この症例のポイント
Case Report ─ 当院で治療を行った子宮平滑筋肉腫の症例
子宮平滑筋肉腫の手術のあとに当院へ相談があった患者さまの経過をご紹介します。術後の抗がん剤は副作用で続けられませんでしたが、樹状細胞ワクチン療法を続けてこられました。子宮平滑筋肉腫の解説は、症例のあとにまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 子宮平滑筋肉腫 |
| ステージ | ⅠB期 |
| 年齢・性別 | 60代後半 女性 |
| 発見の契機 | 筋腫・腹痛で受診し、手術後の組織診断で判明 |
| 実施された手術・薬物療法 | 開腹手術(子宮全摘+両側付属器切除)、抗がん剤(ゲムシタビン+ドセタキセルを1回、パゾパニブを2〜3月。いずれも副作用で中止) |
| 当院での治療 | 樹状細胞ワクチン療法(合計15回) |
20XX年10月、筋腫と腹痛で受診されました。11月に開腹手術(子宮全摘と両側付属器切除)を受け、組織診断で子宮平滑筋肉腫と分かりました。
手術のあと、抗がん剤による治療について説明を受け、12月に当院へ相談がありました。検討の課題は、希少ながんである平滑筋肉腫の手術のあと、再発予防を目的にどのような治療を組み合わせるかでした。
樹状細胞ワクチン療法と並行して、翌年1月から抗がん剤も始まりました。ゲムシタビン(商品名:ジェムザール®)とドセタキセル(商品名:タキソテール®)の併用は、1回目の投与で骨髄抑制がみられ、続けられませんでした。2月からはパゾパニブ(商品名:ヴォトリエント®)を始めましたが、吐き気や倦怠感、皮膚障害に加えて肝障害も出たため、3月で中止となりました。
抗がん剤は副作用のため続けられませんでしたが、樹状細胞ワクチン療法は続け、合計15回行いました。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 20XX年10月 | 筋腫・腹痛で受診。 |
| 同年11月 | 開腹手術(子宮全摘+両側付属器切除)。組織診断で子宮平滑筋肉腫と判明。 |
| 同年12月 | 当院へ相談。 |
| 翌年1月 | 樹状細胞ワクチン療法と並行して、抗がん剤(ゲムシタビン+ドセタキセル)を開始。1回目の投与で骨髄抑制がみられ、続けられず。 |
| 同年2月〜3月 | 抗がん剤(パゾパニブ)を開始。吐き気・倦怠感・皮膚障害・肝障害のため、3月で中止。 |
| その後 | 樹状細胞ワクチン療法を継続(合計15回)。 |
| 診断から10年 | 再発は認められていない。主治医の判断で、経過観察は終了となった。 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、手術のあとに、免疫を活性化することをねらう〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を行いました。並行して始めた抗がん剤は副作用のため続けられませんでしたが、樹状細胞ワクチン療法は続け、合計15回行っています。診断から10年の時点で再発が認められておらず、再発予防に寄与できた可能性はあると考えています。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本症例では、合計15回行いました。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。
本症例では、注射した部位に30〜100mmほどの発赤がみられました。
また、抗がん剤では、ゲムシタビンとドセタキセルの併用で骨髄抑制など、パゾパニブで吐き気、倦怠感、皮膚障害、肝障害、高血圧、下痢などがみられることがあります。本症例でも、骨髄抑制と、吐き気・倦怠感・皮膚障害・肝障害のため、抗がん剤を中止しています。
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。
子宮平滑筋肉腫は、子宮の筋肉の層から発生する悪性腫瘍で、子宮肉腫の一つです。子宮にできる腫瘍の多くは良性の筋腫ですが、平滑筋肉腫は画像だけでは筋腫と見分けにくいことがあります。手術で取り出した組織を調べて、初めて分かることもあります。本症例も、手術で取り出した組織の診断で判明しました。
ⅠB期は、腫瘍が子宮にとどまっている段階(Ⅰ期)のうち、腫瘍が大きいものです。
子宮平滑筋肉腫の治療の中心は手術です。手術でがんを取りきれた場合に、再発を防ぐ目的で抗がん剤を行うかどうかは、一律には決まっていません。
子宮にとどまる平滑筋肉腫を対象に、術後の抗がん剤と経過観察を比べた国際的な臨床試験があります。この試験では、抗がん剤で経過がよくなるという結果は示されませんでした(Hensley ほか, J Clin Oncol 2018)。ただし、この試験は参加者が少ないまま途中で終了しており、結論は限られています。
再発したときや、手術で取りきれないときには、ドキソルビシン、ゲムシタビン+ドセタキセル、パゾパニブなどの薬が用いられます。
当グループでは、主治医のもとで進める標準治療を土台にしています。そのうえで、免疫の働きを後押しする樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる設計を検討することがあります。樹状細胞ワクチン療法は、患者さまご自身の樹状細胞を体外で培養してがんの目印を覚えさせ、体内に戻すことで、キラーT細胞にがんを攻撃させることを目指す治療です。
標準治療に加えた場合の上乗せの効果は、大規模な臨床試験で確立されたものではありません。適するかどうかは、病状と体の状態をみて個別に判断します。

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