無料医療相談

FREE CONSULTATION

TOP コラム 免疫療法 免疫療法におけるシュードプログレッション(偽増悪)とは?

免疫療法

投稿日:2024.10.1/更新日:2026.9.10

免疫療法におけるシュードプログレッション(偽増悪)とは?

この記事でわかること

  • シュードプログレッション(偽増悪)とは、免疫療法中に腫瘍が一時的に大きく見えたあと縮小する現象。原因は免疫細胞の浸潤や壊死。
  • 本当の病勢進行との見分け方:irRECIST/iRECISTによる4〜8週後の再評価、腫瘍マーカー、全身状態。
  • 起こりやすいがん種と頻度、治療を続けるか止めるかの判断で注意すべき点。
  • 当院で画像上は残っていた腹膜播種が、病理検査ではがん細胞のない瘢痕だった膵臓がんの実例。

免疫療法におけるシュードプログレッション(偽増悪)とは?

シュードプログレッション(Pseudoprogression, 偽増悪)とは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI, Immune Checkpoint Inhibitors)をはじめとする免疫療法を使用した際に、一時的に腫瘍が大きくなったように見える現象を指します。しかし、これは本当の腫瘍増大(病勢進行)ではなく、その後に腫瘍縮小がみられることが特徴です。

なぜシュードプログレッションが起こるのか?

免疫チェックポイント阻害薬(例:PD-1/PD-L1阻害薬、CTLA-4阻害薬)は、がん細胞によって抑制されていたT細胞の働きを活性化させ、免疫系を再びがんと戦える状態にします。この過程で、以下のような免疫応答が起こることで、一時的に腫瘍が大きくなったように見えます。

  1. 炎症反応の増加:活性化されたT細胞が腫瘍に浸潤し、炎症を引き起こす。その結果、腫瘍の周囲に浮腫(むくみ)や炎症細胞の浸潤が起こり、画像診断で腫瘍が大きく見えることがある。
  2. がん細胞の破壊による腫瘍内部の変化:免疫攻撃により腫瘍細胞が壊れ、内部に壊死組織や免疫細胞が蓄積する。これにより、CTやMRIなどの画像検査で腫瘍が拡大したように見える。
  3. 時間差での抗腫瘍効果:免疫チェックポイント阻害薬は効果発現に時間がかかることが多い。治療開始後すぐには腫瘍縮小が起こらず、一時的な増大が見られる場合がある。

シュードプログレッションと本当の増悪(真の病勢進行)をどう見分けるか?

シュードプログレッションと真の病勢進行(PD, Progressive Disease)を区別することは重要ですが、臨床的に難しい場合があります。そのため、以下の方法が用いられます。

  1. 免疫関連の画像診断基準(iRECIST, irRECIST)の使用:伝統的なRECIST基準(がんの増大を病勢進行と判断)とは異なり、「一時的な腫瘍増大があっても、後続のスキャンで縮小が見られる場合、シュードプログレッションと判断する」 という基準を採用する。
  2. 追加の画像検査:6~8週間後に再度CTやPET-CTを撮影し、腫瘍が本当に増大し続けているのかを確認する。真の病勢進行であれば腫瘍がさらに大きくなるが、シュードプログレッションの場合はその後縮小することが多い。
  3. 腫瘍マーカーや臨床症状の評価:例えば、PSA(前立腺がん)やCA19-9(膵臓がん)などの腫瘍マーカーの動きを確認。本当の病勢進行であれば、症状の悪化(体重減少、痛みの増加など)を伴うことが多い。

シュードプログレッションが起こりやすいがん種

シュードプログレッションは、特に免疫チェックポイント阻害薬が有効ながん種で観察されることが多いです。

  • メラノーマ(悪性黒色腫)
  • 非小細胞肺がん(NSCLC)
  • 腎細胞がん
  • ホジキンリンパ腫
  • 膀胱がん など

ただし、すべての患者に起こるわけではなく、シュードプログレッションが見られるのは免疫チェックポイント阻害薬を受けた患者の約5~10% ほどと報告されています。
なお、当グループの免疫療法「樹状細胞ワクチン療法」におけるシュードプログレッションについてですが、技術元の東京大学医科学研究所で行われたメラノーマに対する樹状細胞ワクチン療法の臨床研究で同様の現象を認めており、膨張したメラノーマの壊死像と、病理の結果、栄養する血管の破壊とT細胞の腫瘍への浸潤を認めていました。

シュードプログレッションの臨床的意義

  • シュードプログレッションが起こる患者は、免疫応答が活性化している可能性が高いため、長期的な治療効果を期待できる場合がある
  • そのため、早急に治療を中止せず、慎重に経過観察を行うことが重要。
  • しかし、真の病勢進行と見分けるのが難しく、誤って治療を継続するとがんが進行してしまうリスクもあるため、慎重な判断が必要。

2024〜2026年の新しい知見

血液で見分ける(ctDNA)。画像で腫瘍が大きく見えても、血液中のがん由来DNA(ctDNA)が治療開始後数週間で減っていれば偽増悪の可能性が高く、逆にctDNAが増え続けていれば真の進行である可能性が高い。非小細胞肺がんやメラノーマで、この「ctDNAの早期の動き」が画像より先に効果を予測することが複数の研究で示され、画像とctDNAを組み合わせて判断する流れが広がっています。

評価基準の標準化(iRECIST)。免疫療法の臨床試験では、増大を一度「未確定の進行(iUPD)」として扱い、4〜8週後の再評価で確定する iRECIST が標準になりました。日常診療でも、全身状態が保たれていれば一度の増大で治療をやめない判断が一般的になっています。

逆の現象「ハイパープログレッション」。免疫チェックポイント阻害薬の開始後に、腫瘍の増大速度がかえって速くなる現象も報告されています(報告により数%〜10%前後)。偽増悪と見た目が似ているため、腫瘍マーカー・症状・ctDNAをあわせて短い間隔で確認し、こちらを見逃さないことが重要です。

PET検査の限界。FDG-PETは炎症でも集積するため、免疫療法直後は偽増悪と真の進行を区別できないことがあります。当院では、画像は「いつ撮るか」を含めて設計し、必要なら病理検査で確かめます。

当院の実例

PET/CTで膵臓がんが消失し、画像で疑われた腹膜播種は試験切除の病理でがん細胞のない線維化瘢痕だった膵臓がんステージⅣ・71歳男性

腹膜播種と肝転移を伴う膵臓がんステージⅣで、手術の適応はありませんでした。抗がん剤(ジェムザール+アブラキサン)に樹状細胞ワクチン療法を併用したところ、PET/CTでは膵臓がんの集積が消失しました。一方で腹膜播種が疑われる所見は画像上残っていたため、腹腔鏡下に試験切除を行いました。病理検査ではがん細胞を認めず、線維化した瘢痕だけが確認されました。免疫療法後は、画像に写る「影」がそのまま生きたがんとは限らないことを示す例です。

症例の詳細を見る →

※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。画像所見の解釈は主治医の総合判断が必要で、本例は偽増悪そのものではなく、画像と病理が一致しなかった例です。

まとめ

シュードプログレッション とは、免疫チェックポイント阻害薬等の免疫療法による治療中に、一時的に腫瘍が大きくなったように見える現象。
これは 炎症やT細胞の浸潤、がん細胞の壊死 によるものであり、その後に腫瘍が縮小することがある。
irRECISTや追加の画像検査 によって、本当の病勢進行と見分けることが大切。
シュードプログレッションが起こる患者は、免疫応答が活発で長期的な治療効果を得られる可能性がある
しかし、判断を誤ると不適切な治療継続につながるため、慎重な観察が必要。

免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする免疫療法では、このシュードプログレッションの概念を理解し、適切な経過観察と判断を行うことが重要です。

よくある質問

シュードプログレッションはどのくらいの頻度で起こりますか?

免疫チェックポイント阻害薬では数%程度で、10%を超えることはまれです。メラノーマで比較的多く、肺がんや腎がんでも報告があります。頻度は低いため、「大きくなった=偽増悪だろう」と楽観するのは危険で、多くは本当の進行です。

本当の進行かどうか、どのくらい待って判断しますか?

免疫療法用の評価基準(iRECIST)では、増大を確認してから4〜8週間後に再度画像で評価します。その間に全身状態の悪化、腫瘍マーカーの上昇、新しい症状があれば、待たずに真の進行として治療を変更します。判断は主治医が行い、当院はセカンドオピニオンとして画像・マーカー・免疫の状態をあわせて意見をお伝えします。

樹状細胞ワクチン療法でもシュードプログレッションは起こりますか?

起こり得ます。樹状細胞ワクチン療法もT細胞を腫瘍に集める治療なので、免疫細胞の浸潤で腫瘍が一時的に大きく見えることがあります。当院では画像だけで判断せず、腫瘍マーカーの推移、症状、必要に応じてPETや病理検査を組み合わせて評価します(免疫チェックポイント阻害薬の解説免疫チェックポイント阻害薬の治療案内)。

免疫療法中に「大きくなった」と言われた方へ
本当の進行かどうか、当院に相談してみませんか?

シュードプログレッションは、画像上の一時的な増大です。
本当の進行と見分けるには、腫瘍マーカーや免疫の状態を含めた判断が必要です。
画像と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

お電話でご相談

お近くの院をお選びください(平日10:00〜18:00/休診日はホームページをご確認ください)

または、フォームでご相談

フォームで相談する入力は2項目のみ/24時間受付







    お電話・メールのどちらか一方で結構です





    監修医師:矢﨑 雄一郎医師

    監修医師

    矢﨑 雄一郎医師

    免疫療法・研究開発

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

    CATEGORY

    関連記事