投稿日:2024.5.16/更新日:2024.10.31
膵臓癌が免疫療法に対して効果が出にくいとされる理由は、腫瘍の特徴や免疫環境に関係しています。以下に主な理由を説明します。
膵臓癌の腫瘍は、強い免疫抑制的な微小環境を持っています。膵臓癌の腫瘍組織は、免疫細胞が侵入しにくい構造を形成していることが多く、腫瘍の周囲に免疫細胞の活動を抑制する細胞(制御性T細胞、M2型マクロファージなど)が多く存在します。これにより、免疫系が腫瘍を認識して攻撃する能力が制限されます。
膵臓癌は「低免疫原性」とされています。これは、膵臓癌が免疫系に対して目立つ抗原を発現しにくいことを意味します。抗原が少ないため、免疫細胞が癌細胞を「異物」として認識しにくく、免疫応答が引き起こされにくいのです。多くの免疫療法は、免疫系が癌細胞をしっかり認識できることが前提ですが、膵臓癌の場合、その認識自体が難しいとされています。
膵臓癌は非常に密な腫瘍間質(ストローマ)を形成します。これにより、免疫細胞や免疫療法で投与された薬剤が腫瘍内に浸透しにくくなります。ストローマが腫瘍の物理的なバリアとして働き、免疫細胞や薬剤が癌細胞にアクセスできないため、効果が低くなることがあります。
膵臓癌は異質性が高く、遺伝的および分子的な多様性が大きいため、免疫療法が一律に効果を発揮しにくい傾向があります。異なる細胞集団が異なる免疫回避メカニズムを持っているため、単一の免疫療法では腫瘍全体を効果的に攻撃できないことがあります。
膵臓癌の腫瘍微小環境は、血管新生が不十分で酸素や栄養が不足している場合が多いです。この低酸素環境は、免疫細胞の機能を低下させる一因となり、免疫療法の効果が制限される要因の一つとなっています。
膵臓癌の治療には、従来の化学療法や放射線療法がよく使われますが、これらの治療は免疫系にも影響を与え、免疫療法の効果を阻害する場合があります。たとえば、化学療法によって免疫細胞が抑制されることがあり、これが免疫療法の成功を困難にする要因となることがあります。
これらの要因から、膵臓癌に対して免疫療法単独での効果は限定的であるとされています。しかし、近年では膵臓癌における免疫療法の効果を高めるための新しい戦略(例えば、免疫療法と化学療法や放射線療法の併用、微小環境を標的とする治療法の開発など)が模索されており、今後の進展に期待が寄せられています。
私たち、プレシジョンクリニックグループが開発した革新的複合免疫療法(The iCCI: innovative combination cancer immunotherapy)は、膵臓癌のような免疫療法が効きにくいとされるがんの課題を克服するために開発された独自の治療法です。
革新的複合免疫療法(The iCCI: innovative combination cancer immunotherapy)について:
【監修者】矢﨑 雄一郎
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。
略歴:
1996/3
東海大学医学部卒業
1996/4
東海大学附属病院消化器外科勤務
2000/11
遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社