NALIRIFOX療法の概要
「NALIRIFOX」という名称は、含まれる薬剤の頭文字に由来し、次の4種の薬剤が含まれます。
- NALIRI: Nanoliposomal irinotecan(リポソーマルイリノテカン, 商品名: ONIVYDE) – 腫瘍部位への効率的な薬剤送達が期待される新しい製剤。
- F: 5-Fluorouracil(5-FU) – DNA合成を阻害する広く使用されている抗がん剤。
- L: Leucovorin(ロイコボリン) – 5-FUの効果を増強する補助剤。
- OX: Oxaliplatin(オキサリプラチン) – DNA複製を阻害する白金製剤。
NAPOLI 3試験の詳細
NAPOLI 3試験(NCT04083235)では、未治療の転移性膵管腺がん患者を対象に、NALIRIFOX療法と標準治療(nab-パクリタキセル+ゲムシタビン併用療法)の有効性と安全性を比較しました。
試験デザインは、28日を1サイクルとして以下のスケジュールで実施されました。
- NALIRIFOX群: 1日目と15日目に、リポソーマルイリノテカン50mg/m²、オキサリプラチン60mg/m²、ロイコボリン400mg/m²、フルオロウラシル2400mg/m²を投与。
- 標準治療群: 1日目、8日目、15日目に、nab-パクリタキセル125mg/m²とゲムシタビン1000mg/m²を投与。
試験結果と安全性
試験の主要評価項目であるITT集団における全生存期間(OS)の中央値は以下の通りでした。
- NALIRIFOX群: 11.1ヶ月(95%信頼区間: 10.0-12.1ヶ月)
- 標準治療群: 9.2ヶ月(95%信頼区間: 8.3-10.6ヶ月)
NALIRIFOX群では、死亡リスクが17%減少(HR: 0.83, 95%信頼区間: 0.70-0.99, P=0.036)しました。一方、安全性については次の結果が示されました。
- グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE): NALIRIFOX群87%、標準治療群86%
- 治療関連有害事象による死亡率: 両群とも2%
まとめ
NAPOLI 3試験の結果、NALIRIFOX療法は未治療の転移性膵管腺がんにおける新たな治療選択肢として有望であることが示されました。今後さらに多くの研究が進むことで、膵臓がん治療における有用性がより明確になることが期待されます。