HIFU(High-Intensity Focused Ultrasound、高強度集束超音波)は、超音波を高エネルギーで腫瘍に集中させ、熱を発生させてがん細胞を焼灼(しょうしゃく)する治療法です。非侵襲的であるため、切開や放射線による副作用が少なく、身体にかかる負担を軽減する点が大きな特徴です。
HIFUのメカニズム
HIFUは、以下のメカニズムでがん細胞を破壊します。
- 熱作用: 集中的に当てた超音波によって局所的に高温(60~100℃)が発生し、腫瘍を焼灼します。
- 空洞現象(キャビテーション効果): 超音波の振動により腫瘍内部に小さな気泡が生じ、これが破裂することでがん細胞にダメージを与えます。
HIFUの利点
- 低侵襲性: メスを使わないため手術跡が残らず、出血のリスクもありません。
- 回復が早い: 手術後の回復が早く、入院期間が短くなる場合が多いです。
- 副作用が少ない: 放射線治療や化学療法に伴う副作用がほとんどありません。
- 正確性: MRIやCTと連動させることで、腫瘍位置をリアルタイムでモニタリングしながら治療できます。
HIFUが有効とされるがんの種類
HIFUは、主に以下のがんに適用されています。
- 前立腺がん: 前立腺がん治療で特に用いられており、前立腺内に局所化した腫瘍を焼灼する治療法として有効です。
- 肝臓がん: 非切除可能な肝臓がんにも用いられますが、肝臓の位置や周囲組織の状態により適用が難しい場合があります。
- 膵臓がん: 膵臓がんに対しては進行状況により適用が検討されますが、深部にあるため正確な照射が難しいこともあります。
HIFUの課題
- 適用範囲の制限: 腫瘍の大きさや位置によってはHIFUの熱が周囲の正常組織に影響を及ぼす可能性があるため、全ての患者に適用できるわけではありません。
- 効果の個人差: 腫瘍のタイプや患者の状態によって効果が異なるため、単独での完治が難しい場合もあります。
- 費用: 高度な技術と設備が必要であるため、費用が高額になることが多く、保険適用が限定的です。
HIFUとハイパーサーミアの違い
HIFUとハイパーサーミアはいずれも熱を利用したがん治療法ですが、メカニズムと適用範囲が異なります。HIFUは超音波で局所的に高温(60~100℃)を発生させ、がん細胞を瞬時に破壊するため、即効性があり、局所がんに適しています。
一方、ハイパーサーミアは体外から腫瘍全体を42~43℃程度に温め、がん細胞を弱らせるとともに血流を制限します。これにより、他の治療(特に放射線や化学療法)との相乗効果が期待でき、広範囲のがんや転移がんの補助療法として有用と考えられます。
HIFUは特定のがんの治療において効果的ですが、腫瘍の種類や進行具合に応じた適切な選択が必要です。