2024.10.17
現在、光免疫療法は一部のがん治療において承認されており、その代表的な例が「アキャルックス(Akalux)」という治療法です。これは、アメリカの国立衛生研究所(NIH)で小林久隆博士によって開発され、日本では2020年に初めて承認されました。この治療法は、特に再発または難治性の頭頸部がんを対象としています。
薬剤名: アキャルックス(Akalux)
アキャルックスは、光感受性物質「IR700」と、がん細胞表面に存在するEGFR(上皮成長因子受容体)をターゲットとしたモノクローナル抗体「セツキシマブ(Cetuximab)」を組み合わせた薬剤です。
この薬剤は、がん細胞表面に特異的に結合することで、近赤外線を照射した際に選択的にがん細胞を破壊します。
照射装置: BioBlade(バイオブレード)
アキャルックスと併用される近赤外線の照射装置で、がん細胞に薬剤が結合した後に、この光を患部に照射します。これにより、IR700が活性化され、がん細胞の細胞膜を破壊して細胞死を引き起こします。
対象となるがん種:
頭頸部がん(再発または難治性):
頭頸部がんは治療の難しいがんの一つであり、再発や進行がんの場合には手術や化学療法、放射線療法の効果が限定的です。アキャルックスはこのような患者に対して効果を示しています。
治療プロセス:
患者にアキャルックスを静脈注射で投与する。
投与された抗体が体内のがん細胞に結合するまで一定時間待機。
その後、近赤外線を患部に照射することで、光免疫療法によるがん細胞の破壊を行う。
アキャルックスの治療の利点
選択性の高さ: EGFRを標的にするため、EGFRを高発現するがん細胞を正確に狙うことができる。
低副作用: 周囲の正常組織にほとんどダメージを与えないため、副作用が他の治療法と比べて少ない。
短期間の治療: 通常のがん治療と異なり、短い期間でがん細胞を破壊できるため、患者のQOL(生活の質)を維持しやすい。
現在の課題と今後の展望
適応拡大: 現在は主に頭頸部がんに対する治療として承認されていますが、将来的には他のがん種(肺がん、乳がん、脳腫瘍など)に対しても応用可能性が検討されています。
他の治療法との併用: 光免疫療法を免疫チェックポイント阻害薬などの他の免疫療法や化学療法と組み合わせることで、相乗効果を狙った治療が期待されています。
光免疫療法はまだ新しい分野ですが、今後さらなる研究や臨床試験の結果によって、治療の適応範囲が広がり、多くの患者に新しい治療の選択肢を提供する可能性が高いです。