投稿日:2020.3.10/更新日:2024.10.22
この報告では、治療歴のないステージ2・3のトリプルネガティブ乳がん患者さまの術前の治療として、免疫チェックポイント阻害剤+抗がん剤群と、抗がん剤の単独群とに分け、手術を受けて、術後も免疫チェックポイント阻害剤を受ける群と受けない群に分けて解析しています。
内容は「抗がん剤に免疫療法を加える方が、有意に治療成績がいい」という結果でした。ホルモン受容体陽性の乳がんよりも、トリプルネガティブ乳がんの方が、免疫療法の効果が高いことが報告されていますが、一般的にトリプルネガティブ乳がんの方が、遺伝子異常数が多く、免疫療法の効果が高いことが考えられます。
この臨床試験結果:
中間解析で手術で取り出した乳癌組織を調べ、乳癌細胞が残っているかどうか、また再発を抑える割合を比較しています。
乳癌細胞が見つからなかった患者の割合)
免疫チェックポイント阻害剤+抗がん剤群:64.8%
抗がん剤の単独群:51.2%
(P<0.001)
平均15.5ヶ月の観察期間での再発率)
免疫チェックポイント阻害剤+抗がん剤群:7.4%
抗がん剤の単独群:11.8%
免疫チェックポイント阻害剤は、乳癌によって抑え込まれていた、がんと戦うリンパ球を強化する治療であり、また樹状細胞ワクチン療法は、その戦うリンパ球を活性化させ、増やしてあげる治療法です。 この両輪である二つを組み合わせがプレシジョン免疫療法であり、トリプルネガティブ乳がんに対して良い治療選択肢になると考えられます。 Peter Schmid et al.Pembrolizumab for Early Triple-Negative Breast Cancer. N Engl J Med 2020; 382:810-821
プレシジョンクリニック東京院長 矢﨑監修
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。
略歴:
1996/3
東海大学医学部卒業
1996/4
東海大学附属病院消化器外科勤務
2000/11
遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社