投稿日:2024.10.26/更新日:2024.10.31
ルマケラス(Lumakras)は、アムジェン(Amgen)によって開発された、KRAS G12C変異に対する経口治療薬です。KRAS遺伝子は、癌の発生や進行に関与する主要な遺伝子の一つであり、その変異は特に難治性のがんに関係しています。KRAS G12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)など特定のがんで多く見られる変異ですが、膵臓がんにおいても一部の患者にこの変異が認められます。
膵臓がんは非常に治療が難しいがんであり、KRAS遺伝子の変異が90%以上の患者に見られることが知られています。特に膵臓がんにおいては、KRASのG12DやG12V変異が一般的ですが、一部の患者にはKRAS G12C変異が存在します。このKRAS G12C変異がある患者に対して、ルマケラスのような治療薬が有効である可能性が注目されています。
ルマケラスはKRAS G12Cという特定の変異を標的とし、変異したKRASタンパク質の活性を阻害することによってがん細胞の増殖を抑える薬です。KRAS G12C変異は、タンパク質が「スイッチオン」の状態で持続することで細胞がん化の原因となるため、ルマケラスはこの変異タンパク質を「スイッチオフ」の状態にし、腫瘍の進行を抑える役割を果たします。
膵臓がんの治療は非常に困難で、手術や化学療法に加えて、標的治療や免疫療法が模索されていますが、KRAS変異が原因で治療の選択肢が限られることが多いです。膵臓がん患者の中でKRAS G12C変異を持つ人は少数派ですが、この変異が確認された場合、ルマケラスが治療オプションとして考えられる可能性があります。
現在、ルマケラスは主にKRAS G12C変異を持つ非小細胞肺がんの患者に対して承認されていますが、膵臓がんなど他のがん種に対しても臨床試験が進行しています。膵臓がんにおけるKRAS G12C変異に対する治療法の一環として、ルマケラスがどのような効果を発揮するかについては、今後の研究結果次第で明らかになるでしょう。
要約すると、ルマケラスはKRAS G12C変異に特異的に作用する画期的な薬剤であり、膵臓がんの治療においてもこの変異を持つ患者に対する新たな治療オプションとして期待されていますが、膵臓がんでの臨床使用にはさらに研究が必要です。