状細胞ワクチン療法』は、上記の抗がん剤とは異なる作用機序で去勢抵抗性前立腺がんを治療します。
具体的には前立腺がん細胞の存在するPSA、前立腺がんの増殖に重要な蛋白を持つ細胞を狙って攻撃する免疫療法になります。
したがって、上記の抗がん剤との併用効果も期待できます。
奏功率
治療評価はRECIST(最長径の和の変化)分類によって評価しています。
Complete Response (CR):消失
Partial Response (PR):30%以上の減少
Stable Disease(SD):PRの基準もPDの基準もみたさない
Progressive Disease (PD):20%以上の増加

た行

単球
単球とは、自然免疫の中心的な役割を果たす食細胞の一つです。
この単球を、サイトカインなどを用いて培養すると樹状細胞を作ることができます。
食細胞の食とは、がんなどの異物を食べるということから、このような名前をつけられています。
大腸がん
大腸がんの特徴
大腸がんは早期で発見できれば、内視鏡下のポリペクトミー(ループ状のワイヤーを病巣にひっかけて取り除く)や内視鏡下の切除術により、体へそれほど負担をかけることなく、ほぼ100%近くの確率で完治が見込めます。しかし発見が遅れると開腹手術でも周囲の内臓に転移しているなどで切除しきれいないことになり、完治が難しくなってきます。この場合は、手術後に、放射線療法や抗がん剤などの全身治療も検討されます。

大腸がんの特徴のひとつとして、肝臓に転移しやすいことがあげられます。これは門脈という太い血管が、大腸から肝臓へと通じているからです。門脈は胃、小腸、大腸、脾臓、膵臓からの血流を集めて肝臓へと運ぶ静脈で、栄養素とともにアンモニアなどの老廃物や細菌を吸収した血液を、肝臓にて無毒化するためのルートとして重要な血管です。大腸にがんができると、一部の細胞がここを通って肝臓に運ばれやすいのです。

大腸がんの自覚症状は、おもに「大便」に現れます。出血、便が細くなる、急に便秘がちになるなどですが、こちらはポリープなどの良性の疾患でも起こります。つまり、がんに特徴的な症状ではなく、自覚症状だけではがんかそうでないかは判別がつかない場合もあります。早期発見のためには、できるだけ無症状のうちに、がん検診をきちんと受けることが大切です。

大腸がんの治療
早期であれば、肛門から挿入した大腸内視鏡で切除する方法や、腹腔鏡などによる手術で治すことができます。進行して肝臓や肺へ転移した場合でも、手術により治癒が期待できるケースもあります。一方で、発見が遅れると、肝臓、肺、リンパ節などに手術が困難な転移が起こります。そのようなときには、放射線療法や抗がん剤治療が治療選択肢となります。

プレシジョンクリニックが提供する『樹状細胞ワクチン療法』は、副作用が少なく、手術や、放射線療法、抗がん剤治療と併用することで、大腸がんに対する治療効果の向上が期待されます。
転移
転移とは、血液やリンパ液の流れにのって、いろいろな臓器に飛び火し(転移)、そこでまた増殖を始めることをいいます。
がん細胞は、ある程度の大きさになると、成長のために自ら血管をつくりだし、そこで栄養を得て、加速度的に成長し、転移を起こしていきます。
血液やリンパ管は全身いたるところにありますので、自ら作り出した血管やリンパ管を介して全身にばら撒かれ、そこでまた増殖を始めます。
特異的免疫
特異的免疫とは、誕生時には備わっておらず、後天的に獲得される免疫です。
免疫細胞は抗原に出会うたび、それぞれの抗原ごとに攻撃方法を習得・記憶するため、過去に遭遇した抗原に対して、それぞれに応じた攻撃ができるようになります。
記憶された免疫(特異的免疫)は、同じ抗原に遭遇した場合、非特異的免疫に比べて素早く反応し、また効力も高いのが特徴です。
プレシジョンクリニックの樹状細胞ワクチン療法は、この特異的免疫の働きを利用した免疫療法です。

な行

ナイーブT細胞
ナイーブT細胞とは、抗原にさらされたことのないT細胞のことをいいます。 樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞からの抗原刺激を受けることにより、活性化され、(がん)抗原ん特異的なキラーT細胞、ヘルパーT細胞に分化し、その細胞としての働きをするようになります。
内視鏡
内視鏡とは、体の外からは診断のつかない早期のがんや小さな病変を、患者さまの体の内側から観察または治療するための医療機器です。
上部消化管内視鏡(胃カメラ)や大腸内視鏡(大腸カメラ)を使った検査は良く知られていますが、治療としては腹腔鏡、胸腔鏡を用いた手術にも盛んに応用されています。
ナチュラルキラー(NK)細胞
免疫反応において働いている細胞は主に白血球です。白血球の中にはさまざまな細胞があり、免疫反応は次のようなメカニズムで起こります。
「ばい菌が入ってきた」、「ウィルスがはいってきた」、あるいは「がんができた」という時に最前線で活躍するのが顆粒球(ほとんどが好中球)、樹状細胞、マクロファージ、そしてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)です。これらの細胞は、ばい菌やウィルス、がん細胞を、敵(非自己)として認識し、無差別に攻撃します。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、リンパ球の一種で、体の中で、ウイルスに感染した細胞や、一部のがん細胞を認識して傷害する細胞のことです。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きは、樹状細胞の ように、がんだけを狙い撃ちするといった、抗原(ウイルスやがんなどの異物)に特異的な免疫反応を示すものではなく、非特異的に、以前に出会ったことがないような細胞を障害するといった初期の免疫反応(自然免疫)を司っています。
乳がん
乳がんは、子宮頸がんと並び、女性がかかり易い代表的ながんです。女性部位別がん罹患率は1994年以後、トップです。日本では40代半ばから50代が罹患のピークで、ほかの多くのがんと同じように原因ははっきりとしないものの、女性ホルモンが何らかの形でかかわっていると言われています。

早期に発見できれば、乳がんは決して怖いがんではありません。乳がんのほとんどは、乳腺(母乳の分泌の場)と乳管(乳汁の通り道)にできますが、その中に留まっているうちなら、手術で病巣を切除すれば10年生存率の平均は約80%にものぼります。近年、乳がんの手術はできるだけ切除範囲を小さくし(縮小手術)、乳房を温存するやり方(乳房温存手術)が主流になっています。早期のうちなら、乳房の変形も少なく済み、がんが大きい(一般に直径3㎝以上)場合は、術前化学療法といって手術前に抗がん剤などの薬物でがんを小さくしてから切除されます。

乳がんの治療
乳がんに対する薬物療法には、大きく分けてホルモン療法剤、分子標的薬(トラスツズマブなど)、抗がん剤の3種類があります。がん細胞の表面にはレセプターといって、特定の物質と結合し反応を起こす「手」のようなものがあり、それがホルモンに対応していればホルモン療法剤が、HER2という遺伝子タンパク質が過剰に発現していればトラスツズマブ(ハーセプチン、カドサイラ、エンハーツ)などが効きやすくなります。

トラスツズマブは、タキサンとの併用で再発を防ぐ効果が報告されています。分子標的薬の特性として、がんを殺し、がんが縮小するというのではなく、大きくならない状況の維持が主目標となります。また、乳がんの特徴として、エストロゲン、プロゲステロン受容体を持っているがん細胞に対しては、これら重要体の効き目をブロックする目的から、エストロゲン生成阻害剤や抗エストロゲンLH-RHアゴニストを使用することにより、治療効果を上げることが可能です。

乳がんでは進行に伴い骨転移も認められます。骨の破壊が進み、痛みが強くなるケースもでてきます。骨粗鬆症の薬であるビスフォスファン酸の使用により、骨転移の状況改善が望まれます。

当クリニックグループでは、乳がんなど、難治に至ったがんの症例に対してWT1ペプチドなどのさまざまながん抗原を使用した免疫療法『樹状細胞ワクチン療法』を行っています。
認定再生医療等委員会
プレシジョンクリニックグループは「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、認定再生医療等委員会を設置し、2015年に厚生局の認可を受けている、認定再生医療等委員会設置医療法人になります。
ネオアンチゲン
ネオアンチゲンとは、がん細胞で起こる遺伝子変異により、新たに出現した抗原(がんの目印)のことです。細胞はがん化する過程で遺伝子が変異しますが、変異したアミノ酸から作られる変異タンパク質が細胞の中でペプチドに分解され、抗原として細胞の表面に現れます。こうしたアミノ酸変異部位を含む抗原(ペプチド)は正常な細胞には存在せず、がん細胞のみに新たに出現することからネオアンチゲンと呼ばれます。正常細胞にも存在するタンパク質の中にも、がんに関連するタンパク質(腫瘍関連抗原)はありますが遺伝子変異はしていないため、自己として免疫に認識されており、免疫寛容が成立しているため強い免疫反応は起きません。一方、遺伝子変異によってできた抗原、ネオアンチゲンは本来体の中に存在しない「非自己」であるため高い免疫反応が起きると考えられます。また遺伝子の変異は患者さまごとに異なるため、ネオアンチゲンも患者さま一人ひとりによって異なります。

は行

肺がん
肺がんの特徴
肺がんは、日本人におけるがんによる死亡数で常に上位(1~3位)となっています。罹患率、死亡率ともに男性が女性を3~4倍上回っており、また性別に関係なく40代後半から増加し始めます。
肺がんは組織型の違いにより、大きく「小細胞がん」と「非小細胞がん」に分けられます。「非小細胞がん」はさらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられます。
肺がんのリスク要因として筆頭にあげられる「喫煙」は、主に小細胞がんや扁平上皮がんのリスクを高めることが知られています。一方、女性の非喫煙者には腺がんの発症が多いことも分かってきていますが、その原因はまだ明らかになっていません。

肺がんの治療
肺がんの治療方針は、がんの型や場所、広がり具合、進行度(転移の有無など)などを総合して検討されます。小細胞がんは基本的に抗がん剤が治療の中心となり、状況に応じて放射線治療も検討されます。手術はごく早期の場合のみで肺がんが見つかった約5人に1人が適応となります。非小細胞がんは早期のうちは手術が第一選択となり、放射線や術後化学療法(抗がん剤)も状況に応じて検討されますが、転移が認められる場合は、抗がん剤が第一選択になったり、手術と抗がん剤の組み合わせが検討されたりします。

期待されている治療法のひとつに、免疫チェックポイント阻害剤があります。免疫チェックポイント阻害剤は、これまでの抗がん剤とは異なる免疫に関連した副作用(irAE)があります。とはいえ、これまでの抗がん剤の副作用とは異なり、だいぶ患者さまの負担は軽減されるようになりました。免疫療法が、広くがんに効果がるということが一般的のドクターにも認識されるきっかけとなった薬剤といえます。
蓮見ワクチン療法(ハスミワクチン)
蓮見喜一郎博士ががんのウィルス説に着想して開発した「ハスミワクチン(蓮見ワクチン)」という ワクチンを使う免疫療法です。

免疫細胞ががん細胞を認識する能力と、乱れたがん免疫システムを回復して、がん治療の効き目を向上させようという目的のもと、治療を実施します。

具体的にはがん細胞からがん抗原を分離して、それにアジュバンドという免疫性を強化させる薬、いわゆるがん細胞の抗原性を強める薬を付加して体内にもどし、これによってがん免疫を増強させようというものです。
がんワクチンにはいくつか種類がありますが、 主に「膜抗原型」「ペプチド型」「遺伝子型」の3つに分かれます。ハスミワクチンは「膜抗原型」で、がん細胞から採取した膜を抗原にする方法です。
非特異的免疫
非特異的免疫(自然免疫)とは、生来備わった免疫であり、病原微生物などの異物の進入を防ぐ第一線の防御機構として働く免疫です。
基本的にどんな微生物に対しても一様に防御効果を示し、特定の微生物に対してのみ防御し、ほかの微生物は無視するというようなことはしません。
標準作業手順書(SOP)
標準作業手順書(SOP: Standard Operating Procedure)とは、再生医療のような細胞を用いたちりょうにおいて、その細胞の品質保持のため、ひとつひとつの作業工程や施設管理方法などを順序だてて文書に落とし込んだものです。
標準治療
がんと診断されたら、最初に検討するべきがん治療です:
がんと診断されたら、まず手術や放射線療法、抗がん剤治療が勧められます。これらは「標準治療」と呼ばれ、科学的な根拠、すなわち統計結果に基づいています。

具体的には大規模な臨床試験によって得られた証拠に基づいて行われる治療が標準治療となりますが、この標準治療も日進月歩で、日々のように変わっています。

これらのがん治療は、手術などの「外科治療」、エックス線などの「放射線療法」、抗がん剤などの「化学療法」の3つに分けられるため、「三大がん治療」とも呼ばれています。

これらの治療は、1つだけで実施されることは少なく、がんの進行状況に応じて、組み合わせることが多くなっています。例えば、手術でがん組織を取り除いてから抗がん剤治療と放射線療法を行い、転移したがんまで退治するケースや、あらかじめ化学療法でがんをある程度小さくしてから(術前化学療法)、手術でがんを取り除く場合もあります。また、手術ができない患者さまには、化学療法と放射線療法を合わせてがんの進行を抑える場合もあります(放射線化学療法)。

進化する手術の技術:
これまでの外科治療では、胸や腹部を大きく切り開いて行う開胸や開腹手術が主に行われていました。しかし、手術後の治癒までに時間がかかるなど、比較的長期間の入院が必要でした。ところが、技術の進歩によって、胸腔鏡や腹腔鏡など、いわゆる「内視鏡」を使うことにより、がん病巣の状態によっては、体に小さい穴を開けるだけでがんを取り除くことも可能になりました。
その結果、患者さまへの麻酔が少なくて済み、手術後の回復も早くなり、術後の入院期間が短くなるなど、患者さまの負担が少なくなりました。加えて、ロボット手術も行われるようになってきています。
ダビンチシステムは、腹腔鏡手術を支援する、内視鏡下手術支援ロボットですが、ロボット手術といっても、機械が自動的に手術を行うわけではありません。患者さまのお腹にあけた小さな穴に手術器具を取り付けたロボットアームと内視鏡を挿入し、内視鏡画像を見ながら操作して手術をするといったものです。いずれも、患者さまへの麻酔が少なくて済み、手術後の回復も早くなり、術後の入院期間が短くなるなど、患者さまの負担は少なくなりました。また抗がん剤治療(いわゆる「化学療法」)も、1つの薬剤のみ使用するのではなく、いくつか薬剤を組み合わせることによって、治療効果が改善されたり、副作用の軽減も見られるようになりました。

効果的な使い分けが行われている「放射線療法」:
放射線療法に使用される放射線には、主に電子線、エックス線、ガンマ線、粒子線があり、それぞれ性質が異なっています。

電子線は、一定の深さまでしか影響を及ぼさない性質があるので、皮膚など体の表面部分の治療に利用されます。エックス線は、体を通過する性質があるため、線量を調整することで、体の内部にある脳・肺・骨などには大きいエネルギーで、体の表面にある首・のど・乳房などには小さいエネルギーで治療を行うことができます。そして、ガンマ線は電子線やエックス線に比べてエネルギーが小さいため、脳腫瘍など、周囲の細胞に影響してはいけない治療に使用されています。最近ではより副作用が少ない「陽子線」や「重粒子線」などを用いた放射線治療の研究も進められています。

いろいろながん治療の研究開発が進んでいます:
三大がん治療は、どれかが優れていて、そのほかが優れていないということはありません。それぞれの特徴を活かして、患者さまとがんの状態を見極めて、最適な方法が選択されます。最近は三大がん治療を基本にしながら、新しい治療法も導入されています。免疫を活性化する免疫チェックポイント阻害剤や免疫細胞療法、電磁波を利用した温熱療法であるハイパーサーミアなど、多くの治療が実用化されています。また「がんを取り除く治療」だけでなく、がんに伴うや精神的苦痛(スピリチュアルペイン)も含めた苦痛を取り除く緩和ケアの研究も進んでいます。
フローサイトメトリー
細胞の性質を測定すること。細胞療法には必須の検査です。
フローサイトメーターという機器を使用して、細胞1個1個の大きさや形状、内部構造の違い、細胞の同定や細胞群を構成する種々の細胞の存在比を短時間で解析します。
プレシジョンクリニックの樹状細胞ワクチン療法においても、患者さまに投与する免疫細胞に対して、フローサイトメトリーにより品質を確認しています。
分子標的薬
分子標的薬は、がん細胞の増殖に関与する増殖因子や、増殖因子の受容体、細胞内シグナル伝達物質など、固有の標的分子に対して特異的に作用する抗がん剤です。そのため、正常細胞への影響が小さく副作用の軽減が期待される薬剤です。分子標的薬は100種類以上存在し、患者さま特有の標的分子を明らかにすることによって、患者個別に合致した分子標的薬を用いた治療が可能になってきました。これをゲノム医療(プレシジョンメディスン)と言われて近年注目されています。
分子標的薬
分子標的薬は、1980年代から1990年代にがんの分子生物学が進歩したことがきっかけで誕生しました。がん細胞の増殖や転移に関しては、がんだけに見られる、あるいはがんで多く発現している異常なタンパク質や酵素が重要な役割を果たしていることが分かってきました。

こうしたがん細胞に特異的あるいは過剰に発現し、がんの成長に関与している分子を見つけ、標的として攻撃する、これが分子標的薬です。

分子標的薬が標的とする「がんに特異的な分子」によって、主に「シグナル伝達経路阻害剤」、「血管新生阻害薬」等のグループに分けられます。

また、分子標的薬は薬そのものの物理的性質によっても分類することもでき、「低分子化合物」と、「抗体製剤」に分けられます。低分子グループの薬は分子量が小さいので細胞の中まで入っていくことができます。多くの分子標的薬がこれに当たります。

一方、抗体製剤のグループは、遺伝子工学を利用して作られた人工の抗体です。人工の抗体が、がん細胞にだけ存在する細胞のレセプター(受容体)や情報伝達物質に取り付いて、その働きを阻害したりして効果を発揮します。
プレシジョンメディスン
プレシジョンメディスンという言葉は2015年、オバマ前アメリカ大統領が一般教書演説で推進を約束したことで世界的にも知られるようになった言葉です。
「精密医療」と訳され、患者さま一人ひとりに合わせた治療全般のことを指しますが、主にがん患者さまの治療に用いられています。



【例】胃がんと診断された患者さまがいた場合
胃がんの患者さまのがん組織を採取して、遺伝子情報を解析すると、がんの原因となった遺伝子変異が見つかる場合があります。その情報を元に最も効果的な治療を行うのがプレシジョンメディスンです。

胃がん患者さまの集団の統計から有効だと思われる抗がん剤を、その患者さま本人にも効くかどうか順々に試していく従来のやり方に比べれば、患者さまのがんの変異部分に効果を示すことが明らかな薬剤を使うため、その精度は飛躍的に高まると言えます。

しかし、現在においてはがん細胞を攻撃するだけでなく、正常な組織に対しても作用する殺細胞性抗がん剤が推奨されています。

「殺細胞性抗がん剤」とは、私たちが、プレシジョンメディスンで用いる「分子標的薬」とは異なります。従来より用いられている、いわゆる抗がん剤と呼ばれてきた多くの薬剤は、がんの無限増殖に伴うDNAの合成や細胞分裂を阻害することによりがん細胞を死滅させる作用をもつため、「殺細胞性抗がん剤」と言われます。これらは正常細胞においても、DNAの合成や細胞分裂の盛んな血液の細胞や、腸管、毛髪細胞などに影響を及ぼし、ダメージを与えてしまいます。一方、「分子標的薬」は、がん細胞や腫瘍環境で異常亢進を来たしている分子、すなわちがんの特性を規定する分子を標的として、その機能を制御する作用をもつ薬剤です。 標的分子ががん特有の分子と明確であるため、正常組織のダメージは少なく、より治療効果の予測が可能となります。ダメージという点でもう一つ重要なことは、正常な免疫細胞に傷害を与えないという点においてもがん治療に優位に働くと言えます。



事前に遺伝子解析を行うプレシジョンメディスンでは薬剤の命中率が高まるだけでなく、効果が見られない薬による余計な副作用が避けられること、免疫にダメージを与えにくいというメリットがあります。

遺伝子解析の技術の発達、特定のがん細胞に有効な分子標的薬の登場でがん治療は新たなステージを迎えたと言えるでしょう。
ヘルパーT細胞
細胞表面にCD4という分子を持つT細胞の一種で、B細胞の分化と抗体の産生を促し、キラーT細胞を活性化させる働きをもつ。
このヘルパーT細胞が活性化されないと、キラーT細胞も活性化されないため、腫瘍免疫において重要な働きを担っていることが明らかになっている。
ペプチド
ペプチドとは、アミノ酸が数個から数十個程度結合したものをいいます。それ以上にアミノ酸が結合したものは、タンパク質と呼ばれます。樹状細胞に取り込まれたがん細胞のタンパク質は、アミノ酸が10個程度のペプチドにまで消化されます。消化されたペプチドは細胞内でHLAと結合し、樹状細胞の細胞膜表面に運ばれ、T細胞に提示されることになります。
ペプチド
アミノ酸が50個程結合したものをいいます。
それ以上結合したものがタンパク質と呼ばれます。
樹状細胞に貪食(取り込まれた)されたがんのタンパク質は、アミノ酸が10個程度(ペプチド)にまで消化されます。
消化されたペプチドは細胞内でHLAと結合し、樹状細胞の細胞膜表面に運ばれ、T細胞に提示されることになります。

樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞の細胞膜上にがんのペプチドとHLAが結合した分子が提示されている状態で患者さまに投与されます。
樹状細胞によって提示されたがんのペプチドを認識したT細胞のみが、増殖し活性化します。
このT細胞によってがん細胞への攻撃が行われます。
ペプチドなどを用いた人工抗原樹状細胞ワクチン療法は、がん特有の抗原(ペプチドを人工的に合成したもの)を樹状細胞に与えてから、ワクチンを作製し、これを体内に投与する方法です。
なお、人工抗原樹状細胞ワクチン療法は、患者さまのがんの抗原と人工抗原とが合致する必要があるため、患者さまのHLAの型によっては実施できない場合があります。
ペプチドワクチン療法
正常細胞と比較して、がん細胞に特に多く存在するタンパク質由来のペプチドを「がん抗原ペプチド」と表現しています。このがん抗原ペプチドを利用したワクチン療法が、「ペプチドワクチン療法」です。

ペプチドワクチン療法は、がんペプチド(8~10アミノ酸が連結した小さいペプチド)にアジュバントと呼ばれる物質を混ぜて注射することによって、がん患者さま自身のもっている免疫の力を高めてがんを治療することを目的として開発されたものです。がん細胞内では、がん関連遺伝子から作られるがん抗原(タンパク質)が絶えず合成されたり、分解されたりしています。この分解されてできた断片は、がん細胞に由来する特有のペプチド(がん抗原ペプチド)ということになります。

これと同様に、がん細胞やがんタンパク質を樹状細胞が取り込み、細胞内で分解した場合も、樹状細胞の膜表面にがん抗原ペプチドが提示されます。その情報を受け取った細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)ががん細胞を排除するようになります。
放射線治療(放射線療法)
放射線治療は、放射線が持つ電離作用を利用して、がんを制御する治療法です。
放射線という言葉を聞くと恐ろしいものと考えられがちですが、最新の放射線治療装置では、がんの部位以外にはほとんど放射線があたらない、ピンポイントでがん細胞を狙い撃つタイプのものも数多く開発されています。

■ 放射線治療の原理
放射線ががん細胞にあたると、DNAに傷をつけます。わずかな傷であればDNAは修復されますが、傷が多く、修復できないほどの損傷が加わるとがん細胞は死に至ります。損傷する程度は放射線をあてる量に完全に比例するわけではありませんが、多くあてればがん細胞の死ぬ確率が高くなります。

放射線によって致命的なダメージを受けると、細胞は数日後に死に至ります。1~2日程度では細胞が変化することは少なく、1~2度の分裂を行うこともありますが、やがて分裂する能力を失い、正常であれば無限に続けるはずの分裂を停止します。すると、生体が死んだことをリンパ球が認識して、それを処理するマクロファージなどの細胞が働き始め、処理が終わったところで腫瘍が縮んでいきます。腫瘍の塊は2~3か月かかって徐々に縮み、CT(断層撮影)で見るとその影が消えていることが分かります。

■ 放射線治療の現状
最新の放射線治療装置の特徴は、コンピュータ制御によってミクロの単位でがんを破壊する「がんのモニタリング装置」が装備されている点です。IMRTやSRTといわれる放射線治療では、非常に小さながんでも、極細のペンシルビームによる照射とリアルタイムでの位置認識システムによって患者さまの動きを敏感に捉えながら、がんを治療することが可能となっています。

また、従来のX線、γ線、電子線を使った放射線治療のみでは制御が困難な悪性黒色腫、骨肉腫、肝がんなどの治療に有効であると期待されているのが、サ イクロトロンやシンクロトロンという粒子加速器を用いる高エネルギー炭素線または陽子線による粒子線治療です。こうした放射線治療は免疫力を下げにくい特徴があるため、プレシジョンクリニックグループが提供する樹状細胞ワクチン療法との相性も良いことが分かってきています。

ま行

丸山ワクチン
丸山ワクチンは、1944年に結核の治療薬として誕生しました。 このワクチンの名前は、発明者である故丸山博士(日本医科大学名誉教授)に由来します。 主成分は、結核菌から抽出したリポアラビノマンナンという多糖の一種です。

丸山ワクチンは、BRM療法という免疫療法の一種として用られます。 がん治療において、BRM療法は、体内の免疫を全体的に活性化して、 抗がん作用を期待する非特異的免疫療法に分類されます。 BRM療法には、丸山ワクチンの他、細菌から調製したOK-432(商品名ピシバニール)、 シイタケから抽出した多糖類であるレンチナン、同じくキノコであるサルノコシカケから抽出した クレスチンなどが使用されています。

丸山ワクチンは、抗がん剤としての承認を受けていません。 有効性の確認をするために、費用を患者様に負担していただく治験として、 丸山ワクチンは、引き続き行われています。 しかし、放射線療法によって白血球が減少した場合の治療薬として 1991年に承認された「アンサー20(有効成分:Z-100)」は、丸山ワクチンと同成分です。 体内において、有効成分であるZ-100が、血液細胞の幹細胞に作用する成分の産生を促進します。 その結果、放射線により障害を受けた血液細胞の分裂が活発化されて、 白血球の減少が抑制されます。

丸山ワクチンは、体内の免疫システムを調節することによって、間接的にがん細胞の浸潤、転移などを阻害します。すなわち、Tリンパ球やマクロファージ、NK細胞(リンパ球の一種で直接がん細胞を攻撃する細胞)など、主に自然免疫にかかわる免疫細胞が活性化され、様々なサイトカイン(生理活性物質、例えばインターフェロンやインターロイキン)産生が促進されることによって、がん細胞における生存環境が悪化し、がん細胞はその数を減らしていきます。
無血清培養
ヒトや動物由来の血清を使用しない培養方法。
ウイルスなど既知あるいは未知の病原体の二次感染を防止できます。
ヒトの細胞の培養において無血清での細胞培養は技術的なハードルが高いのですが、細胞療法の場合、生きている細胞を利用するため殺菌や消毒ができません。
したがって感染症の可能性を避けるために、安全第一の観点から無血清培養が必要にあります。
免疫
人間には生まれつき免疫とよばれる働きが備わっており、体の中に侵入した細菌やウイルスを、体の中から取り除く働きがあります。
予防注射もこの原理を応用したもので、例えば「はしか」の予防注射を行って免疫をつけると「はしか」のウイルスは体の中に入ってこられなくなります(排除されます)。
体の免疫は、がんができたり転移したりすることとも密接な関係があります。
体の免疫力が低下した状態、たとえば後天性の免疫不全症候群(エイズ)や臓器移植の時に投与される薬によって生じる、免疫の抑制された状態では、がんができやすくなることが知られています。
がんは通常、手術や抗がん剤、放射線で取り除こうとするのが一般的ですが、近年はこれとは別に、人間の体に生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりすることでがんの発症や進展を抑えようとすることが試みられています。
これががん免疫療法と呼ばれているものです。
免疫細胞の種類
白血球の種類
白血球は、からだの中に侵入してきたウイルスや細菌などから、常にからだを守り続ける免疫細胞です。からだの中では多種多彩な免疫細胞(白血球の仲間達)が、緻密なチームプレーで異物と戦っています。

【樹状細胞(じゅじょうさいぼう)】
外気に触れる鼻腔、肺、胃、腸管、皮膚などに主に存在している細胞です。名前のとおり枝のような突起(樹状突起)を周囲に伸ばしています。樹状細胞は、異物を自分の中に取り込み、その異物の特徴(抗原)を他の免疫細胞に伝える働きを持ちます。実際には、抗原を取り込んだ樹状細胞は、リンパ節などのリンパ器官へ移動し、T細胞やB細胞などに抗原情報を伝えることで、それら免疫細胞を活性化させます。活性化されたT細胞やB細胞が、異物を攻撃します。

【マクロファージ】
マクロファージはアメーバ状の細胞です。からだの中に侵入してきた異物を発見すると、自分の中にそれを取り込んで消化します。また一部のマクロファージは、異物の特徴 (抗原)を細胞表面に出すことで、外敵の存在を他の免疫細胞に伝えます。 そのほか、他の免疫細胞と共同で、TNF-α、インターロイキン、インターフェロンなど、主に免疫細胞を活性化させるサイトカインという物質産生にも関与します。

【リンパ球(T・B・NK細胞)】
★ T細胞

ウイルスなどに感染した細胞を見つけて排除します。T細胞は、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞の3種類があり、それぞれ司令塔、殺し屋、クローザーの役割があります。
① キラーT細胞は樹状細胞から抗原情報を受け取り、ウィルスが感染した細胞やがん細胞にとりつき、排除する、といういわゆる「殺し屋」の働きを持っています。

②  ヘルパーT細胞は、樹状細胞やマクロファージから異物の情報(抗原)を受け取り、サイトカインなどの免疫活性化物質などを産生します。

③ 制御性T細胞は、キラーT細胞が正常細胞へ攻撃をしないよう、キラーT細胞の働きを抑制したり、免疫反応を終了に導く、野球でいう「クローザー」の役割を担っています。

④ αβT細胞(アルファベータT細胞)は、αβT細胞療法に利用される、α鎖とβ鎖からなるT細胞受容体を有するT細胞の総称です。抗CD3抗体とIL-2を使用して選択的に増殖させることが可能です。αβT細胞療法は、一般に活性化自己リンパ球療法(LAK療法)とよばれている免疫細胞療法の一種です。

⑤ γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、α鎖、β鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質から構成されるT細胞受容体を持つT細胞の総称です。γδT細胞は、αβT細胞と比べると少数ですが、この末梢血中に存在するγδT細胞には、がん細胞を認識して攻撃する能力があることが明らかになっています。

⑥ ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は、T細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)の両方の特徴を持つT細胞の亜種です。NKT細胞は末梢血中T細胞のわずか0.1%程度しか存在しません。活性化されたNKT細胞は、サイトカイン(IFN-γなど)を産生したり、Fasリガンドやパーフォリン・グランザイムによるがん細胞への障害活性を示します。

★ B細胞
B細胞は骨髄に存在して、抗体を産生する免疫細胞です。血液の元となる細胞(造血幹細胞)から作られ、樹状細胞の指令を受けると、外敵や異物を攻撃する「抗体」を作り、異物の排除を手助けします。また、B細胞は、細胞ごとに作る抗体の種類が決まっています。あるB細胞が作り出す抗体に適合した外敵が出現した場合にのみ、そのB細胞は活性化して、抗体を産生します。

★ NK(ナチュラルキラー)細胞
いつもからだの中をパトロールしています。ウイルスに感染した細胞などを発見すると単独で攻撃をしかけます。T細胞とは異なり、他からの指示を必要とせず、一人で外敵や異物を攻撃できるため、生まれつき(natural)の殺し屋(killer)という名前が付けられています。

【顆粒球の役割】
★  好中球(こうちゅうきゅう)
強い貪食作用や殺菌能力を持ち、主に細菌やカビを攻撃します。

★ 好酸球(こうさんきゅう)< 寄生虫の感染に対する免疫を担当しています。また、アレルギー反応などが起こった時に増加します。

★ 好塩基球(こうえんききゅう)
細胞内にヒスタミンなど種々の生理活性物質を含有していて、主に炎症反応に関与します。
免疫細胞療法
がんは通常、手術・抗がん剤・放射線の、いわゆる「三大治療」で治療するのが一般的です。一方で、近年、がん細胞を攻撃する機能を持つ免疫細胞(樹状細胞やリンパ球など)を体外に取り出し、専門 の培養施設で加工・処理することによってその数を増やしてから、再び体内に戻し、がんの発症や進行を抑えるがん治療が行われています。これが免疫細胞療法と呼ばれている治療です。2015年に法整備がされ、認可を受けた医療機関で免疫細胞療法が実施できるようになりました。
免疫の仕組み
免疫は命を守っている:
風邪をひいた時など、「免疫力が低下したからだ…」などと言ったりしませんか? 免疫という言葉は、普段なにげなく使っていますし、テレビや雑誌などでも頻繁に取り上げられています。普段からよく耳にする”免疫”ですが、その言葉の意味を正しく理解して使っている人は、あまり多くありません。ここでは免疫について、わかり易く解説します。 そもそも免疫という漢字は、「やまい(疫)をまぬが(免)れる」と書きます。例えばインフルエンザワクチンを注射してインフルエンザウィルスに対する免疫をつけると、インフルエンザにかかりにくくなるように、免疫とは、細菌やウイルスなどの外敵(異物:自分以外のもの)がからだの中へ侵入してきた時など、それに立ち向かって排除し、わたしたちの命を守ってくれる仕組みなのです。

免疫細胞はチームプレーでからだを守る:
では、免疫は、一体どのようにして、からだの中に侵入してきた異物を排除するのでしょうか。 答えは”血液”にあります。血液の中には、大きく分けて酸素を運ぶ「赤血球」と、免疫を担う「白血球」という細胞が存在しています。これらのうち、白血球は1種類の細胞ではなく、さまざまな役割を持った多種類の免疫細胞で構成されています。それらが相互に連絡をとりあい、チームプレーで外敵と戦っているのです。

免疫細胞と抗体:
白血球以外にも、からだの免疫システムで重要な役割を担っている物質が”抗体”です。からだの中に異物が進入すると、わたしたちの血液中には、その異物だけに特異的に作用する『免疫グロブリン(抗体のこと)』が作られます。産生された抗体は、異物とつながり、白血球の一種であるマクロファージやリンパ球といった免疫細胞がこの抗体を目印として、異物を貪食・攻撃します。この抗体も白血球の中のB細胞から産生されます。

わたしたちの体は、異物が侵入してきても、それに対応する抗体を作り、ある種の免疫細胞によって排除することができます。その素晴らしい能力で、侵入してきた外敵や異物と絶え間なく戦っているのです。
免疫療法
免疫療法とは、人間の体に生まれつき備わっている免疫の特徴を利用したり、免疫の力を強めたりすることでがんの発症や進展を抑えようとすることを目的とした治療をいいます。

免疫療法には、特異的免疫療法と非特異的免疫療法に分けれられ、また機能的には免疫のアクセル役の免疫療法とブレーキを解除することで機能を発揮する免疫療法があります。アクセル役の免疫はキラーT細胞になります。このキラーT細胞を体内で強化する治療法が、樹状細胞ワクチン療法になります。また、世界で承認されているキラーT細胞を用いたものとして、CAR-T細胞療法というのがあります。CAR-T細胞療法は、がん細胞の目印を見分ける遺伝子としてCAR(キメラ抗原受容体遺伝子)という遺伝子をT細胞に埋め込んだ治療法で、血液のがんで保険適応になっています。一方、ブレーキを解除する免疫療法として、免疫チェックポイント阻害剤があります。免疫チェックポイント阻害薬は、体に備わっている免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。T細胞の表面には、「異物を攻撃するな」という命令を受け取るためのアンテナがあります。一方、がん細胞にもアンテナがあり、T細胞のアンテナに結合して、「異物を攻撃するな」という命令を送ります。すると、T細胞にブレーキがかかり、がん細胞は排除されなくなります。このように、T細胞にブレーキがかかる仕組みを「免疫チェックポイント」といいます。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞やがん細胞のアンテナに作用して、免疫にブレーキがかかるのを防ぎます。
免疫療法の変遷
免疫賦活剤やサイトカイン療法は、免疫システムを全体的に活性化させる目的で行われていたものの、免疫にかかわる細胞を選んで強化するまでには至りませんでした。これに対し1980年代から、免疫細胞そのものをがん治療に利用する免疫療法(免疫細胞療法)が注目されるようになってきました。

1990年代に入り免疫療法の研究がさらに発展していく中で、がんに特有の「がん抗原」を明らかにしていく動きも活発になりました。この10年でめざましく進歩した生化学・分子生物学の最先端研究によって、「がん抗原」が次々と発見されるに至ったのです。

がん抗原は、がん細胞が「自分はがんですよ」と外に示す「印」のようなものです。印がわかれば、免疫細胞はそれを手がかりに効率よくがん細胞を攻撃することができます。「がん抗原」が発見されたことで、攻撃すべき相手(がん細胞)のみを狙い打ちできるがん治療法が確立されました。免疫療法は、非特異的な免疫療法(第3世代)から、特異的な免疫療法(第4世代)へと大きな進歩を遂げました。

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○ 特異的がん免疫療法
※特異的免疫(獲得免疫)を利用したがん免疫療法です。
→ 樹状細胞ワクチン ・ ペプチドワクチンなど

○ 非特異的がん免疫療法
※非特異的免疫(自然免疫)を利用したがん免疫療法です。
→ 活性化リンパ球療法 ・ BRM療法 ・ NK細胞療法
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免疫療法のメリット
三大がん治療に加えて、近年”第4のがん治療”として注目されているのが「免疫療法」です。これまでで説明したように、免疫とは、からだの中に侵入した異物と闘うために、誰もが生まれながらに備えている能力です。この能力を最大限に高め、がん治療に役立てるものが、免疫療法です。

三大がん治療は、外部からの力(手術・放射線・抗がん剤)を借りてがんを治療するのに対し、免疫療法は、本来からだが持っている免疫力(免疫細胞)を活かして、がんと闘うため、つらい副作用で苦しむことは、ほとんどありません。これが免疫療法のメリットです。

近年、免疫療法の中には、大学や医療機関で研究されているものもあり、さまざまな臨床試験も進んでいます。米国では、デンドリオン社の樹状細胞ワクチン療法Provenge(sipuleucel-T:免疫細胞である樹状細胞を使用した免疫療法剤)が米国食品医薬品局(FDA)から認可されています。また、切除不能のがんに対して、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる免疫療法も臨床応用されています。

や行

陽子線治療
陽子線治療は、がんの部分だけ(ピンポイント)に照射してがん細胞を攻撃するので、正常組織を傷めない、粒子線治療に含まれる放射線治療の一種です。

これまでのX線治療では、病巣に向けて照射されたX線は、体の表面近くで放射線量が最も高く、体の深くにあるがん病巣に近づくにつれて、その量は減少していきます。そのために、がん細胞への効果は薄くなり、しかも周辺の正常組織を傷めるために副作用を起こすことになります。陽子線の場合、X線と比べて、ターゲットへより正確にエネルギーを運ぶことができるという優れた特徴があります。

陽子線は、エックス線よりも集中してあてることができますが、さらにピンポイントでがんの病巣にあてる技術が進めば、強い破壊力でまさに標的を狙い打ちできるようになります。

粒子線治療の大きな問題として、装置が大掛かりで、建設に莫大なコストがかかることが挙げられます。重粒子線の治療施設建設には約130億円、陽子線の場合は70~80億円がかかります。ただ、陽子線治療装置に関しては、リニアックよりも一回り大きい程度のものが米国で開発されつつあり、小型化すれば普及が見込まれるのではないかと考えられます。

ら行

ライセート
プレシジョンクリニックでいうライセートは、腫瘍(しゅよう)ライセートを略したもので、腫瘍溶解液を意味します。
腫瘍溶解液とは、がん組織(がん細胞)を人工的に溶かした液をいいます。これを樹状細胞に取り込ませることによって、そのがんに対する免疫反応を起こさせるようにします。
ラジオ波治療
ラジオ波治療は、鉛筆の芯くらいの太さのラジオ波電流を発生する針をCTや超音波の画像を見ながら腫瘍のなかに挿入し、電流を流して腫瘍を焼灼する方法です。
原理的には、電子レンジで火がないのに料理が暖まるのと同じで、ラジオ波により腫瘍内のイオンが振動運動を起こして熱が生じます。
がん細胞は熱に弱く、50~100度の熱が加わると細胞は死滅します。
針を刺すだけですので、外科的治療法に比べて患者さまの負担は少ないため、悪性腫瘍に対する新しいがん治療選択肢といえます。
ラジオ波療法は肝臓をはじめとして肺、頭頸部、気管、骨軟部などのがん治療にも応用され始めており、その有効性が報告されつつあります。
卵巣がん
卵巣がんの特徴
卵巣がんは、初期のうちに見つけにくいがんの一つです。皮膚がんのように直接みて分かるというものではなく、胃がんや大腸がんのようにカメラを入れて確認することもできません。ただし、実は月経まわりの自覚症状に気を付けていれば、早い段階で発見できる可能性が高いのです。というのも、卵巣がんの中にはチョコレートのう腫など、良性の腫瘍がホルモンなどの影響を受け、年月を経てがん化するものがあり、それに伴って月経過多や月経痛などの症状もよく見られるからです。これらがあるからといって必ずがんというわけではありませんが、継続的に検査を受けることが大切です。

卵巣がんの治療
卵巣がんは、がん細胞の性質からたくさんの種類に分けられますが、50代に多いのは上皮にできるがんで、大きく漿液性腺がん、粘液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がんに分けられます。このうちもっとも多いのは漿液性腺がんで、全体の40%を占めています。一方で、明細胞腺がんも全体の15~20%で欧米人に比べて日本人に多く、年々増加しているといわれています。漿液性腺がんには、タキソール+カルボプラチンという抗がん剤の組み合わせが比較的よく効くことが分かっていますが、明細胞腺がんの治療はまだ十分に確立されていません。

いずれにしても初期治療では手術を、あるいは手術前に抗がん剤投与を行い(術前化学療法)、病巣を小さくしてから手術をするのが標準治療となっていますが、再発治療になるとスタンダードな治療がありません。セカンドライン、サードラインの抗がん剤はありますが、ファーストラインほどの奏効率は期待できず、副作用も強いというのが現状です。

そこで、こうした標準治療だけでは立ち向かえない卵巣がんに対し、樹状細胞ワクチン療法などの免疫細胞療法が、新たな選択肢として期待されています。
粒子線治療(重粒子線治療・陽子線治療)
従来のエックス線による放射線治療を超えるものとして期待されているのが、粒子線(炭素イオン線:重粒子線 ・ 水素イオン(陽子):陽子線)による放射線治療です。
エックス線はそもそも原子核の周囲を回っている質量の小さい電子に電圧をかけて加速し、金属にぶつけることで発生させている放射線です。これに対し、粒子線は電子よりも千倍以上も重いとされる原子核や原子核を構成する粒子にエネルギーを与えて放射線にしたものです。つまり、質量の大きい粒子を元にする分、発生する放射線のパワーも大きいのです。

通常のエックス線はがん細胞のDNAに切り込みを入れてダメージを与えるのに対し、粒子線はDNAを切り刻んでしまうほどのエネルギーがあるのです。使用する粒子によって、「重粒子線治療」、「陽子線治療」などに分かれます。

粒子線にはもうひとつ、大きな特徴があります。それは腫瘍に対してピンポイントに照射できるということです。エックス線は、エネルギーを放出しながら体を通り抜けていくため、がん細胞まで効率よく届くとはいえず、がん細胞に行き着く前に他の正常な細胞に影響を及ぼしやすいのです。

これに対して粒子線は、エネルギー保ったまま体の奥深くに進み、届かせたいところまでいってからそのエネルギーを一気に放出させるという特徴があります。つまりがん細胞をめがけてピンポイントに照射し効率よく攻撃することができる上、正常な細胞には影響を及ぼしにくいということなのです。

このことから粒子線は特に、広がりの少ない限局したがんの治療に適しています。悪性黒色腫(メラノーマ)、頭蓋底腫瘍、肝がん、体幹部にできたがんなどがよい適応です。一方、食道がんや胃がんといった、おもに消化器系のがんにはあまり適していません。管腔臓器の壁が薄いため、がん組織にピンポイントに照射できたとしても周囲の組織に大きなダメージを与える可能性が高いからです。
リンパ球
リンパ球は、白血球の一種で、大別して「T細胞」「B細胞」に分けられ、NK細胞などの自然免疫反応をかいくぐってきた異物(がんなど)に対して、より直接的な免疫反応(特異的免疫反応)を起こします。
胸腺で分化成熟したリンパ球はT細胞と呼ばれ、骨髄の中で分化成熟するのがB細胞です。
リンパ節
全身をめぐるリンパ管のところどころに、まるで関所のように陣取っているのがリンパ節です。
樹状細胞はリンパ管を通ってリンパ節に達し、そこで体の中の免疫を強力に活性化させます。
レントゲン
レントゲンとは、X線を用いて体内の様子を調べる画像検査です。

わ行

ワクチン
ワクチンとは、生体が本来持っている異物に対して反応する体の仕組みを利用た薬剤のことです。
感染症をはじめとしたさまざまな異物(抗原)に対して、あらかじめ「免疫力」あるいは「免疫記憶」を作らせておく薬剤のことをいいます。
ワクチン療法
ワクチン療法の基本的な考え方は、特定の病原体が体内に侵入する前にその病原体に対する(=特異的な)免疫力を高めておこう、というものです。

私たちの体内では絶えず「自己」でないもの(抗原)を排除する仕組みが働いています。なかでも免疫細胞の一種であるリンパ球は、病原体を1種類ずつ、特異的に認識して排除した上、その相手を記憶して再び同じ病原体に出会ったときにすぐに認識・排除に移れるよう準備します(抗原抗体反応)。これをうまく利用したのがワクチン療法で、毒性を弱めたり死滅させた病原体を接種してリンパ球にあらかじめ記憶させ襲来本番に備えます。

「がんを治すワクチン(がんワクチン)」という発想の始まりは、1991年にヒトのがんではじめて「正常組織でほとんど発現が見られず、がんでのみ発現が認められる遺伝子」が確認されたことによります。この遺伝子をもとに生み出される物質を「がん抗原」として標的にすれば、抗がん剤や放射線治療と違って正常組織を傷害することなく、がん細胞のみを攻撃することが可能だろう、という考え方が出て来たのです。もちろん、副作用が起こりにくことが予想されます。

そこで本来のワクチン療法の意味からは少し逸脱しますが、抗原抗体反応のような特異的な免疫応答を人為的に作り出すという点で「ワクチン」の言葉が使われるようになりました。

がんを治すワクチン療法、すなわちがんワクチン療法には「樹状細胞ワクチン療法」と「ペプチドワクチン療法」の2種類があります。

A-Z行

BNCT
BRM(Biological Response Modifiers)療法
BRMとはBiological Response Modifiersの頭文字をとったものです。
直訳すると生体応答調節剤となります。

BRMは免疫系をはじめとして、体全体の働きを調節することにより、治療効果を得ようとする治療です。
つまり、がんを治そうとする患者さま自身のもつ免疫力を手助けし、強めるものです。
BRMは単独で行われるよりも、むしろ免疫が低下してしまう外科療法(手術)や放射線、化学療法(抗がん剤)などと併用することで、その治療効果を期待します。

<プレシジョンクリニックにおけるBRMの役割>

プレシジョンクリニックでは、樹状細胞ワクチン療法の効果をさらに高めるためにBRMを使用しております。
BRMは、主にマクロファージやT細胞、NK細胞などの免疫系細胞の機能を増強し、からだ全体の免疫機能を回復すると考えられています。したがってBRM は単独で行われるよりも、外科療法(手術)や放射線、化学療法(抗がん剤)などと併用することによって、患者さまの防御能力が低下するのを予防したり、より高めることを目的に使用さます。一部のがんで有効性が認められています。
B細胞
B細胞は、抗体を産生し、それによって直接病原体等を失活させたり、病原体等を攻撃する目印としてくっつき、結果として失活させる細胞です。
その働きは液性免疫とも呼ばれています。
CPC(セルプロセッシングセンター)
CPCはCell Processing Centerの略で、免疫細胞療法や再生医療、あるいは遺伝子治療など、細胞を利用した医療または研究を行なうための極めて高度な施設を指します。
プレシジョンクリニックでは、CPC(細胞加工施設)を安定的に運営するために、GMPという医薬品を製造するための厳格なルールに準拠しています。
EBM
EBM(エビデンス・ベイスド・メディスンEvidence Based Medicine)の略で、科学的な根拠に基づいた治療のことです。具体的には大規模な臨床試験によって得られた証拠に基づいて行われる治療がEBMとなります。
GMP基準
GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、品質を定められた医薬品を製造するための要件をまとめたものです。薬機法に基づいて厳格な基準が設けられています。
細胞を用いた医療行為は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づいて行われるため、基本的にGMP基準を求められることはありませんが、GMPを準拠することによって、安全で質の高い免疫細胞療法が提供できるようになります。プレシジョンクリニックでは、東京大学医科学研究所における公的臍帯血バンクで積み上げられた運営ノウハウ等を参考に、GMPに準拠したハイレベルな施設体制を整えています。
HLA(エイチエルエー)
白血球にも血液型のようなさまざまなタイプがあります。これは細胞膜上のHLAとよばれる分子によります。HLA分子は6種類に大別され、さらにそれぞれが多くの種類に分かれるため、非常にたくさんの種類になります。
HLAは、細菌、ウイルス、がんなどの異物由来の物質(ペプチド)に選択的に結合し、T細胞へ抗原提示(異物を攻撃するように指示する)します。人工抗原樹状細胞ワクチン療法を行う場合は、HLAの型を調べる必要があります。
IMRT(強度変調放射線治療)
SRT(Stereotactic Radiation therapy;定位照射:ガンマナイフとサイバーナイフ)が小さい病巣を得意とするならば、IMRT(Intensity-Modulated Radiation Therapy;強度変調放射線治療)は「複雑な形をした病巣」を得意とします。

最大の特徴は、多方向から照射される放射線の量を出口ごとに調節し、放射線を多く当てたい部分と少量でよい部分、避けたい部分などに細かく対応できることです。これは、CT画像を撮影してターゲットの正確な位置を割り出し、コンピューターの計算によってエックス線の照射口が移動し、線量も調節しながら照射を行える機器です。これによって、変形した病巣に対しても正確に、かつ周囲へのダメージを極力少なくした放射線治療が可能になります。

治療時間は1回20分程度で入院はあっても1泊程度、あるいは不要の医療機関もあります。病巣の正確な位置を割り出すため、ち密な画像撮影や検証などを行うことから、通常の放射線治療よりも治療開始までに時間がかかります。考えられる副作用は、他の放射線治療とほとんど同じになります。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
免疫反応において働いている細胞は主に白血球です。白血球の中にはさまざまな細胞があり、免疫反応は次のようなメカニズムで起こります。
「ばい菌が入ってきた」、「ウィルスがはいってきた」、あるいは「がんができた」という時に最前線で活躍するのが顆粒球(ほとんどが好中球)、樹状細胞、マクロファージ、そしてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)です。これらの細胞は、ばい菌やウィルス、がん細胞を、敵(非自己)として認識し、無差別に攻撃します。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、リンパ球の一種で、体の中で、ウイルスに感染した細胞や、一部のがん細胞を認識して傷害する細胞のことです。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きは、樹状細胞の ように、がんだけを狙い撃ちするといった、抗原(ウイルスやがんなどの異物)に特異的な免疫反応を示すものではなく、非特異的に、以前に出会ったことがないような細胞を障害するといった初期の免疫反応(自然免疫)を司っています。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)療法
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働き:
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は免疫細胞の一つです。腫瘍細胞、ウイルス感染細胞などに対して強い殺傷能力(細胞障害活性)を示し、がん抗原(がんの目印)の情報がなくても直接目的の腫瘍へ単独で攻撃することができます。もともとNK細胞は体内に比較的多く存在し、がん免疫の中でも重要な役割を果たしています。
NK細胞は細胞障害性T細胞が見逃したがん細胞も発見し、付着して殺傷します。NK細胞を顕微鏡で見ると、NK細胞特有の顆粒をその細胞内に蓄えています。この顆粒が、いわゆる弾丸のような役目を果たし、がん細胞を攻撃します。ます、付着したがん細胞の細胞膜に穴をあけるのがパーフォリンと呼ばれる糖タンパク質です。穴が開いたところに、グランザイムという酵素(プロテアーゼ)を打ち込んで、がん細胞のアポトーシスを誘導します。
しかし、加齢やがんに患うことによりNK細胞数は減少した り、活性が下がります。実際に免疫機能検査を行いますと、がん患者さまではNK細胞の数や活性が強く抑制されている方が多く見られます。活性化したNK細胞などのリンパ球が出すサイトカインや成長因子が、体内の免疫環境を整えてくれる効果も報告されています。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)療法とは?:
患者さまから約50mlの採血を行い、体外で高活性、高純度のNK細胞を大量増殖・培養する方法です。NK細胞は約2週間無菌状態で培養し、数億~数10億個に大量増殖させます。これは健康な人が持っているNK細胞の数倍の量です。
活性化したNK細胞は生理食塩水に溶かし、点滴で患者さんの体内に戻します。NK細胞療法は本人の血液を培養する方法なので、身体への負担がほとんどなく、QOL(生活の質)を高く維持しながら受ける事が出来ます。
また、「樹状細胞ワクチン療法」と「NK細胞療法」のがんへの攻撃方法は異なりますので、双方を組み合わせることにより、より良い治療効果が期待されています。
適応:
免疫療法を希望される患者さま(血液がんなど、一部適応とならないものがあります)で、がんの部位や血液データをもとに決定いたします。
他の治療との併用:
ほぼすべてのがん治療(手術、抗がん剤、放射線療法、緩和医療など)、樹状細胞ワクチン療法との併用が可能です。
OS(Overall Survival:全生存期間)
OSは、特定の治療を受けた患者さまが、がん診断後に生存している期間の全体になります。OSは、がんの治療やその他の要因による影響を総合的に考慮し、患者の全体的な生存期間を評価することになります。つまり、がんの進行や再発に関係なく、治療後の生存期間を測定します。
PET-CT
PET-CTは、その名のとおりPET(陽電子放射断層撮影装置)とCT(コンピュータ断層撮影装置)が合体した装置です。
PETはおもに機能的な情報を、CTは形や大きさといった形態的な情報を画像化します。
PET-CTの最大の利点は、同時にPET画像とCT画像の重ね合わせ、画像(融合画像)の撮影ができることです。
PET-CTでは2つの画像の重ね合わせの実現により、がんや転移巣をその臓器と同時に表示することが可能となり、診断精度が飛躍的に向上しました。
さらにPETとCTが一度の検査ですむことで、患者さまの負担も軽減されます。
PFS(Progression-Free Survival:無増悪生存期間)
PFSは、がん治療などの臨床試験や研究においてよく使用される指標の1つです。PFSは、特定の治療を受けた患者が病気の進行(がんの再発や増殖)なしに生存している期間を表します。PFSは、抗がん剤や、放射線治療、免疫療法等の治療が進行を遅らせる能力をどれだけ持っているかを示す指標として使われます。
PSA
PSAは Prostate Specific Antigenの略で、前立腺の上皮細胞と尿道の周囲の腺から特異的につくられて分泌される糖たんぱくの一種です。前立腺がんで数値に反応が出やすいことから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われています。
PSMA治療
PSMA治療とは、前立腺がんに特化した新しい放射線療法の一つです。前立腺がんのなかでも、すでに転移をしており、標準的な治療では進行を制御できなくなった「去勢抵抗性前立腺がん」に、大きな効果が期待できます。PSMA(Prostate Specific Membrane Antigen)は、「前立腺特異的膜抗原」と言う意味で、前立腺がん細胞の表面に存在しているタンパク質です。前立腺がんの悪性度が高かったり進行すると、数十~百倍も強く認めるようになります。PMSA治療では、このPSMAにくっつく物質にさらに放射性同位元素(177-ルテチウム)つけたものを点滴します。体内でPSMAにくっついた物質から放射線が放出されることによって、前立腺がんだけを狙い撃ちして、細胞レベルの放射線療法を行うのがPSMA治療の基本的な原理となります。がん細胞だけを選択的に攻撃するため、正常な臓器への影響が少ないという点がPSMA治療の大きなメリットになります。
PSMA治療は現在、欧米を中心に行われていますが、今のところ日本では受けることができません。
その効果は2017年から主要な国際学会で軒並み発表され、世界中で大変な注目を集めています。
しかし日本では、放射性物質の取り扱いに関する法的な制限があり、国内で検査や治療を受けられるようになるまで数年はかかるといわれています。
RECIST分類
治療評価はRECIST(最長径の和の変化)分類によって評価しています。
Complete Response (CR):消失
Partial Response (PR):30%以上の減少
Stable Disease(SD):PRの基準もPDの基準もみたさない
Progressive Disease (PD):20%以上の増加
SOP: Standard Operating Procedure
SOP: Standard Operating Procedure(標準作業手順書)とは、再生医療のような細胞を用いたちりょうにおいて、その細胞の品質保持のため、ひとつひとつの作業工程や施設管理方法などを順序だてて文書に落とし込んだものです。
TIL療法
腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte)、具体的には腫瘍反応性T細胞・腫瘍特異的T細胞(がん特異的キラーT細胞、がん特異的ヘルパーT細胞など)を体外で大量培養して輸注する方法である。
T細胞
T細胞とは、リンパ球の一種で、細胞の表面にT細胞に特徴的なT細胞受容体を発現している細胞です。末梢血中のリンパ球の70~80%を占めます。
細胞の表面の分子としてCD4かCD8などを発現しており、CD4を発現したT細胞は他のT細胞の機能発現を誘導したりB細胞の分化成熟、抗体産生を誘導したりするヘルパーT細胞として機能します。
またCD8陽性のT細胞はウイルス感染細胞などを破壊するキラーT細胞(CTL)として機能します。その働きは細胞性免疫とも呼ばれています。
WT1
免疫が、がん細胞を攻撃するのに目印となる重要な物質が、がん抗原です。これまで様々ながん抗原が発見されていますが、「WT1」は、がん抗原として優れている(優先度が最も高い)物質(*)として、世界で評価されているがん抗原です。

(*)Cheeve MA. Clinical Cancer Research 2009

プレシジョンクリニックでは、樹状細胞ワクチン療法にこのWT1タンパクの一部分である「WT1ペプチド」※を用いることで、より多くのがん患者さまに樹状細胞ワクチン療法を提供できるようになりました。