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TOP コラム 2024年12月の膵臓がん治療関連トピックス

投稿日:2025.1.4/更新日:2025.1.20

2024年12月の膵臓がん治療関連トピックス

 

2024年12月の膵臓がん関連トピックス

1. 膵臓がんの検査のクライフ、米国で尿データ収集のため10億円調達

尿で膵臓がんを発見する検査技術を開発するバイオベンチャーのCraif(クライフ)は、元サッカー日本代表の本田圭佑氏が設立したファンド「X&KSK」を引受先とする第三者割当増資で10億円を調達しました。
同社は、2025年から米国で膵臓がん患者の尿データを収集し、がんの早期発見に向けた研究開発を加速させていきます。
クライフは、米カリフォルニア州アーバインの研究施設にラボを設立し、米国での研究活動を本格化させました。調達した資金は、米国でのデータ収集のほか、研究人材の採用や研究体制の強化に充てられる予定です。
同社の尿検査技術は、がん細胞が放出する特定の物質を検出することで膵臓がんを早期に発見できると期待されています。膵臓がんは診断が難しく、発見時には進行しているケースが多いため、尿検査による早期診断技術の実用化が注目されています。
クライフは製薬会社との連携も視野に入れ、がん検査技術の実用化に向けた取り組みを進めています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC231PP0T21C24A2000000/

2. 膵臓がんのAI早期発見スクリーニング技術が注目

浙江省の「湖畔実験室」が開発したAI技術が、膵臓がんを含む複数のがんの早期発見において注目を集めています。
同実験室は、世界トップレベルの医療機関と連携し、CT画像からがん病変を検出するAIスクリーニング技術を開発。この技術により、発見が難しい膵臓がんの早期スクリーニングが可能になったと報告されています。
この研究は、世界的な学術誌「ネイチャー・メディシン」でも高く評価され、AIを活用した医療画像スクリーニングの「黄金時代」を予見する内容として紹介されました。特に膵臓がんは早期発見が困難で、診断時には進行しているケースが多いため、この技術の実用化は患者の予後改善につながる可能性があります。
AIスクリーニング技術は、スタンフォード大学の「AI Index Report 2024」にも中国から唯一選出され、今後の医療AIの重要分野として世界的な注目を浴びています。
http://j.people.com.cn/n3/2024/1223/c95952-20257367.html

3. 膵臓がん治療におけるFAP標的放射性医薬品の新展開

膵臓がんは進行が早く、発見が遅れがちなため、依然として予後が厳しいがんの一つです。従来の化学療法に加え、近年では線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とした新しい放射性医薬品が注目を集めています。
Clarity Pharmaceuticalsは、FAPをターゲットにした放射性医薬品「SAR-bisFAP」を開発し、膵臓がんを含む多くの固形がんに対する診断・治療の新たな可能性を開きました。FAPは腫瘍の微小環境に存在するがん関連線維芽細胞(CAF)に多く発現し、正常な組織にはほとんど存在しないため、FAPを標的とすることで腫瘍のストローマ(支持組織)を効率的に破壊し、がん細胞の成長や転移を抑えることが期待されています。
このアプローチは、腫瘍細胞自体ではなく腫瘍のストローマを標的とする点が特徴で、膵臓がんのようなストローマが多いがんに有効と考えられています。前臨床試験では、SAR-bisFAPの優れた薬物動態と標的能力が確認されていますが、今後の臨床試験での有効性確認が重要です。
FAP標的放射性医薬品は、膵臓がんの画像診断の精度向上や、治療効果の最大化につながる可能性があり、新たな個別化医療の一環として期待されています。

4. Actuate社、膵臓がん治療薬「elraglusib」で画期的成果を報告

バイオ医薬品企業Actuate Therapeutics, Inc.は、転移性膵臓がんに対するelraglusibと化学療法の併用療法で生存率向上を示す第2相試験の結果を発表しました。この試験では、従来のgemcitabine/nab-paclitaxel (GnP)単独療法に比べ、1年生存率が43.6%に倍増し、死亡リスクも37%減少しました。また、全生存期間中央値は9.3か月と、GnP単独群の7.2か月を上回りました。
elraglusibは、腫瘍増殖の抑制、化学療法の効果増強、抗腫瘍免疫の活性化を促す作用機序を持ちます。Actuate社のCEOであるDaniel Schmitt氏は、この併用療法が限られた治療選択肢しかない患者の転帰改善に大きな可能性をもたらすと述べています。同社は2025年上半期にFDAと協議を予定し、第3相試験に向けた準備を進めています。
膵臓がんは、診断が難しく進行が早いため、米国での5年生存率は5%未満と依然として厳しい状況です。しかし、Actuate社の試験結果は、転移性膵臓がん患者に新たな希望を提供する可能性があります。同社は引き続き臨床試験を進め、さらなるデータが2025年に発表される見込みです。

5. 膵管腺がん術後療法におけるゲムシタビン+カペシタビン併用療法、長期追跡で有意な生存期間延長

2024年12月、Journal of Clinical Oncologyにて、膵管腺がん患者に対するゲムシタビン+カペシタビン併用療法の長期追跡結果が報告されました。この研究はESPAC4試験(第3相試験)として、University of LiverpoolのDaniel H. Palmer氏らが実施したものです。

参照元:
Pancreatic Adenocarcinoma: Long-Term Outcomes of Adjuvant Therapy in the ESPAC4 Phase III Trial(Journal of Clinical Oncology 2024 Doi: 10.1200/JCO.24.01118)試験は、手術後の膵管腺がん患者732人を対象に、ゲムシタビン単剤群(367人)とゲムシタビン+カペシタビン併用群(365人)に分け、全生存期間(OS)を比較しました。追跡期間中央値104ヵ月時点の結果では、全体のOS中央値は29.5ヵ月、併用群では31.6ヵ月で、単剤群の28.4ヵ月を上回りました(HR:0.83, P=0.031)。

特に、R0切除(がんを完全切除)した患者群でのOSは、単剤群の28.4ヵ月に対し、併用群では49.9ヵ月と大幅に延長し(HR:0.63, P=0.002)、リンパ節転移陰性の患者でも5年生存率が単剤群の**53%に対して併用群で59%**と高い結果を示しました。
研究者らは「併用療法はmFOLFIRINOX療法が適用できない患者において、標準治療としての可能性が示された。特にR0切除例やリンパ節転移陰性例で効果が高い」と結論付けています。

6. ノボキュア、膵がんに対する腫瘍治療電場療法(TTフィールド)の第3相臨床試験PANOVA-3のトップライン結果を発表

ノボキュアは、膵臓がんに対する腫瘍治療電場療法(TTフィールド)の第3相臨床試験PANOVA-3の結果を発表し、ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルと併用したTTフィールドが切除不能な局所進行膵がん患者の全生存期間を統計的に有意に改善したことが示されました。
PANOVA-3試験では、治療群の全生存期間中央値(mOS)が16.20カ月に達し、対照群の14.16カ月と比較して2.0カ月の改善が見られました。TTフィールド療法は良好な忍容性を示し、安全性プロファイルも過去の臨床試験と一致していました。
この成果を受け、ノボキュアは膵臓がんに対するTTフィールド療法の承認申請を予定しています。PANOVA-3の結果は今後、医学学会で発表される予定です。また、ノボキュアは第2相臨床試験PANOVA-4を進行中で、転移性膵がんの治療におけるTTフィールド療法の有効性を検証しています。

7. 住友重工と藤田医科大、膵臓がんをはじめとする難治性がんに対する次世代放射線治療技術を共同開発

住友重機械工業は藤田医科大学などと共同で、次世代のがん粒子線治療技術「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の開発を進めると発表しました。BNCTは、がん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、中性子とホウ素の核反応でがん細胞を破壊する治療法です。従来の放射線治療と異なり、1回の照射で治療が完了するという特徴を持ちます。
今回の共同開発では、膵臓がんなどの難治性がんに対する治療法の実用化を目指しています。住友重工は、より強力な中性子線を生み出す新型サイクロトロンを開発し、大阪の製薬会社アトランセンファーマは、BNCTに必要なホウ素の効果を飛躍的に高める薬剤を提供します。
藤田医科大学のキャンパスには、2028年6月の稼働を目指して中性子を発生させる加速器施設が建設される予定です。藤田学園の星長清隆理事長は「BNCTは日本が世界をリードする技術であり、特に膵臓がんのような治療が困難ながんに対する新たな希望になる」とコメントしています。
BNCTはすでに一部のがん治療で国内で保険適用されており、今後の臨床試験での有効性確認が期待されています。この技術は、膵臓がんをはじめとした難治性がんの治療において大きな前進となる可能性があります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC092LX0Z00C24A7000000/

8. GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)と膵臓がんリスクに関する重要な新データ

新たな研究により、GLP-1 RAが膵臓がんリスクを高めることはないというエビデンスが強化されました。むしろ、2型糖尿病患者を対象とした大規模な電子健康記録(EHR)分析では、GLP-1 RAを使用した患者は、他の抗糖尿病薬を使用した患者よりも膵臓がんリスクが有意に低いことが判明しました。
研究は、2005~2020年に初めて抗糖尿病薬を処方された495万例の患者データを分析。膵臓がんの既往歴がない患者のうち、24万5,532例がGLP-1 RAを処方されていました。患者の年齢、生活習慣、病歴などを考慮し、他の糖尿病薬(インスリン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など)と比較した結果、GLP-1 RA群は膵臓がんのリスクが一貫して低いことが確認されました。
GLP-1 RAを使用した患者は、インスリン使用群と比較して膵臓がんリスクが53%減少(HR:0.47)。また、DPP-4阻害薬群(HR:0.80)、SGLT2阻害薬群(HR:0.78)など、他の薬剤使用群よりも膵臓がんリスクが低い傾向がありました。
この結果は、肥満患者や過体重患者においても同様の傾向が見られ、イスラエルで行われた大規模コホート研究とも一致しています。GLP-1 RAは使用開始から7年間にわたり膵臓がんリスクを増加させるエビデンスは見られていません。さらに、別の160万例超の研究では、GLP-1 RAが肥満関連がんリスクを低下させることが確認されています。
これにより、GLP-1 RAの安全性に関する懸念が和らぎ、糖尿病治療における重要な選択肢としての位置づけが強化されました。
https://www.medscape.com/viewarticle/reassuring-data-glp-1-ras-and-pancreatic-cancer-risk-2024a1000kuw

9. 膵臓がんリスクと食用油の選び方

膵臓がんのリスクを下げるためには、普段使う調理油に注意が必要です。がん専門医の佐藤典宏教授(九州大学医学部卒、帝京大学福岡医療技術学部教授)によると、特に注意すべきは飽和脂肪酸が多い油です。飽和脂肪酸はバター、ラード、豚バラ肉、牛カルビ、鶏皮などに多く含まれ、これらを多く摂取するとがんリスクが高まります。
一方で、オリーブオイルは膵臓がんのリスクを71%低下させるとの研究結果があり、がん予防に効果的な油の一つとされています。また、和食に合う油としては、なたね油やべにばな油もおすすめです。これらの油には、がん細胞の成長を抑えるオレイン酸が豊富に含まれています。
スーパーでよく見かけるキャノーラ油も、なたね油の一種で比較的手に入れやすい価格です。逆に、ごま油や米油はがんリスクを上げるリノール酸も含むため、がん予防の観点からは控えめに使う方が良いでしょう。
また、アマニ油やえごま油に含まれるオメガ3脂肪酸には、体内の炎症を抑えてがんリスクを下げる効果がありますが、加熱に弱いので、料理に手軽に使うには不向きです。
魚に含まれるオメガ3脂肪酸も膵臓がん予防に有効で、青魚、まぐろのトロ、ぶりなどの脂がのった魚を積極的に摂るのが良いとされています。日々の調理油選びを意識することで、膵臓がんのリスクを大幅に減らせる可能性があります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/96c6de1327ffb0c75c660274c6aff4f655684e40?page=2

「膵臓がん治療にブレイクスルーを」

12月の膵臓がん関連トピックスでは、膵臓がんに関連する最新の診断技術や治療法の進展について紹介しました。
ブレイクスルーとは、本質的かつ革新的な解決策で問題を突破すること。
当グループでは、今まさに膵臓がん治療でお悩みの患者さまに本質的かつ革新的な医療技術・サービスをご提案してまいります。
膵臓がんの患者様は気兼ねなくご相談ください。

監修医師

矢﨑 雄一郎医師

免疫療法・研究開発

東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。