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膵臓がん

投稿日:2024.10.31/更新日:2026.9.21

冷たいがんといわれる膵臓がん。その冷たいがんとは?

この記事でわかること

  • 膵臓がんが「冷たいがん(Cold Tumor)」と呼ばれる理由:免疫細胞の浸潤が少なく、抑制性の環境で、PD-L1発現が低い
  • 腫瘍随伴線維芽細胞(CAF)が作る線維の壁が、免疫細胞と薬の到達を妨げていること
  • 腫瘍微小環境のリモデリング、複合免疫療法、腫瘍ワクチン、免疫賦活剤という4つの治療アプローチ
  • 当院が冷たいがんのために設計した複合免疫療法(SynerTri)の考え方

膵臓癌(膵癌)は、「Cold Tumor」(冷たい腫瘍)と呼ばれる代表的ながんの一つです。このCold Tumorとは、腫瘍が免疫系による攻撃を受けにくい状態である腫瘍を指します。膵臓癌を含むCold Tumorは、主に以下のような特徴を持っています:

  1. 低い免疫細胞の浸潤
    Cold Tumorでは、がん組織内に免疫細胞(特にT細胞)の浸潤が少ないため、腫瘍に対する免疫反応が抑制されています。膵臓癌の微小環境では、免疫細胞ががん細胞を攻撃する機会が少なく、また、腫瘍自体も免疫回避のメカニズムを備えているため、免疫療法に対して反応しにくい傾向があります。

  2. 免疫抑制性の微小環境
    膵臓癌の腫瘍微小環境には、免疫抑制性の細胞(制御性T細胞、M2型マクロファージなど)が多く存在し、免疫反応を抑制することでがんの増殖が促進されます。また、腫瘍随伴線維芽細胞(CAF)が豊富で、腫瘍を硬くする繊維性の壁を形成し、免疫細胞の浸潤を妨げる役割も果たしています。

  3. PD-L1発現の低さ
    Cold Tumorでは、PD-L1の発現が低いため、一般的な免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/PD-L1阻害薬)の効果が限られることが多いです。このため、膵臓癌に対しては免疫チェックポイント阻害薬単独での治療はあまり有効でない場合が多いです。

Cold Tumorへの治療アプローチ

膵臓癌のようなCold Tumorに対しては、単純な免疫療法だけでなく、腫瘍微小環境を改善して免疫細胞の浸潤を促す治療アプローチが重要です。具体的には、以下のような治療戦略が研究されています:

  1. 腫瘍微小環境のリモデリング
    腫瘍随伴線維芽細胞や免疫抑制性の細胞を標的とし、腫瘍微小環境を改善して免疫細胞の浸潤を促すことが検討されています。例えば、低用量の放射線療法や分子標的薬を併用し、腫瘍微小環境を変化させるアプローチが研究されています。

  2. 複合免疫療法
    免疫チェックポイント阻害薬と他の免疫療法を組み合わせることや、抗癌剤や放射線療法を組み合わせることで、免疫反応を強化する方法が検討されています。膵臓癌では、免疫チェックポイント阻害薬に加えて、樹状細胞ワクチンやサイトカイン療法のような免疫活性化アプローチが注目されています。

  3. 腫瘍ワクチン
    樹状細胞ワクチンやがんペプチドワクチンなどの腫瘍ワクチンは、免疫系が腫瘍細胞を認識しやすくすることで、膵臓癌に対する免疫反応を誘導する手段として研究されています。

  4. 免疫賦活剤
    免疫反応を抑制している腫瘍微小環境を改善するために、STINGアゴニストなどの免疫賦活剤を使用して免疫細胞の活性化を促進する方法も試みられています。

免疫療法が効きにくいCold Tumorの代表である膵臓癌は治療が難しいがんとして知られていますが、近年の研究により、Cold Tumorに対する新しいアプローチが開発されています。特に、腫瘍微小環境を制御する複合的な免疫療法を通じて、膵臓癌患者に対する新しい治療戦略が取り組まれいます。
プレシジョンクリニックグループの革新的複合免疫療法(The iCCI: innovative combination cancer immunotherapy)は、このCold Tumorと言われる膵臓癌と戦うために開発されたCold tumorのための免疫療法になります。

当院の実例

腹膜播種のため手術で切除できなかった膵頭部がんステージ4に、抗がん剤とほぼ同時に樹状細胞ワクチン療法を開始し、腫瘍マーカーの著明な改善と約4年の長期生存が得られた74歳女性

血糖値の異常から膵頭部がんと診断され、手術を行ったものの腹膜播種を認めて切除せず閉腹となりました。抗がん剤(ジェムザール、のちにジェムザール+アブラキサン)と並行して樹状細胞ワクチン療法を開始したところ、腫瘍マーカー(CA19-9)は1,214から178へ改善し、約4年の長期生存が得られています。抗がん剤でがんを壊して目印を出させ、樹状細胞で免疫に学習させるという「冷たいがんを温める」順番を、診断直後から組んだ一例です。

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※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

よくある質問

膵臓がんに免疫チェックポイント阻害薬は使えますか?

保険診療では、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)などの限られた条件でのみ使えます。膵臓がんの多くはPD-L1発現が低く単独では効きにくいため、当院では放射線や抗がん剤で腫瘍の環境を変えてから、免疫チェックポイント阻害薬や樹状細胞ワクチン療法を組み合わせます。

腫瘍微小環境は検査で分かりますか?

分かります。当院では腫瘍組織の免疫染色で、免疫細胞の浸潤やCAF、免疫抑制細胞の分布を評価する腫瘍微小環境(TME)検査を行い、その結果をもとに「壁を崩す治療」と「免疫を起こす治療」の順番を決めます。

冷たいがんを温めるには、どのくらいの期間がかかりますか?

樹状細胞ワクチン療法は1クール(7回・約4か月)を単位とし、免疫の反応は数か月かけて現れます。腫瘍マーカーや画像の変化を見ながら、抗がん剤や放射線の組み合わせを段階的に調整します。

膵臓がんに免疫療法は効かないと聞いた方へ
「冷たいがん」を温める治療設計を、当院に相談してみませんか?

免疫細胞が入り込めない膵臓がんには、環境を変える工夫が要ります。
放射線や抗がん剤をスイッチに、樹状細胞ワクチン療法でT細胞を増やす設計をしています。
これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

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    【監修者】矢﨑 雄一郎

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

    略歴:

    1996/3

    東海大学医学部卒業

    1996/4

    東海大学附属病院消化器外科勤務

    2000/11

    遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社

    2003/4

    東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング寄附研究部門研究員

    2004/6

    テラ株式会社設立 代表取締役社長

    2010/1

    株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 取締役

    2012/3

    テラ株式会社代表取締役社長 社長執行役員

    2013/3

    テラ株式会社代表取締役社長

    2013/5

    タイタン株式会社 取締役(現任)

    2014/1

    テラファーマ株式会社 代表取締役社長

    2014/2

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2014/8

    テラ少額短期保険株式会社 取締役会長

    2015/12

    株式会社オールジーン 取締役

    2016/6

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2016/10

    テラファーマ株式会社 代表取締役会長

    2017/3

    テラ株式会社代表取締役社長CEO

    2019/4

    医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事

    2019/10

    プレシジョンクリニック神戸院長

    専門分野:
    一般外科・消化器外科

    著書:
    著書『免疫力をあなどるな!』

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