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免疫療法

投稿日:2023.5.30/更新日:2026.9.21

アブスコパル効果とは?免疫療法を併用した放射線治療【膵臓専門紙掲載】

この記事でわかること

  • アブスコパル効果とは、放射線を当てた場所以外の病変まで縮小する免疫学的な現象。放射線で壊れたがん細胞の成分を樹状細胞が拾い、全身の免疫が動くことで起こる。
  • 放射線単独ではまれだが、免疫チェックポイント阻害薬や樹状細胞ワクチン療法との併用で起こりやすくなると報告されている。
  • バイスタンダー効果(局所の化学物質による影響)との違い。
  • 当院が放射線を「スイッチ」として免疫療法と組み合わせる考え方(膵臓専門誌『胆と膵』掲載)と、放射線+樹状細胞ワクチン療法で腫瘍マーカーが正常化した直腸がんの実例。

がん治療の世界にはさまざまな治療法がありますが、中でも「アブスコパル効果」が近年、注目を集めています。
本記事では、アブスコパル効果の仕組み、放射線治療との関係、プレシジョンクリニックグループの取り組みについて詳しく解説します。

放射線治療におけるアブスコパル効果とは

放射線治療は、長年にわたってがんの局所治療として用いられてきました。
この治療法において、「アブスコパル効果」という効果が明らかになっています。
アブスコパル効果とは、放射線療法において放射線照射野外の病変の縮小効果が認められる免疫学的現象です。

アブスコパル効果の機序・メカニズム

放射線治療によるアブスコパル効果には、免疫系に深い関係があります。
がん細胞に放射線を照射すると一部のがん細胞が破壊されて死滅しますが、この過程で死んだがん細胞からはたんぱく質やその他の細胞成分が放出され、樹状細胞が察知します。
樹状細胞とは免疫系の中で情報を集め、T細胞などの攻撃型免疫細胞に敵(この場合はがん細胞)の存在を知らせる役割を担っている細胞です。
放射線治療によって放出されたがん細胞の成分が樹状細胞によって捉えられた結果、体内の未治療のがん細胞に対する免疫応答が促されるのです。
これがアブスコパル効果の根本的な仕組みと考えられています。

アブスコパル効果が見られる頻度

アブスコパル効果は、放射線治療を受ける患者様全体の中で見られる頻度は極めて低いとされています。
そもそも放射線治療単独でこの現象が発生することが少ないためです。
しかし、最近の研究では、放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)をはじめとする免疫療法の併用によって、アブスコパル効果の発生頻度およびその効果が高まる可能性があるとされています。

バイスタンダー効果との違い

アブスコパル効果とよく比較されるバイスタンダー効果ですが、2つの違いは作用にあります。

アブスコパル効果 放射線治療から誘導された免疫系による抗腫瘍反応 免疫応答を介して全身に効果を及ぼす
バイスタンダー効果 放射線治療を受けた細胞から放出される化学物質や
シグナル物質による反応
より局所的な影響に限られる場合が多い

アブスコパル効果と免疫チェックポイント阻害剤の関係

アブスコパル効果は医学界ではこれまでも知られている現象でしたが、発生は非常に稀であり、具体的な治療法への応用には至っていませんでした。
しかし、放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせることで、アブスコパル効果が観察される症例が増加しています。
腫瘍の縮小や患者様の生存期間の延長など、従来の方法では得られなかった結果をもたらしています。免疫チェックポイント阻害剤には以下の種類があります。

阻害剤 種類(商品名) 作用
PD-1阻害薬 ニボルマブ(オプジーボ)
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
PD-1とPD-L1間のPD-1側の相互作用を阻害し、
T細胞の活性を抑制するシグナルをブロックし、免疫応答を強化
PD-L1阻害薬 アテゾリズマブ(テセントリク)
デュルバルマブ(イミフィンジ)
アベルマブ(バヴェンシオ)
PD-1とPD-L1間のPDL-1側の相互作用を阻害し、
T細胞を抑制するシグナルをブロックし、免疫応答を強化
CTLA-4阻害薬 イピリムマブ(ヤーボイ)
イジュド(トレメリムマブト)
樹状細胞とT細胞の活性化初期における抑制シグナルを
ブロックし、免疫応答を強化

当院の実例

抗がん剤が使えなくなった直腸がんの局所再発+肺転移に、放射線療法と樹状細胞ワクチン療法を組み合わせ、CEAが正常化し再発部位が消失した症例

直腸がんの手術から2年で局所再発と肺転移が見つかり、抗がん剤は副作用で中止となって「治療の選択肢がない」と言われていた方です。当院では再発部位への放射線療法を〈スイッチ〉として、樹状細胞ワクチン療法を組み合わせました。治療後、腫瘍マーカー(CEA)は正常値に改善し、再発部位は消失、転移リンパ節も改善しました。下肢の痛みが軽くなり、生活の質も改善しています。放射線で壊れたがん細胞の成分を樹状細胞が拾い、全身の免疫が動く。本記事で解説した仕組みを、治療設計として使った一例です。

症例の詳細を見る →

※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。照射野外の病変の変化がすべてアブスコパル効果によるものと確定したわけではなく、同じ結果をお約束するものではありません。

プレシジョンクリニックグループの治療方法

プレシジョンクリニックグループは、がん治療におけるアブスコパル効果の誘導に注力しています。誘導に必要なのは、①がんに抑え込まれた抗腫瘍免疫を活性化すること、②がんが作る免疫抑制を打破すること、そして③その引き金となる局所刺激を与えることです。この3つを一つの治療設計にまとめたものが、当院の SynerTri® です。

当院の治療設計

SynerTri®(シナトリ)は、アブスコパル効果を狙うための治療設計です

アブスコパル効果を「偶然」ではなく「狙って」起こすには、次の3つを同じ時期に揃える必要があります。当院はこの3要素を一人ひとりの状態に合わせて組む独自プロトコルを SynerTri®(学術名 iCCI)と呼んでいます。

① スイッチ 放射線療法。がん細胞を壊し、その成分(抗原)を免疫に見せる引き金

② アクセル 樹状細胞ワクチン療法。抗原を学習した樹状細胞が、がんを攻撃するT細胞を全身で増やす

③ ブレーキ解除 免疫チェックポイント阻害薬。がんがかけた免疫のブレーキを外し、T細胞が照射野の外でも働けるようにする

放射線だけではアブスコパル効果はまれです。アクセルとブレーキ解除を同時に用意して初めて、照射していない病変にも免疫が届く確率が上がります。この考え方は膵臓専門誌『胆と膵』(2023年4月号)で紹介されました。

プレシジョンクリニックグループのこの取り組みは、膵臓専門紙(胆と膵)に取り上げられています。
今後も私たちは、独自の放射線照射に樹状細胞ワクチン療法+免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、膵臓がん(膵がん)に対してアブスコパル効果を狙う取り組みを行っていきます。
胆と膵 2023年4月号(Vol.44 No.4)【特集】あの議論の決着はつきましたか?

よくある質問

アブスコパル効果は、どのくらいの頻度で起こりますか?

放射線治療だけでは非常にまれで、症例報告として扱われる程度です。免疫チェックポイント阻害薬との併用では報告が増えていますが、それでも「起これば幸運」という水準で、確実に起こる治療ではありません。当院では、起こる確率を上げるために放射線と免疫療法を同時期に組み合わせますが、起こらない前提で治療全体を設計します。

放射線は、どの病変に当てればよいのですか?

すべての病変に当てる必要はありません。1か所の転移巣に集中的に照射(定位放射線治療など)するだけで、壊れたがん細胞の成分が免疫に提示されます。当院では、症状の原因になっている病変や、照射しやすい病変を選び、連携する放射線治療施設で照射します(放射線療法の案内)。

保険診療の放射線治療と、当院の免疫療法は同時に受けられますか?

受けられます。放射線治療は連携医療機関(保険診療)で行い、樹状細胞ワクチン療法は当院(自由診療)で行うため、施設を分けることで併用できます。免疫細胞を照射の前後どのタイミングで投与するかが効果に関わるので、放射線の日程が決まる前にご相談ください。免疫チェックポイント阻害薬についてはこちらの解説、治療中に腫瘍が一時的に大きく見える現象については偽増悪の解説もご覧ください。

放射線治療と免疫療法の併用を検討中の方へ
ご自身に合う組み合わせを、当院に相談してみませんか?

アブスコパル効果は、放射線と免疫療法を組み合わせたときに起こりうる現象です。
当院では放射線治療を〈スイッチ〉として、樹状細胞ワクチンや免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせています。
これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

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    【監修者】矢﨑 雄一郎

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

    略歴:

    1996/3

    東海大学医学部卒業

    1996/4

    東海大学附属病院消化器外科勤務

    2000/11

    遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社

    2003/4

    東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング寄附研究部門研究員

    2004/6

    テラ株式会社設立 代表取締役社長

    2010/1

    株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 取締役

    2012/3

    テラ株式会社代表取締役社長 社長執行役員

    2013/3

    テラ株式会社代表取締役社長

    2013/5

    タイタン株式会社 取締役(現任)

    2014/1

    テラファーマ株式会社 代表取締役社長

    2014/2

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2014/8

    テラ少額短期保険株式会社 取締役会長

    2015/12

    株式会社オールジーン 取締役

    2016/6

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2016/10

    テラファーマ株式会社 代表取締役会長

    2017/3

    テラ株式会社代表取締役社長CEO

    2019/4

    医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事

    2019/10

    プレシジョンクリニック神戸院長

    専門分野:
    一般外科・消化器外科

    著書:
    著書『免疫力をあなどるな!』

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