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TOP コラム 2025年2月の膵臓がん治療・診断トピックス

投稿日:2025.2.28/更新日:2025.12.1

2025年2月の膵臓がん治療・診断トピックス

2025年2月の膵臓がん治療・診断トピックス

1. 家族性膵がんとは?

膵臓がんは5年生存率がわずか12%と非常に予後の悪いがんですが、その中でも「家族性膵がん」と呼ばれる、親子や兄弟姉妹など近親者に膵がんが多発する家系は、特に発症リスクが高いことがわかっています。
こうした方々は、通常よりも早期発見に向けた特別な検査(ハイリスクスクリーニング)や、専門医による定期的な経過観察(サーベイランス)を受けることで、生存率を大きく高められる可能性があります。
この「家族性膵がん」に関する最新情報が学べる無料オンラインセミナー「第4回家族性膵がんサミット」が2025年2月9日にZoomで開催されます。
当日は国立がん研究センターなどの膵がん専門医が、最新の研究成果(DIAMOND試験※)、遺伝子検査、遺伝カウンセリング、早期診断法、外科手術、薬物療法などをわかりやすく解説します。また、患者さんやご家族が直接医療者に質問できる「意見交換会」も行われ、不安や疑問に専門家が丁寧に答えてくれます。
ご家族に膵がんの方がいる場合は、この機会に「家族性膵がん登録制度」への登録や、専門医による定期検査も検討することが勧められています。「病気を知ることは、命を守ること」です。膵がんについて正しい情報を得て、早期発見と適切な対応に役立てていただければと思います。参加は無料で、どなたでも申し込めます。

第一近親者における膵臓がん患者数 膵臓がんの発症リスク
1名 4.5倍
2名 6.4倍
3名 32倍

出典: 膵癌診療ガイドライン2022年版 総論1(改変)
※DIAMOND試験:早期膵臓がん発見を目指したサーベイランス試験
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000136365.html

2.膵臓がん治療トピックス:膵癌のオリゴ転移に対する局所治療の現状(日本癌治療学会2024)

オリゴ転移は、限局性癌と全身転移の中間に位置し、局所治療の適応となることがある。膵癌のオリゴ転移に対する治療は、転移臓器や症例に応じて手術、放射線療法、アブレーション治療が検討される。

1. オリゴ転移の局所治療の意義

転移癌に対する標準治療は薬物療法だが、オリゴ転移に対しては局所治療を組み合わせることで生存率の改善が期待されている。しかし、オリゴ転移の定義や治療適応の明確化には課題がある。

2. 膵癌のオリゴ転移に対する治療戦略

膵癌のオリゴ転移は主に肺、肝、リンパ節に生じることが多い。

  • 肺オリゴ転移:膵癌の肺転移は外科的切除が第一選択となることが多い。手術適応外の場合は定位放射線治療(SBRT)やアブレーションが考慮される。
  • 肝オリゴ転移:膵癌の肝転移に対しては手術適応が限られるため、RFA(ラジオ波焼灼療法)やMWA(マイクロ波焼灼療法)などのアブレーションが選択肢となる。
  • リンパ節オリゴ転移:局所制御を目的に放射線治療が行われる。

3. 画像ガイド下アブレーション治療の有効性

アブレーション治療は腫瘍を熱や冷却によって壊死させる治療法であり、膵癌オリゴ転移に対する報告が増えている。

  • RFA:局所制御率が高く、低侵襲であるが、熱沈着の影響を受けやすい。
  • MWA:短時間で治療可能だが、疼痛が強くなる傾向がある。
  • CA(凍結療法):治療範囲をリアルタイムに確認でき、疼痛が少ないが、治療時間が長くなる。

4. 放射線療法の役割

定位放射線治療(SBRT)は膵癌のオリゴ転移に対して有望な治療法であり、高い局所制御率を示している。特に肺転移やリンパ節転移において安全性が高いと報告されている。

5. 今後の課題

オリゴ転移の治療成績向上には、適切なバイオマーカーの確立、局所治療と全身治療の最適な組み合わせの研究が必要である。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/search/cancer/report/202501/587098.html

3.膵臓がん治療トピックス:膵癌における癌悪液質とPonsegromabの臨床試験

癌悪液質は進行癌患者の約50~80%に見られ、特に膵癌患者に多く、体重減少や筋肉量の減少を引き起こす深刻な状態である。近年、成長分化因子15(GDF-15)が癌悪液質の主要な因子であることが明らかになり、これを標的とする治療法が注目されている。

Ponsegromab(PF-06946860)は、GDF-15に結合し、後脳のGFRALを介した食欲抑制シグナルを阻害するモノクローナル抗体である。第1相試験で安全性と有望な効果が示されたため、第2相試験が実施された。

この試験には11カ国・74施設が参加し、非小細胞肺癌、膵癌、大腸癌の患者187人が組み入れられた。膵癌患者は59人(32%)を占めた。患者は100mg、200mg、400mgのPonsegromab群またはプラセボ群にランダムに割り付けられ、4週間ごとに3回投与された。

主要評価項目は12週後の体重変化であり、Ponsegromab群では用量依存的に体重増加が確認された。プラセボ群との群間差は、100mg群で1.22kg、200mg群で1.92kg、400mg群で2.81kgだった。特に400mg群では、食欲や身体活動の改善も顕著だった。

副作用はプラセボ群80%、Ponsegromab群70%に認められ、安全性は許容範囲内と評価された。著者らは、Ponsegromabが癌悪液質の症状を改善する可能性があると結論付けた。今後のさらなる検証が期待される。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/popular/202501/587074.html

4. 膵臓がん治療トピックス:第4回合同膵がん教室:膵がん外科治療の最前線

日本では膵がんの患者数が増加傾向にあり、男女ともに主要ながんの一つとなっている。2024年11月23日、NPO法人パンキャンジャパン北海道支部と大阪国際がんセンターが共同で、第4回合同膵がん教室をオンライン開催した。北海道大学病院消化器外科Ⅱの中村透医師が「膵がん外科治療の最前線」について講演を行った。

高難度の膵頭十二指腸切除術と膵体尾部切除術

膵がんの外科手術は、発生部位によって術式が異なる。膵頭部に発生した場合、膵頭十二指腸切除術が行われるが、この手術は胆管や十二指腸など広範囲の臓器を切除し、再建するため高難度である。一方、膵体尾部に発生した場合は、膵体尾部切除術が行われ、手術時間は短くなる。

拡大手術とコンバージョン手術

血管浸潤がある場合、従来は手術適応外とされてきたが、近年では化学療法後に腫瘍が縮小すれば、門脈や動脈を含む拡大手術が可能になる。特にコンバージョン手術は、局所進行がんや転移がある場合でも、一定期間化学療法が有効であれば手術が検討される。

縮小手術:脾臓温存の試み

北海道大学病院では、膵体尾部切除時に脾臓を温存する手術を実施している。研究では、脾臓近傍のリンパ節転移がほとんどないことが示されており、脾臓を温存することで免疫機能の維持が期待される。

低侵襲手術の進展

同院では、2020年から膵体尾部切除、2023年から膵頭十二指腸切除にも手術支援ロボットを導入している。傷が小さく回復が早い可能性があるが、従来手術との優位性については今後の検討が必要とされる。

今後の展望

膵がん治療は、標準手術に加え、コンバージョン手術や縮小手術の導入が進んでいる。今後、技術の発展により、より安全で効果的な手術法が確立される可能性がある。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/202501/587046.html

5.膵臓がん治療トピックス:Immuneering社の膵臓がん治療薬「IMM-1-104」臨床試験結果

  • 株価急騰

    Immuneering社(NASDAQ:IMRX)の株価が55%上昇。
    フェーズ2a試験の好結果が発表されたことが要因。

  • 試験結果の概要

    膵臓がん一次治療患者における全奏効率(ORR)43%、**疾患制御率(DCR)86%**を達成。
    既存の標準治療(ゲムシタビン+ナブパクリタキセル)のORR 23%、DCR 48%を大幅に上回る。
    修正FOLFIRINOX(mFFX)との併用でも標的病変の縮小が確認され、1例で100%の完全縮小。
    二次治療患者への単剤療法でも標的病変を67%縮小。

  • 治療薬「IMM-1-104」の特徴

    MEK阻害剤として高い忍容性を持つ。
    既存のMEK阻害剤と比べ、副作用の軽減が期待される。

  • 今後の計画

    2025年に新たなフェーズ2a併用療法群を3つ開始予定。
    米FDAより一次・二次治療の膵臓がんおよびNRAS変異メラノーマのファストトラック指定を取得。
    メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する追加試験も計画中。
    2025年第2四半期にさらなるデータ発表予定。

  • 専門家の評価

    Mayo ClinicのTanios Bekaii-Saab医師は、「IMM-1-104は膵臓がん治療の有効性向上と高い忍容性を提供する可能性がある」とコメント。
    他のがん種への適応拡大も期待されている。

  • 市場への影響

    期待感から投資家の関心が高まり、同社の株価が急上昇。
    フェーズ2a試験の追加データが今後の株価の動向を左右する見込み。
    https://jp.investing.com/news/stock-market-news/article-1012049

6.膵臓がん診断トピックス:MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

膵臓がんは早期発見が困難であり、「サイレントキラー」とも呼ばれる。新たな研究で、拡散テンソル画像法(DTI)というMRI技術が、膵臓がんの早期発見に役立つ可能性が示された。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の研究グループによるこの結果は、「Investigative Radiology」に発表された。

膵臓がんは米国のがん死因第3位であり、早期発見時の5年生存率は44%だが、転移後は3%に低下する。膵臓がんの95%は膵管腺がん(PDAC)であり、前駆病変の膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)から発生する。しかし、従来の画像診断では検出が難しい。

DTIは、水分子の拡散を利用して組織の微細構造を可視化する技術であり、主に脳の画像診断に使用されてきた。今回の研究では、このDTIを膵臓がんの前駆病変の検出に応用できるか検討した。

研究では、PanINモデルマウス4匹、PDACモデルマウス6匹、対照6匹を用いて、DTIによる病変の識別を試みた。その結果、PanINとPDACを高精度で検出可能であることが示された。FA(fractional anisotropy)やRD(radial diffusivity)を用いた判別精度のAUCは0.983、MD(mean diffusivity)やAD(axial diffusivity)ではAUC1.000と、非常に高い精度を示した。

さらに、5人のヒト膵臓組織でも同様のコントラストが確認され、DTIが膵臓がんの前駆病変検出に有望であることが示唆された。しかし、臨床応用にはさらなる研究が必要であり、今後の技術改良と試験が求められる。
https://www.carenet.com/news/general/hdn/59949

7.膵臓がん診断・治療トピックス:膵臓がんの大規模な細胞間プロテオミクス解析

2025年1月16日 自然 637 , 8046

膵管腺がん(PDAC)の腫瘍微小環境(TME)と新たな診断・治療標的の発見

膵管腺がん(PDAC)は、特徴的な高密度の間質を持つ腫瘍微小環境(TME)を形成し、これが予後不良に大きく関与している。本研究では、PDAC腫瘍内のがん細胞と間質細胞の細胞間シグナル伝達を詳細に解析するため、多次元プロテオミクス戦略「TMEPro」を開発した。

TMEProを用いて、100のヒト膵臓組織サンプルの糖鎖修飾された分泌タンパク質と細胞膜タンパク質を詳細に解析し、細胞種ごとの起源やパラクライン相互作用(特にチロシンリン酸化を介するもの)を特定した。また、遺伝子改変PDACマウスモデルを用いて、腫瘍進行の時間的変化を調査した。

その結果、間質細胞とがん細胞の間にはPDGFR–PTPN11–FOSシグナル伝達経路を介した相互作用があることが明らかになった。また、PDAC腫瘍内では、細胞膜タンパク質の剪断(シェディング)が重要な役割を果たしており、特にAXL受容体型チロシンキナーゼの剪断が新たな細胞間シグナル調節機構として機能していることを発見した。

重要な点として、剪断されたAXLのレベルはリンパ節転移と相関しており、AXLの剪断抑制とキナーゼ活性阻害を組み合わせることで、がん細胞の増殖を強く抑制できることが示された。

本研究は、TMEProという新たな機能的プロテオミクス手法を確立し、PDACのTMEを深く理解するための包括的なデータを提供するものである。これにより、新たな診断マーカーや治療標的の発見が期待される。
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/129120

8.膵臓がん治療トピックス:高齢膵癌患者における脆弱性とQOLが生存期間に与える影響(ASCO GI 2025)

2025年ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2025)で発表されたECOG-ACRIN EA2186(GIANT)試験では、遠隔転移を有する高齢膵癌患者において、ベースラインの栄養状態や身体機能、QOLが生存期間と強く相関することが明らかになった。

試験概要

本試験は70歳以上の未治療遠隔転移膵癌患者を対象に、減量したゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)と、減量した5-FU+ナノリポソーム型イリノテカン(5-FU+Nal-IRI)を比較。脆弱性は、高齢者機能評価(GA)に基づき、身体機能や認知機能の低下、または80歳以上であることで定義された。

主要評価項目と結果

OS中央値はGnP群4.7カ月、5-FU+Nal-IRI群4.4カ月で有意差なし。PFS中央値も両群で差がなかった。しかし、4週間以上治療を継続できた患者のOS中央値は8.0カ月と長かった。

生存期間への影響因子

PS別のOSでは、PS 0群のOS中央値は6.9カ月、PS 1群5.3カ月、PS 2群1.4カ月(p<0.001)で、PS 2の患者は特に予後が不良だった。一方、年齢別ではOSに差はなかった。

脆弱性・QOLとOSの関係

単変量解析でOSと関連が認められたのは、IADLスコア(p=0.023)、栄養(MNA)スコア(p<0.0001)、うつ病(GDS)スコア(p=0.029)、QOL(FACT-HEP)スコア(p<0.0001)。多変量解析でも同様の傾向が示された。ECOG PSでは評価できない脆弱性やQOLの要素が、生存期間に重要な影響を与えることが示唆された。

脆弱性への支持療法の可能性

脆弱性やQOLとOSの関連が確認されたことから、支持療法による改善が患者の転帰向上につながる可能性がある。また、化学療法の効果が期待できる患者の選定に役立つことが示された。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202501/587307.html

9.膵臓がん治療トピックス:切除不能な局所進行膵癌のコンバージョン手術における予後良好因子(ASCO GI 2025)

切除不能な局所進行膵癌(UR-LAPC)患者において、コンバージョン手術の予後を改善する要因として、術前治療期間6カ月以上FOLFIRINOX(FFX)ベースの1次治療が独立した良好因子であることが、日本肝胆膵外科学会の大規模研究で明らかになった。6カ月以上の術前治療を受けた患者は、腫瘍縮小効果が高く、R0切除の割合が多く、生存期間が延長する傾向が見られた。これらの結果から、UR-LAPCの治療戦略として、十分な術前治療期間の確保とFFXベースのレジメン選択が重要であると示唆される。

研究概要

  • 日本肝胆膵外科学会が実施した大規模レトロスペクティブ研究。
  • 2015年1月~2020年12月に84施設で治療を受けた切除不能局所進行膵癌(UR-LAPC)患者465人が対象。
  • コンバージョン手術(CS)前の治療期間とレジメンの影響を検討。
  • 2025 ASCO GI Symposiumで奈良県立医科大学の安田里司氏らが発表。

主要評価項目

  • 全生存率(OS)
  • 術前治療期間とレジメンの種類がOSに影響。

主な結果

  1. 術前治療期間

    6.1カ月以上が至適期間。
    6カ月超の患者(350人)は6カ月以下の患者(115人)よりOSが有意に良好(HR 0.53, p=0.006)。

  2. 1次治療レジメン

    FOLFIRINOX(FFX)ベースのレジメンがGnPベースよりOSが良好(HR 0.67, p=0.013)。

  3. 独立した予後良好因子(Cox回帰分析)

    術前治療6カ月超(HR 0.66, p=0.003)。
    1次治療FFXベース(HR 0.60, p<0.001)。
    術前CA19-9・CEAが正常、PNI 45以上、Evans分類III/IV、R0切除、術後化学療法。

  4. 予後不良因子

    リンパ節転移の存在。

6カ月超の術前治療を受けた患者の特徴

  • 腫瘍部位:膵頭部の割合が高い。
  • 治療:1次治療がFFXベース、放射線療法の割合が高い。
  • 手術時(CS時):CA19-9やDUPAN-2が低値、Evans分類III/IV、R0切除の割合が高い。
  • リンパ節転移:6カ月未満群より低い割合。

結論

  • 術前治療6カ月超FFXベースの1次治療がUR-LAPCのコンバージョン手術後の予後を改善。
  • 治療期間とレジメン選択が生存率向上に寄与する可能性。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202501/587306.html

10.膵臓がん治療トピックス:切除不能局所進行膵癌の1次治療で標準化学療法に抗CTGF抗体pamrevlumabを追加してもOSを延長できず【ASCO GI 2025】

切除不能局所進行膵癌(UR-LAPC)の1次治療として、標準化学療法に抗CTGF抗体薬pamrevlumabを追加しても、全生存期間(OS)の延長効果は認められなかった。これは国際共同フェーズ3試験(LAPIS試験)で明らかになり、ASCO GI 2025で発表された。

LAPIS試験は、未治療のUR-LAPC患者284人を対象に、pamrevlumab+標準化学療法群(143人)とプラセボ+標準化学療法群(141人)に無作為に割り付け、OSや無増悪生存期間(PFS)を評価した。

OS中央値はpamrevlumab群17.3カ月、プラセボ群18.0カ月で有意差なし(ハザード比1.08, p=0.5487)。PFSも両群9.4カ月で差がなく、奏効率(ORR)はpamrevlumab群30.1%、プラセボ群45.4%と、pamrevlumab群が低かった(ハザード比0.50, p=0.007)。

6サイクルの治療完遂率はpamrevlumab群64.8%、プラセボ群68.1%で大きな違いはなく、切除を考慮された割合や実際の切除率も同等だった。有害事象の発生率・重症度も同程度で、肺炎による治療関連死亡がpamrevlumab群で1例報告された。

これらの結果から、pamrevlumabの追加はUR-LAPCの標準治療においてOSやPFSの改善に寄与せず、今後の治療選択肢としての有用性は低いと考えられる。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202501/587318.html

11.膵臓がん治療トピックス:膵臓がんに対する新たな免疫治療薬ANT308が有望な前臨床結果を示す

アトランタ発—Cambium Oncologyは、同社のリード候補薬ANT308が前臨床試験で高い有効性と安全性を示したと発表した。ANT308は、変異に依存せず、投与量制限毒性がない革新的な免疫治療薬である。

同社はNIHのFast-Track SBIR助成金として240万ドルを獲得し、台湾のOEP Innovationsからも投資を受けた。ANT308は、血液悪性腫瘍および固形癌に対し、従来の治療抵抗性のがんでも奏効率を向上させる可能性がある。

前臨床試験の成果

  1. 白血病:2つのマウスモデルで強力な抗腫瘍効果を単剤で確認。
  2. 膵がん:3つのモデルでPD-1阻害剤との相乗効果を示す。

ANT308は、腫瘍微小環境での免疫抑制を克服する低分子アンタゴニストであり、ヒトT細胞上のVIP受容体シグナルを遮断することで免疫応答を強化する。

Cambium Oncologyについて

2018年設立の同社は、次世代免疫腫瘍治療薬の開発に注力。膵がん、メラノーマ、白血病を対象に、チェックポイント阻害剤や免疫調整剤の開発を進める。

主要メンバー

  • 創立者:ネッド・ウォーラー医学博士(Emory Healthcare勤務、血液悪性腫瘍専門)
  • CEO:ゲイリー・G・アルトマン博士(バイオテクノロジー業界の投資・買収経験者)

詳細は公式サイトで確認可能。
https://jp.prnasia.com/story/124720-3.shtml

12.膵臓がん治療トピックス:KRASがんに対する免疫療法を開発しているElicio Therapeutics、1,000万ドルの直接募集を確保

ボストンのがん免疫療法企業Elicio Therapeutics (NASDAQ:ELTX)は、Nasdaqルールに基づく登録直接募集で約1,000万ドルを確保しました。126万株以上の株式と同数のワラントが発行され、H.C. Wainwright & Co.が独占的プレースメントエージェントを務めました。

調達資金は運転資金および一般的な企業目的に使用される予定です。投資家向け資料はSECウェブサイトやH.C. Wainwright & Co.から入手可能です。

Elicioは、KRAS変異陽性の膵臓がんおよび大腸がんを標的とするワクチンELI-002を開発しています。独自のAmphiphile技術を活用し、T細胞の教育・活性化を強化し、持続的な免疫監視を促進することを目指しています。

最近、ELI-002のフェーズ2試験の患者登録を完了し、フェーズ1 AMPLIFY-7P試験の予備結果では、ワクチン誘導T細胞応答と無病生存期間に正の相関が確認されました。

さらに、ElicioはJones TradingからBuy評価を受け、CFO交代を発表しました。また、引受公募増資により約1,150万ドルの追加調達を計画しています。https://jp.investing.com/news/company-news/article-93CH-994058

13.膵臓がん診断トピックス:「家族性膵がんサミット」2/9開催 – 早期発見の最新情報を解説

膵臓がんのハイリスク因子である「家族性膵がん」に関する最新情報を紹介する「家族性膵がんサミット」が、2025年2月9日にオンライン開催される。本イベントでは、国内の専門家が最新の研究や診療について解説し、患者や家族との意見交換も行われる。

家族性膵がんとは?

膵臓がんが家系内で多発する「家族性膵がん」は、発症リスクが高く、欧米の研究でも注目されている。日本では「家族性膵癌登録制度」や「DIAMOND試験」による研究が進められ、ハイリスク群へのスクリーニングが強化されている。

サミットの内容

・「DIAMOND試験」の最新研究

・家族性膵がんの遺伝カウンセリング

・ゲノム解析とハイリスク群の検査法

・早期診断、化学療法、外科療法の最新情報

プログラム

第1部:医療フォーラム(専門家による講演)

第2部:患者・家族との意見交換会

開催概要

日時:2025年2月9日 13:00~(要申込)

形式:Zoomオンラインセミナー

主催:DIAMOND studyチーム、国立がん研究センター、NPO法人パンキャンジャパン

詳細・申込は公式ページへ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000136365.html

14.ポーランド発・膵臓がんを含むAI活用の最前線 – 診断から治療選択まで

2025年1月16日、Applied Sciences に、ポーランドの研究チームによる「腫瘍学におけるAI利用」をまとめたレビュー論文が発表された。AIは医療のさまざまな分野で活用が進んでいるが、腫瘍学の領域では8割以上が「診断」分野に集中しているのが特徴だ。特に、放射線学病理学 での活用が顕著であり、がんの発見に欠かせない“画像”と“がんの遺伝子の特徴”を読み解く技術として発展してきた。

いまAIは何に使われているのか?

AIが最も力を発揮しているのはMRIやCTなどの画像診断の補助だ。患者数の多いがんを中心にAIによる早期発見の研究が進んでおり、診断対象には 乳がん・肺がん・子宮頸がん・前立腺がん・大腸がんに加え、膵臓がんも代表領域として含まれている。とくに膵臓がんは症状が出るまで見つけにくいため、画像を高精度に読み解けるAI技術の価値が大きい。

診断以外にも、**「この病気はどう進むのか」「再発しやすいのか」「治療は効きそうか」「重い副作用が出やすいか」**など、患者や家族が気になるポイントの予測にもAI導入の可能性が広がっている。また、新薬開発ではがんの成長速度や細胞の性質、薬の働き方などをAIでモデル化し、次の治療候補を探る研究も進む。

臨床試験の現場にもAIが入る時代

前臨床モデルAI解析 から治験設計まで、AIは臨床試験にも関わりはじめている。試験デザインの効率化に加え、患者募集や治療データの追跡、服薬・治療の継続が“無理なくできているか”の確認など、診断以外の現場支援にも役割を広げられると考えられている。

これからの課題

一方で、データが少なく集めにくい希少がんや小児がんではAI活用が遅れているという現実も指摘された。さらに、診断分野以外でのAI活用の促進、AI利用に伴う倫理・法的側面の整備もこれからの重要テーマとして挙げられている。
https://aitimes.media/2025/01/16/14629

15.膵臓がんに対するT細胞免疫療法の開発「Marker Therapeutics」

2025年2月11日、Brookline Capital MarketsMRKR の分析を開始し、投資判断を「買い」、12–18カ月の目標株価を$4.00と発表した。株価$1.72、時価総額$18.21millionという小さな船でありながら、血液がん・固形がんの臨床開発を抱える“腫瘍学ベンチャー”として動きを見せている。

何が期待されているのか?

主軸は T細胞ベースの免疫療法である MT-601。最もクローズアップされたシナリオは、2027 までに びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治療薬として上市できる可能性だという。さらに 2028 からは収益化・営業キャッシュフローで黒字転換し得る、とも予測されている。

まだ織り込まれていない可能性

同レポートは 膵臓がん・ホジキンリンパ腫向けのMT-601の価値、さらに 急性骨髄性白血病(AML)に対する別候補MT-401 の成功可能性を計算に入れていない。それが逆説的に「成功したときの伸びしろは、もっと大きい」とも読めるポイントになっている。

バランスシートと投資家視点

流動比率3.15、現金>負債という財務基盤は比較的健全で、「過小評価されている可能性」が投資分析プラットフォーム InvestingPro でも指摘されている。株価急騰(+1.64%)という短期の数字以上に、免疫腫瘍学という中長期の潮流に賭ける投資として評価が始まった、という読み筋だ。
https://jp.investing.com/news/analyst-ratings/article-93CH-1005068

16.BRAF融合遺伝子陽性の膵臓がんまたは低悪性度神経膠腫が対象の医師主導治験にオンライン治験を導入、アクセスの改善に期待

国立がん研究センター は、BRAF融合遺伝子がある膵臓がんや低悪性度の脳腫瘍の患者が、住む場所に関係なく治験に参加しやすくなる仕組みを作り始めた。

今回スタートしたのは、オンラインで医師の診療と検査をつなぐ「Perfume試験」。患者は、近くの提携病院で検査を受け、自宅から専門医とオンライン診療を行える“ハイブリッド治験”だ。

治験薬は MEK阻害剤のビニメチニブで、経口で飲むタイプの薬。中央病院から自宅へ直接配送され、医師の指示のもとで内服する。

膵臓がんのBRAF融合遺伝子は非常に珍しい異常で、こうした「まれな遺伝子のがん」を対象にした治験は都市部に偏りがちだった。

その結果、地方の患者は移動や費用の負担で参加を諦めるケースも多く、“挑戦できる治療”から距離ができていた。

こうした格差を埋めるため、同センターは2014年に希少がんセンターを設立し、2017年からはMASTER KEYプロジェクトで治験やゲノム研究を企業と協力しながら進めてきた。

それでもアクセスの差は大きく、今回オンライン治験の導入に踏み切ったことで「自宅の近くの病院」や「自宅そのもの」が治療開発の入り口になりつつある。

現在の提携病院は 四国がんセンター、島根大学、鹿児島大学、熊本大学、高知大学病院 の5施設から始まったが、今後全国へ広げる計画だ。

オンライン治験は、参加の負担を軽くし、患者登録を早めることで、新しい治療の開発スピードを上げる“次の一手”にもなると期待されている。

膵臓がんのような見えにくいがん、そしてまれな遺伝子のがんであっても、希望を掴むスタートラインが「地域ではなく人」に近づき始めている。https://oncolo.jp/news/250212ra01

17.国がん サバイバー5年生存率を初集計 多くの進行期のがん、1年生存するほど5年生存率が改善

国立がん研究センター中央病院 の調査により、膵臓がんの生存率は診断直後は非常に厳しいものの、治療を乗り越えて1年、2年、さらに5年と生存できた患者では「その先5年間を生きる確率」が大きく上がることが初めて示された。

特にステージIVでは、診断から5年後までの5年生存率は1.3%程度と極めて低いが、診断後5年生存できた患者では、さらにそこからの5年生存率が約42.5%に改善していた。

これは「同じ進行期の膵臓がんでも、時間の経過とともに生き延びる力が蓄積される」ことを意味しており、治療や経過観察の価値をリアルな数値で裏付ける結果となった。

膵臓がんは自覚症状が出にくく、発見が遅れやすい「沈黙のがん」として知られるが、長く生きられた患者では腫瘍の制御や全身状態の維持が成功しているケースが多いと考えられる。

一方で、うつや栄養、日常生活の機能(IADL)など、体の土台やQOLが診断時点で脆弱な患者では、強い副作用や合併症のリスクが生存の継続に影響する可能性があることも示唆されている。

このため、単純な抗がん治療だけでなく、「治療を続けられる体力」「生活の自立性」「食欲や気分の維持」といった支持療法の重要性が改めて浮かび上がった。

この集計は、標準治療だけでなく患者ごとの背景まで見すえた治験 GIANT試験 の知見とつながり、「生きる時間が長くなるほど未来の改善幅も広がる」という明るい視点をもたらしている。

ただしセンターは、同じがん種・ステージでも年齢や持病、生活機能などで予後が異なる点に注意が必要だともコメントしている。

それでも、治療を重ねる患者や家族にとって「今この1年を積み重ねることが未来の希望になる」ことを示したデータとなった。

膵臓がんが、地域や偶然ではなく「生き抜いた人の力」によって次の5年間の確率を変えうる時代が、ようやく数値で語られ始めた。https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=77882

18.治療歴のあるRAS遺伝子変異陽性膵管腺がんに対するRAS阻害剤RMC-6236、有望な抗腫瘍効果を示す

膵臓がん治療の新たな可能性として、米サンフランシスコでの消化器がんシンポジウム ASCO GI 2025 にて、RAS遺伝子変異をもつ既治療の 膵管腺がん 患者を対象とした、新しい経口RAS阻害剤 RMC-6236 の第1相試験結果が発表された。

試験では127人の患者に対し1日1回、160~300mgを内服投与し、腫瘍の縮小効果と副作用の安全性、さらに血液中を流れる ctDNA の変化も調べられた。

報告された副作用は、発疹や消化器症状(下痢・吐き気・嘔吐・口内炎など)が中心で、頻度としては目立つものの、多くが軽度で治療中止につながらなかった点が特徴である。特に発疹は9割の患者で見られたが、コントロール可能なレベルで推移した。

治療効果では、KRAS G12変異をもつ患者での奏効率(腫瘍が小さくなった割合)が約29%、その他のRAS変異でも25%前後の改善がみられた。病気の進行を抑えられた期間(PFS)の中央値は7~8.5カ月と比較的良好で、全生存期間(OS)も両群で14.5カ月程度を示した。

また血液中の KRAS G12 ctDNA解析 では、投与後にctDNAが半分以下に低下した患者が95%前後、検出できないレベルまで消失した症例が約50%近くに達し、薬剤ががんシグナルそのものを強く抑えていることが示唆された。

本結果を受けて現在、Revolution MedicinesECOG-ACRIN Cancer Research Group などが、従来の化学療法との直接比較試験や、他のがん(メラノーマ・肺がんなど)への応用も進めている。

膵管腺がんは治療の選択肢が限られ再発率も高い難治がんだが、こうした経口薬による「継続できる治療」「体力や生活負担が軽い治療」の開発は、地方や通院困難な患者、治療歴のある患者、高齢患者にとっての希望につながると考えられている。

ただし抗体薬や注射とは異なる低分子薬特有の副作用管理(特に皮膚と胃腸症状)は必要であり、今後はより多くの患者での確認と投与の最適化が求められている段階にある。

今回の報告は「この薬が本当に患者の生存と生活の質を両立できるか」「化学療法に追加する価値があるか」を評価するための重要な足場となった。免疫治療と組み合わせた開発も視野に入れた経口RAS阻害剤として、これからのデータ更新に注目が集まっている。
https://oncolo.jp/news/asco_gi_2025_08

19.転移性膵管腺がんと診断された高齢患者におけるQOLや機能評価と生存率の相関解析

転移のある高齢の膵臓がん患者で、治療の効果や生存との関連を詳しく調べた研究が、消化器がん領域の大きな学会「ASCO GI 2025」で発表された。

この解析の元になったのは、ECOG-ACRINが中心となって行った医師主導のフェーズ2試験「EA2186(GIANT)」に参加した176人の高齢かつ転移のある膵管腺がん患者の治療データだ。

試験自体では使う抗がん剤の種類で生存に大きな差はなかった。でも今回の詳しい分析で見えてきたのは、「治療そのものより、治療を始める前の体とこころの土台が、その後の生存に大きく影響している」という事実だった。

具体的には、日常生活の自立度(IADL)、栄養状態(MNA)、もともとの生活の質(QOL)、気持ちの落ち込み(GDS)のスコアが、生存と強く関連していた。逆に、合併症の数や認知機能、基本的な日常生活動作(ADL)とはそこまで関連していなかった。

副作用についても「白血球数が低い」「気持ちの落ち込みが強い」「BMIが高め」なほど重い症状が出やすい傾向はあったけど、多くは治療をやめるほどではなかった。

この解析の大事なメッセージは、「治療を続けられる体力とQOLがあるほど長生きにつながる可能性が高まり、逆に治療前に体とこころが弱っているほど、治療負担や死亡リスクも上がる」ということ。

つまり、膵臓がんの高齢患者では特に、最初の1年で栄養やメンタル、体力のサポート(支持療法)をしっかり入れることが、これからの治療の継続と生存に大きな鍵になるかもしれない、ということが示された。
https://oncolo.jp/news/asco_gi_2025_10

20.膵臓がん早期発見へ検査方法開発 九州大大学院研究班、4月にも実用化

九州大大学院は21日、膵臓(すいぞう)から十二指腸に分泌される消化液を調べることで膵臓がんを発見する検査方法を開発したと発表した。胃カメラに特殊な管を付けて十二指腸の消化液を吸引するだけで検査できる。早期発見が期待できる検査法として4月にも実用化する。
https://www.nishinippon.co.jp/item/1318676/

21.Actuate社、膵臓がん治療薬の臨床試験で進展を報告

Actuateが膵臓がん領域で治療開発と試験基盤の拡充を同時に進めていることが最新ニュースで報告された。

リード候補薬のelraglusibは、減量したFOLFIRINOXlosartanの併用で、未治療の転移性膵管腺がん患者56人の登録を完了したフェーズ2試験を実施している。

既存のMarker Therapeuticsの打ち出す細胞側の診断軸とは異なり、この試験は「腫瘍の周り=ストローマ」を薬理で整える発想が中心にある。

過去の第2相中間データでは、標準のMPACTを大きく上回る1年生存率43.6%、全生存期間中央値9.3カ月(GnP単独は7.2カ月)を示し、死亡リスク37%低減のシグナルと安全性(有害事象は対照と同程度)が確認されたとされる。

この結果を受け、PfizerLustgarten Foundationも支援・協議の枠に入り、米国・EUでの希少疾病用医薬品指定など地域横断での開発促進と独占権の可能性が言及されている。

2026年に最終結果が期待され、2025年にはFDAとのフェーズ3協議や株主総会も計画されている。

膵臓がんは早期44%→転移で3%と落差が激しいが、治療アクセスと“治療前の土台(QOL/体力/栄養)”を一緒に高める視点が、今後の鍵になるというメッセージで希望をつないでいる。
https://jp.investing.com/news/company-news/article-93CH-1021426

22.膵臓がん治療薬CAN-2409、生存期間の大幅延長を確認

Candel Therapeutics, Inc.が、膵臓がんを対象にした治療薬開発で前進している。

主力薬のCAN-2409は、境界切除可能な膵管腺がん(PDAC)患者7人で行われた第2相試験で、標準治療のみの群に比べて生存期間を大きく伸ばした。

登録後の生存期間中央値は31.4カ月となり、標準治療のみの12.5カ月から大幅に改善していた。

さらに9カ月間の追加追跡でも効果は持続し、7人中3人は現在も生存。生存期間は66.0カ月、63.6カ月、35.8カ月に達している例も報告された。

副作用の面では、投与量の上限を決めるような強い毒性や膵炎、治療中止につながるトラブルは確認されていない。

この薬は米国のFDAから開発を早く進めるための支援枠である「Fast Track」や「Orphan Drug」の指定も受けている。

Lustgarten Foundationの支援のもと、より大きな後期比較試験の準備も始まっている。

膵臓がんは発見が遅れやすく治療が難しいが、腫瘍の“周り一式=ストローマ”の免疫抑制を調整し、がん特異的な免疫を育て直すという新しい発想で期待が高まっている。

※CAN-2409
膵がんの腫瘍を壊しながら免疫にも情報を学ばせる in situ ワクチンプログラム。

少数例の試験ながら生存期間2.5倍+長期生存例60か月超とインパクトあり。

経口薬×ウイルス×局所投与でプラットフォーム化を狙う新しい位置づけの治療。
https://jp.investing.com/news/company-news/article-93CH-1021432

23.個別化mRNAワクチン、膵臓がんで有望な初期結果

膵臓がんを対象にした個別化mRNAワクチンが、小規模ながら印象的な成果を示しました。使われたのは「autogene cevumeran」というmRNAワクチンで、患者ごとに腫瘍の遺伝子情報を解析し、そのがんだけが持つネオアンチゲンを標的に設計される“完全オーダーメイド”の治療法です。

今回、Natureに掲載された第1相試験では、このmRNAワクチンに免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることで、膵臓がんに対するT細胞応答が誘導され、治療後最長4年間にわたり血中に腫瘍特異的T細胞が確認されました。ワクチン自体の体内寿命はごく短いものの、免疫反応が長期維持されていたという点は大きな特徴です。

研究を主導した米国Memorial Sloan Kettering Cancer Centerのヴィノッド・バラチャンドラン医師は「膵臓がんでここまで長く持続する抗腫瘍免疫を確認できたこと自体が非常に重要」とコメントしています。副作用も比較的軽く、明確な免疫反応が見られた患者の多くで再発が抑えられていました。

膵臓がんは手術後の再発率が高く、5年生存率は約13%と極めて低い難治がんです。今回の結果はまだ少数例に基づくものですが、再発リスクを減らせる可能性が示された点は、今後の治療開発に大きな手がかりとなります。

すでに260人規模の第2相試験が進行中で、標準的な術後化学療法と、個別化mRNAワクチン+免疫チェックポイント阻害薬の併用とを比較する設計となっています。最終結果は2029年に予定されていますが、中間解析で段階的に成果が公表される見込みです。

膵臓がんにおけるmRNAワクチンの本格的な臨床応用に向けて、大きな一歩となる研究といえます。
https://forbesjapan.com/articles/detail/77354

24.胃カメラ中に採取した膵液のKRAS遺伝子変異検査が切除可能な早期膵臓癌の検出に有用な可能性

早期の膵臓がんを見つける新しい検査の可能性が、日本から報告されました。

大阪大学などのグループは、胃カメラ検査のときに十二指腸から採った「膵液」に含まれるKRAS遺伝子変異を調べることで、切除可能な早期の膵臓がんを高い精度で見つけられる可能性を示しました。

研究では、健常者や膵炎・IPMNの人、手術可能な膵臓がんの患者など164人を対象に10施設で検査を実施。膵液中のKRAS変異の量を測定したところ、ステージ0〜Iの早期膵がんでは、正常膵の人に比べて変異の量が有意に高いことが分かりました。

このKRAS検査の診断性能は、AUC 0.912、特異度100%・感度約81%と非常に良好で、一般的に使われるCEAやCA19-9よりも早期膵がんの判別精度が高いという結果でした。

実用化に向けた課題もあります。膵液の分泌を促すために使った合成ヒトセクレチンは国内未承認であり、薬剤の承認と安定供給、遺伝子検査の費用負担などをどうするかが今後の検討テーマになります。

研究チームは、まずは家族性膵がんなどのハイリスクの人を対象に、胃がん検診にこの検査を組み込む形でのスクリーニングを目指しており、「尾道コホート」など既存の枠組みも活用しながら、5年程度での実用化を視野に入れているとしています。

なお、この結果はすでにAnnals of Surgery誌に論文として報告されています。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202502/587753.html

「膵臓がん治療にブレイクスルーを」

2月の膵臓がん関連トピックスでは、膵臓がんに関連する最新の診断技術や治療法の進展について紹介しました。
ブレイクスルーとは、本質的かつ革新的な解決策で問題を突破すること。
当グループでは、今まさに膵臓がん治療でお悩みの患者さまに本質的かつ革新的な医療技術・サービスをご提案してまいります。
膵臓がんの患者様は気兼ねなくご相談ください。

監修医師

矢﨑 雄一郎医師

免疫療法・研究開発

東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。