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免疫療法

投稿日:2024.4.6/更新日:2026.9.21

膵臓癌に対する新たな取り組み。腫瘍溶解ウイルス治療。

この記事でわかること

  • 腫瘍溶解ウイルスLOAd703は、膵臓がんの第1/2相試験(LOKON001)で抗がん剤と併用されました
  • がん細胞を溶かしながらCD40L・4-1BBLで免疫を活性化する、遺伝子治療と免疫療法の両面を持つ薬です
  • 評価可能な18名中8名(44%)に客観的な奏効がみられ、主な副作用は発熱や倦怠感でした
  • 日本でもG47Δやテロメライシンの研究が進んでおり、免疫細胞治療と組み合わせる設計が考えられます

大変興味深い腫瘍溶解ウイルスを用いた、生体内がん遺伝子治療について報告いたします。

今回は、膵臓癌に対する腫瘍溶解ウイルスLOAd703の治験結果です。

ウイルスを使い、TMZ-CD40L、4-1BBL遺伝子を生体内細胞にデリバリーし、腫瘍細胞を溶解破壊、マクロファージ、NK細胞、T細胞、樹状細胞を絶妙に活性化させる治療です。

日本では、
東京大学医科学研究所:藤堂先生のG47Δ
岡山大学医学部:藤原先生のテロメライシン
が有名です。

私は固形腫瘍には、有望な方法になるのではないかと思っていますし、免疫細胞治療との相性もよいのでは?と考えています。

実際に当グループの脳腫瘍の患者様が、このウイルス治療を現在検討しています。

『LOAd703, an oncolytic virus-based immunostimulatory gene therapy, combined with chemotherapy for unresectable or metastatic pancreatic cancer (LOKON001): results from arm 1 of a non-randomised, single-centre, phase 1/2 study』
Lancet Oncol 2024 Apr

背景:
膵管腺癌は免疫原性が低く、免疫抑制的な腫瘍微小環境を特徴としています。LOAd703は、TMZ-CD40Lと4-1BBLをエンコードする転写因子を持つ腫瘍溶解性アデノウイルスであり、がん細胞を選択的に溶解し、細胞障害性T細胞を活性化し、動物モデルで腫瘍の後退を誘導します。
研究の目的は、LOAd703を化学療法と組み合わせた治療法の安全性と実施可能性を評価することです。

方法:
LOKON001は、非ランダム化の第1/第2相研究で、2つのアームが順次実施されました。ここではアーム1の結果が提示されています。
アーム1では、18歳以上の、既存治療を受けたか未治療の切除不能または転移性膵管腺癌患者が、28日間サイクルで、nab-パクリタキセル125 mg/m2とジェムシタビン1000 mg/m2(最大12サイクル)を静脈内投与し、LOAd703を2週ごとに膵腫瘍または転移巣内投与します。
1回以上のLOAd703投与を受けた患者での安全性と治療後免疫反応が主要エンドポイントで、抗腫瘍活性が二次エンドポイントでした。

結果:
2016年12月2日から2019年10月17日までの間に、23名の患者が適格性評価を受け、22名が登録されました。
1名の患者が同意を撤回、21名の患者(男性13名[62%]、女性8名[38%])が投与量グループに割り当てられました(投与量1の3名、投与量2の4名、投与量3の14名)。
21名の患者が安全性評価可能でした。中央フォローアップ期間は6ヶ月(IQR 4-10)でした。

治療後有害事象は貧血(1237件の事象中96件[8%])、リンパ球減少(86件[7%]の事象)、高血糖症(70件[6%]の事象)、白血球減少(63件[5%]の事象)、高血圧(62件[5%]の事象)、低アルブミン血症(61件[5%]の事象)でした。

LOAd703に帰属する有害事象は発熱(21名の患者中14名[67%])、倦怠感(8名[38%])、寒気(7名[33%])、肝酵素上昇(アラニンアミノトランスフェラーゼ5名[24%]、アルカリフォスファターゼ4名[19%]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ4名[19%])であり、1-2度で、ただし投与量3で一過性の3度のアミノトランスフェラーゼ上昇が発生しました。

T細胞アッセイが実施できた16名の患者のうち15名(94%)で、CD8+エフェクターメモリー細胞とアデノウイルス特異的T細胞の割合がLOAd703注射後に増加しました。
活性評価可能な18名の患者のうち8名(44%、95%CI 25-66)が対象病変に対する客観的な反応を示しました。

解釈:
この革新的化学免疫治療アプローチを拡大するため、LOKON001のArm 2では、LOAd703をナブ-パクリタキセルとジェムシタビンと組み合わせ、さらにアテゾリズマブを加えた治療が進行中です。
この組み合わせは、進行性膵管癌治療における化学免疫療法戦略をさらに高めることを目指しています。

プレシジョンクリニック名古屋院院長 岡崎監修

当院の実例

手術不能の膵体部がんステージ4bで、抗がん剤に樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法を併用し、著明な縮小と腫瘍マーカーの改善を確認した62歳男性

腹部の不快感と食欲低下から膵体部がんと診断され、手術はできない状態でした。抗がん剤(ジェムザール+TS-1)に続いて、免疫の兵隊役である活性化リンパ球療法を先に始め、3か月後に司令官役の樹状細胞ワクチン療法を追加しました。治療後は腹痛が消失して食事も良好となり、膵臓がんの著明な縮小と腫瘍マーカー(DUPAN2)の16,400から391への低下を確認しました。腫瘍溶解ウイルスが目指す「がんを壊しながら免疫を起こす」設計を、いま使える手段で組み立てた一例です。

症例の詳細を見る →

※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

よくある質問

腫瘍溶解ウイルス治療は日本で受けられますか?

日本では脳腫瘍(悪性神経膠腫)に対するG47Δ(デリタクト)が承認されていますが、膵臓がんへの腫瘍溶解ウイルスは治験段階で、当院でも提供していません。治験情報の確認と、その間の治療設計についてはご相談ください。

免疫原性が低い膵臓がんに、免疫療法は効くのですか?

膵臓がんは免疫細胞が入り込みにくい「冷たいがん」で、免疫チェックポイント阻害薬単独では効果が限られます。当院では抗がん剤や放射線でがんを壊して目印を出させ、樹状細胞ワクチン療法で免疫に学習させる順番で治療を設計します。

LOAd703の治験に参加するにはどうすればよいですか?

LOKON001は海外の単施設試験で、日本からの参加はできません。国内の治験は免疫療法のページと当院の相談窓口で最新情報をお伝えしています。治験の適格基準に合わない場合の選択肢も併せてご説明します。

膵臓がんの新しい治療を探している方へ
いま受けられる選択肢を、当院に相談してみませんか?

腫瘍溶解ウイルスは研究段階ですが、免疫を動かすという考え方は当院の治療と同じです。
標準治療に樹状細胞ワクチン療法などを重ねる設計は、今すぐ検討できます。
これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

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    【監修者】岡崎 能久

    大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。

    略歴:

    2001/3

    大阪大学医学部卒業

    2001/6

    大阪大学医学部附属病院内科研修医

    2002/6

    大阪厚生年金病院 内科 研修医

    2003/5

    国立循環器病センター内科レジデント

    2004/5

    大阪大学内科大学院生・研究生

    2005/4

    大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 入学

    2009/3

    大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 終了

    2010/3

    社会医療法人若弘会若草第一病院消化器内科

    2011/4

    川崎病院消化器内科)

    2012/4

    愛染橋病院消化器内科

    2014/4

    近畿大学医学部附属病院(大阪府内)消化器内科

    2016/4

    近畿大学医学部附属病院(奈良県)消化器内科

    2018/1

    大阪府立羽曳野医療センター消化器内科

    2022/4

    医療法人社団プレシジョンメディカルケア プレシジョンクリニック名古屋院長

    専門分野:
    内視鏡診断/治療・研究開発

    認定医・資格等:
    日本内科学会認定医
    日本消化器病学会専門医
    日本医師会認定産業医

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