この症例のポイント
腹膜播種があると言われた方は、腹膜播種の治療相談のページもご覧ください。
Case Report ─ 当院で治療を行った卵巣がんの症例
重要症例
骨盤から横隔膜まで広範囲にわたる腹膜播種(がん性腹膜炎)が確認された難治例に対し、抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を組み合わせることで腹膜播種が消失し、1年4か月後も再発なしという経過をたどった症例をご紹介します。
| 患者さま | 40代 女性 |
|---|---|
| 診断名 | 卵巣がん・腹膜播種 |
| ステージ | Ⅳ(骨盤〜横隔膜まで広範囲の腹膜播種・がん性腹膜炎) |
| 卵巣摘出術 | 卵巣がんの診断で手術。術中、骨盤から横隔膜まで広く腹膜播種を認め、がん性腹膜炎の状態と確認 |
|---|---|
| 抗がん剤開始 | 術後1か月後に抗がん剤治療を開始 |
| 免疫療法開始 | 抗がん剤開始の翌月から樹状細胞ワクチン療法を併用開始 |
| 腹膜播種消失 | 免疫療法開始から約3か月後のCT検査で腹膜播種の消失を確認 |
| 抗がん剤終了 | 腹膜播種消失から約4か月後に抗がん剤治療を終了 |
| 1年4か月後 | 再発の兆候なし。経過良好 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、患者さまの治療歴・全身状態・免疫状態をふまえて、免疫療法を組み合わせる余地を検討します。進行がんでも免疫応答を考慮した治療設計を行うために、患者さまの状況に応じてSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、卵巣摘出術後の抗がん剤治療に、免疫を活性化する樹状細胞ワクチン療法を組み合わせました。骨盤から横隔膜まで及ぶ広範囲の腹膜播種が、併用開始から約3か月後のCT検査で消失が確認されています。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)では重篤な副作用は多くないとされますが、体調や併用治療によってリスクは異なります。主な副作用・注意点は以下のとおりです。
本症例は、骨盤から横隔膜まで広範囲の腹膜播種が確認された難治例に対し、抗がん剤と免疫療法の併用後に腹膜播種の消失が確認されたケースです。ただし治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。
卵巣がんの腹膜播種・腹水でお困りの方へ
広範囲の腹膜播種でも、バイオマーカーに基づく治療選択や免疫療法の組み合わせで改善が得られた症例があります。これまでの治療歴・画像・遺伝子検査結果をもとに、次に確認すべき選択肢をご提案します。
院長から
お腹の中に広く散らばった播種には、手術と抗がん剤に全身に働く免疫を重ねるのが私たちの考え方です。この方は、骨盤から横隔膜まで播種が広がっていましたが、術後の抗がん剤を始めた翌月から樹状細胞ワクチン療法を4か月・7回行いました。抗がん剤と並行して免疫療法を重ねたことが、約3か月後のCTで播種が消失し、1年4か月後も再発の兆候がない経過に寄与できた可能性があると考えています。
卵巣がんは婦人科がんのなかでも予後が厳しいがん種のひとつです。進行すると腹膜播種(腹膜転移)を来しやすく、腹水・腹部膨満・食欲不振などの症状が現れます。本記事では卵巣がん腹膜播種の特徴・治療・最新レジメンを解説し、骨盤から横隔膜まで広範囲の腹膜播種が消失した40代女性の症例をご紹介します。
腹膜播種とは、がん細胞が腹腔内に散らばり腹膜に定着・増殖した状態です。卵巣がんは解剖学的に腹腔内に位置するため、がん細胞が腹腔内に脱落しやすく、腹膜播種を来しやすいがん種として知られています。診断時点ですでにステージⅢ〜Ⅳ(腹膜播種あり)と診断されるケースも多くあります。
初期は無症状のことも多く、進行するにつれて腹水・腹部膨満・食欲不振・体重減少・腹痛などが現れます。腹水が増えると腹部が大きく張り、呼吸苦を来すこともあります。
卵巣は腹腔内に位置するため、がんが進行すると腫瘍細胞が腹水中に遊離し、腹膜各所に付着・増殖します。大網(胃・腸を覆う脂肪組織)や横隔膜下面にも播種が及ぶことがあり、本症例のように骨盤から横隔膜まで広範囲に腹膜播種が確認される場合もあります。
CT・MRIによる画像診断が基本です。腹腔鏡検査でPCI(腹膜播種指数)を直接評価することで、手術適応の判断に役立ちます。CA125・HE4などの腫瘍マーカーの推移も経過観察に利用されます。BRCA1/2変異の有無は治療方針(PARP阻害薬の適応)に直結するため、遺伝子検査が重要です。
治療方針は腹膜播種の広がり・全身状態・バイオマーカー(BRCA変異・HER2・MSI)によって異なります。手術(腫瘍減量術)+化学療法が標準ですが、播種が広範囲の場合や再発例では薬物療法が中心となります。
卵巣・卵管・子宮・大網などを切除し、腫瘍を可能な限り取り切ることを目指します。残存腫瘍が少ないほど(理想はCC-0)予後が良好とされています。術後に化学療法を行うのが標準的な流れです。
1次治療の代表例
再発・2次治療以降の代表例

【監修者】矢﨑 雄一郎
プレシジョンクリニック東京院長。免疫療法・樹状細胞ワクチン療法を専門とし、進行がん・腹膜播種症例を多数経験。SynerTri®(iCCI)の設計・実施に携わる。
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