この症例のポイント
前立腺がんは、転移する際に骨へ広がりやすい性質があり、背骨・骨盤・肋骨などに複数の転移が生じた状態を多発骨転移と呼びます。この段階はステージ4に分類され、前立腺を摘出する手術ではなく、全身に効く薬物療法が治療の柱になります。
前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)を栄養にして増殖するため、その働きを抑えるホルモン治療(内分泌療法)が中心的な役割を果たします。ホルモン治療には薬剤による方法のほか、男性ホルモンの大部分を分泌する精巣の働きを止める去勢術(外科的去勢)があり、本症例では診断の翌年に去勢術が行われました。
ホルモン治療は前立腺がんに対して高い効果が期待できる一方、ほてり・倦怠感・骨密度の低下・皮膚のかゆみなど、さまざまな副作用が現れることがあります。効果があっても副作用の負担が大きく、治療そのものを続けられなくなる場合があるのが難しい点です。
本症例では、去勢術ののちもホルモン治療を継続していましたが、腫瘍マーカーであるPSA値は上昇し、さらにかゆみなどの副作用によって治療の継続が困難になりました。効果と副作用の両面から選択肢が狭まった状態で、患者さまは治療方針に悩まれ、当グループを受診されています。当グループでは、こうした状況において免疫を活性化する樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる設計を検討することがあります。
キラーT細胞は、体内で異常な細胞を見つけて直接攻撃するリンパ球の一種です。ただし、キラーT細胞ががん細胞を攻撃するには、まず「どれががん細胞なのか」という目印(抗原)を教わる必要があります。その教える役割を担うのが樹状細胞であり、樹状細胞ワクチン療法は、この仕組みを利用してがんに特異的なキラーT細胞を増やすことを目指す治療です。
治療の効果は画像所見や腫瘍マーカーで確認するのが基本ですが、それに加えて血液中でがんを攻撃するキラーT細胞が増えているかを測定することで、免疫が実際に反応したかどうかを裏づけられる場合があります。本症例では、投与前には血液中にほとんど検出されなかった前立腺がんに対するキラーT細胞が、投与後には約400倍まで増加していました。狙いどおりに免疫がはたらいたことを示す所見です。
※ この数値は本症例において測定された値であり、すべての方に同様の変化が生じることを示すものではありません。免疫細胞の増加が必ずしも治療効果を保証するものでもありません。
| SynerTri®の役割 | 本症例での対応 |
|---|---|
| 標準治療(ホルモン治療・去勢術) | 診断時よりホルモン治療を開始。翌年に去勢術を実施。その後、副作用により継続が困難に |
| アクセル(免疫活性化) | 樹状細胞ワクチン療法を開始し、がん特異的なキラーT細胞を誘導(投与後、約400倍に増加) |
Case Report ─ 当院の前立腺がん改善症例
重要症例
ここまで代表的な治療の考え方をご紹介しました。ホルモン治療の継続が難しくなった場合でも、免疫の働きを後押しする方法を検討できることがあります。実際に樹状細胞ワクチン療法を受けられた患者さまの経過をご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 前立腺がん(ステージ4)、多発骨転移 |
| 年齢・性別 | 85歳 男性 |
| 治療法 | ホルモン治療(内分泌療法)+去勢術+樹状細胞ワクチン療法 |
| 治療期間・回数 | 樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。 |
| 治療費 | 当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。 |
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 20XX年12月(診断時) | 前立腺がん、多発骨転移と診断。ホルモン治療を開始。 |
| 20XX+1年2月 | 去勢術を実施。 |
| その後 | ホルモン治療を継続するもPSA値は上昇。さらにかゆみなどの副作用により治療の継続が困難となる。治療選択肢に悩まれ、プレシジョンクリニックグループを受診。 |
| 20XX+5年5月 | 樹状細胞ワクチン療法を開始。 |
| 投与後 | 血液中にほぼ検出されなかった前立腺がんと戦う免疫細胞(キラーT細胞)が約400倍に増加。 |
| 現在 | 10年以上、お元気に過ごされている。 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、多発骨転移を伴う前立腺がんステージ4に対し、標準治療としてのホルモン治療と去勢術が行われました。その後、副作用により治療の継続が困難となった段階で、免疫を活性化する〈アクセル〉である樹状細胞ワクチン療法を開始しています。投与後には、血液中にほとんど検出されなかった前立腺がんに対するキラーT細胞が約400倍まで増加し、狙いどおりに免疫がはたらいたことが確認されました。診断から10年以上、お元気に過ごされています。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。以下の可能性があります。なお、ホルモン治療を併用する場合は、ホルモン治療に伴う副作用(ほてり・倦怠感・骨密度の低下・皮膚のかゆみ等。本症例では、かゆみ等により継続が困難となりました)も生じ得ます。
治療効果には個人差があります。同様の効果を保証するものではありません。

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