無料医療相談

FREE CONSULTATION

TOP › コラム › テーマ › 遺伝子・検査 › 膵臓がん(膵臓癌)は、なぜKRAS(ケーラス)タンパクの遺伝子変異が多いのか?

遺伝子・検査

投稿日:2024.10.31/更新日:2026.10.8

膵臓がん(膵臓癌)は、なぜKRAS(ケーラス)タンパクの遺伝子変異が多いのか?

この記事でわかること

  • 膵臓がん(膵管腺がん)の90%以上にKRAS変異がある理由:KRASの役割、膵臓の環境、変異の早期発生、選択圧。
  • KRAS変異が治療抵抗性や進行の速さに関わるとされる背景。
  • KRAS変異が分かったあと、治療はどう変わるのか(変異の種類、承認薬の現状、パネル検査)。
  • 当院でKRAS変異を確認し、分子標的薬と免疫療法を組み合わせた膵臓がんステージⅣの実例。

膵臓がんにおけるKRAS遺伝子変異の高頻度は、膵臓がんの特性と発がんメカニズムに関わるいくつかの要因が関係しています。

膵臓がんにKRAS変異が多い4つの理由

膵管腺がんの90%以上でKRAS変異が見つかる背景は、ひとつの原因ではなく、KRASの働き・膵臓という臓器の環境・がん細胞の淘汰・変異の起こる時期の4つが重なった結果と考えられています。順に見ていきます。

理由1|KRASは細胞の増殖スイッチである

KRAS遺伝子は、細胞の増殖や分化、運動、アポトーシス(細胞のプログラムされた死)などのシグナル伝達に重要な役割を果たしています。KRASが活性化されると、細胞は成長と分裂を促進されます。正常な場合、KRASは制御されて動作しますが、変異が生じるとこのシグナルが常に「オン」の状態になり、細胞の無制御な増殖を引き起こし、がんの発生に繋がります。

理由2|膵臓は変異が蓄積しやすい臓器である

膵臓がん(特に膵管腺癌)は、非常に高い頻度でKRAS遺伝子の変異が見られます。研究によると、膵管腺癌患者の90%以上でKRAS変異が確認されています。膵臓は化学物質や食事中の毒素にさらされやすい臓器であり、これらの影響でKRASのようながん遺伝子に変異が蓄積しやすいとされています。

理由3|KRAS変異細胞が生き残りやすい(選択的プレッシャー)

膵臓の腫瘍細胞は、KRAS変異がん細胞の成長を促進するような選択的な進化的圧力にさらされています。つまり、KRAS変異を持つ細胞が他の正常細胞よりも生き残りやすく、増殖しやすい環境が膵臓がんの発生に寄与しています。

理由4|KRAS変異はがんの最初期に起こる

KRAS変異は、膵臓がんの非常に初期の段階で発生し、病気の進行に大きく関与しています。この変異はがんの始まりから存在するため、膵臓がんの進展に重要な役割を果たしています。KRAS変異は膵臓がんの発がん経路の一部であり、他のがん抑制遺伝子(TP53やSMAD4など)の異常と共に膵臓がんの発生を促進します。

膵臓がんにおけるKRAS変異は、その高い治療抵抗性や進行の早さに関与しているとされており、治療法の開発が難しい理由の一つでもあります。

KRAS変異が分かったら、治療はどう変わるのか

KRAS変異は「膵臓がんの9割にある」だけでは治療に結びつきません。治療に関わるのは、変異の種類です。膵臓がんで最も多いのはG12D(約4割)、次いでG12V、G12Rで、肺がんに多いG12Cは膵臓がんでは1〜2%にすぎません。日本で承認されているKRAS阻害薬はG12C向け(肺がん・大腸がん)に限られ、膵臓がんのG12Dを狙う薬は臨床試験の段階です。KRAS変異を種類を問わず広く狙うダラクソンラシブは2026年8月に米国FDAが承認しましたが、日本では未承認です(ダラクソンラシブの解説)。

したがって現時点で現実的なのは、①がん遺伝子パネル検査で変異の種類と、他に治療につながる変異(BRCA、MSI-Hなど)がないかを確かめること、②標準治療の抗がん剤を土台に、免疫療法を組み合わせて免疫の側からがんを追い込むこと、③新薬の承認や治験の情報を追い続けることの3つです。当院ではKRAS変異を標的にした樹状細胞ワクチン療法に取り組んでおり、RAS変異がん専門外来で検査結果をもとに選択肢をご説明しています(最新の動向はKRAS変異がん最新情報)。

当院の実例

手術ができない膵体部がんステージⅣbで、抗がん剤に免疫療法を併用し、原発巣と多発肝転移の縮小を確認した52歳男性

糖尿病で通院中に肝胆道系の数値が上がり、精査で膵体部がんと多発肺転移・肝転移・右副腎転移が見つかった方です。手術はできない状態でした。抗がん剤(ゲムシタビン〔商品名:ジェムザール〕+S-1〔商品名:TS-1〕)を始め、活性化リンパ球療法を併用し、3か月後に樹状細胞ワクチン療法を追加しました。その後の検査で、膵体部の原発巣と多発肝転移の縮小を確認しています。KRASを直接狙う薬が国内でまだ使えない現在、当院が膵臓がんに対して実際に行っている組み立ての一例です。

症例の詳細を見る →

※この症例ではKRASを標的とする薬は使用していません。KRAS変異の有無は症例の記録に含まれていません。個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

よくある質問

KRAS変異があると、予後は悪いのですか?

膵臓がんの9割以上にKRAS変異があるため、「変異の有無」で予後が分かれるわけではありません。むしろKRAS変異のない約1割の膵臓がんは、BRAF変異やNRG1融合遺伝子など別の標的を持つことがあり、対応する薬が使える場合があります。変異の種類(G12D、G12V、G12Rなど)による差は研究段階で、現時点で治療方針を大きく変える根拠にはなっていません。

KRAS変異は遺伝しますか?家族も検査を受けるべきですか?

膵臓がんのKRAS変異は、がん細胞の中だけで起きた体細胞変異で、子どもに遺伝しません。家族に関わるのは、BRCA1/2などの生殖細胞系列の変異(遺伝性)で、これはパネル検査や遺伝学的検査で分かります。近親者に膵臓がんが2人以上いる場合は、家族性膵がんとして定期検査を検討してください(膵臓がんの検診・早期発見)。

KRAS変異の膵臓がんに、免疫療法は効きますか?

膵臓がんは免疫細胞が入り込みにくい「冷たい腫瘍」で、免疫チェックポイント阻害薬の単独では効果が限られます。そのため当院では、がんを攻撃するT細胞を増やす樹状細胞ワクチン療法を軸に、抗がん剤・放射線・免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせて免疫が働く環境を作ります。標準治療との位置づけは膵臓癌の標準治療をご覧ください。

KRAS変異があると言われた膵臓がんの方へ
変異に合わせた治療を、当院に相談してみませんか?

膵臓がんの9割にKRAS変異があり、変異の種類で検討できる治療が変わります。
当院ではKRAS変異を標的にした樹状細胞ワクチン療法に取り組んでいます。
遺伝子検査の結果と治療歴をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

お電話でご相談

お近くの院をお選びください(平日10:00〜18:00/休診日はホームページをご確認ください)

または、フォームでご相談

フォームで相談する▼入力は2項目のみ/24時間受付







    お電話・メールのどちらか一方で結構です





    【監修者】矢﨑 雄一郎

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

    略歴:

    1996/3

    東海大学医学部卒業

    1996/4

    東海大学附属病院消化器外科勤務

    2000/11

    遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社

    2003/4

    東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング寄附研究部門研究員

    2004/6

    テラ株式会社設立 代表取締役社長

    2010/1

    株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 取締役

    2012/3

    テラ株式会社代表取締役社長 社長執行役員

    2013/3

    テラ株式会社代表取締役社長

    2013/5

    タイタン株式会社 取締役(現任)

    2014/1

    テラファーマ株式会社 代表取締役社長

    2014/2

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2014/8

    テラ少額短期保険株式会社 取締役会長

    2015/12

    株式会社オールジーン 取締役

    2016/6

    株式会社オールジーン 代表取締役社長

    2016/10

    テラファーマ株式会社 代表取締役会長

    2017/3

    テラ株式会社代表取締役社長CEO

    2019/4

    医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事

    2019/10

    プレシジョンクリニック神戸院長

    専門分野:
    一般外科・消化器外科

    著書:
    著書『免疫力をあなどるな!』

    CATEGORY

    カテゴリー

    CATEGORY

    関連記事