投稿日:2022.10.22/更新日:2024.10.22
前回の続きです。
4:アブスコパル反応に関する放射線以外の基礎研究
コロンビア大学の研究者らは、ナノボディーと呼ばれる一種の免疫治療薬を運ばせるために遺伝子操作した細菌を用いて、マウスの個々の腫瘍に注入する実験でアブスコパル効果を確認しています。細菌は、アブスコパル反応を誘導するという点で、放射線の果たす役割に似ていると考えられ、免疫を刺激し、画像診断で検出するにはまだ小さい腫瘍を見つけて攻撃する方法になる可能性があります。他にインフルエンザワクチンも、腫瘍への注入によりアブスコパル効果を誘発するもう一つの治療法となる可能性があります。
5:陽子線治療とアブスコパル効果
アブスコパル反応を誘導するうえで、陽子線治療は、X線、ガンマ線、または中性子といった高エネルギー放射線を用いる従来の放射線治療よりも優れた効果を示す可能性があると考えられています。放射線の種類による違いとして、ガンマ線とX線が体内を通過するときに停止しないのに対して、陽子線では深さを制御できるため、意図せず健康な組織に達してしまう放射線量を減少させる可能性がある、といったことがあげられます。陽子線を使用すると放射線の被ばく量が少なくなり、腫瘍細胞を攻撃する、血液中に循環する免疫細胞への放射線の暴露が減ります。免疫細胞は放射線に非常に敏感で、免疫細胞への高い曝露は免疫細胞を死に至らしめる可能性があり、アブスコパル効果を抑制する可能性があります。
6:さらなる研究と「新しい法則」
アブスコパル反応については、これまでと違う何らかの新しい法則に従う必要があると考えられます。その法則は明らかになってはいませんが、現在、世界中で注目され、精力的に研究されています。
当グループでは、2013年より、このアブスコパル効果を期待した独自の取り組みを行い、経験を積み重ねています。
プレシジョンクリニック名古屋院長
岡崎監修
【監修者】岡崎 能久
大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。
略歴:
2001/3
大阪大学医学部卒業
2001/6
大阪大学医学部附属病院内科研修医
2002/6
大阪厚生年金病院 内科 研修医