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TOP コラム 家族性の膵臓がん(膵臓癌)

投稿日:2024.10.28/更新日:2024.10.28

家族性の膵臓がん(膵臓癌)

家族性膵臓癌(Familial Pancreatic Cancer, FPC)は、膵臓癌の一種で、家系内で複数の家族が膵臓癌を発症することが特徴です。膵臓癌は一般的に稀な癌ですが、家族に複数の膵臓癌患者がいる場合、遺伝的要因が関与している可能性が高まります。以下に、家族性膵臓癌の特徴やリスク、原因、診断、管理について詳しく説明します。

1. 家族性膵臓癌の定義とリスク

家族性膵臓癌は、家系内で2人以上の1親等親族(両親、兄弟姉妹、子供)が膵臓癌を発症している場合に診断されることが多いです。膵臓癌患者の全体の約5-10%が家族性膵臓癌に該当します。膵臓癌のリスクは、家族に1人でも膵臓癌患者がいると約2~3倍、2人以上いると6~10倍に上昇するとされています。

2. 遺伝子の関与

家族性膵臓癌の背景には、いくつかの遺伝子変異が関与している可能性があります。膵臓癌に関連する遺伝子には以下のようなものがあります:

  • BRCA1/BRCA2: 乳癌や卵巣癌のリスクを高めることで知られる遺伝子ですが、膵臓癌のリスクも上昇します。
  • PALB2: BRCA2と相互作用し、DNA修復に関与する遺伝子で、膵臓癌のリスクに影響します。
  • CDKN2A: メラノーマ(皮膚癌)のリスクを高める遺伝子ですが、膵臓癌リスクにも関与します。
  • STK11/LKB1: Peutz-Jeghers症候群に関連し、膵臓癌のリスクが増加します。
  • MLH1、MSH2、MSH6: 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)に関連する遺伝子で、膵臓癌のリスクも高めます。

これらの遺伝子変異のうち、BRCA2やPALB2は特に家族性膵臓癌で多く見られます。

3. 診断とスクリーニング

家族性膵臓癌の診断には、まず家族歴の確認が重要です。家族に複数の膵臓癌患者がいる場合、遺伝子カウンセリングや遺伝子検査が推奨されます。また、膵臓癌の早期発見が非常に難しいため、リスクの高い家族性膵臓癌の患者では、定期的なスクリーニングが推奨されます。スクリーニングには以下の方法が含まれます:

  • エンドスコピック超音波検査(EUS): 膵臓の詳細な画像を得るために、内視鏡と超音波を組み合わせた検査。
  • MRI: 膵管や膵臓全体の構造を調べるために使用。
  • 血液検査: CA19-9などの腫瘍マーカーを測定するが、早期段階ではあまり有効でないことが多い。

4. 治療と管理

家族性膵臓癌の治療は、他の膵臓癌と同様に、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法などが使用されますが、早期発見が難しいため、治療はしばしば進行した段階で開始されます。高リスクの家族には、早期発見のための定期的なスクリーニングが推奨され、癌が見つかった場合、早急に治療計画が立てられます。

5. 予防策と今後の研究

膵臓癌の予防に関しては、生活習慣の改善が重要です。具体的には以下の点が推奨されます:

  • 禁煙: 喫煙は膵臓癌のリスクを大幅に高めます。
  • 食事と運動: 高脂肪・高カロリーの食事を避け、健康的な体重を維持することが重要です。
  • 遺伝子検査: 家族歴がある場合、早期に遺伝子検査を受けることで、リスクを把握し、予防的措置を講じることができます。

さらに、膵臓癌に関する遺伝的要因の解明や、新しい診断方法、治療法の開発に向けた研究が進んでおり、今後の進展が期待されています。

家族性膵臓癌は、膵臓癌のリスクが高いことから、早期のスクリーニングや遺伝子検査、そして適切な予防策を取ることが重要です。

 

【監修者】矢﨑 雄一郎

東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

略歴:

1996/3

東海大学医学部卒業

1996/4

東海大学附属病院消化器外科勤務

2000/11

遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社

2003/4

東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング寄附研究部門研究員

2004/6

テラ株式会社設立 代表取締役社長

2010/1

株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 取締役

2012/3

テラ株式会社代表取締役社長 社長執行役員

2013/3

テラ株式会社代表取締役社長

2013/5

タイタン株式会社 取締役(現任)

2014/1

テラファーマ株式会社 代表取締役社長

2014/2

株式会社オールジーン 代表取締役社長

2014/8

テラ少額短期保険株式会社 取締役会長

2015/12

株式会社オールジーン 取締役

2016/6

株式会社オールジーン 代表取締役社長

2016/10

テラファーマ株式会社 代表取締役会長

2017/3

テラ株式会社代表取締役社長CEO

2019/4

医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事

2019/10

プレシジョンクリニック神戸院長

専門分野:
一般外科・消化器外科

著書:
著書『免疫力をあなどるな!』