2024.10.14
光免疫療法(Photoimmunotherapy, PIT)は、新しいがん治療法の一つで、光と抗体を組み合わせてがん細胞を選択的に破壊する方法です。この療法は、従来の治療法に比べて副作用が少なく、がん細胞を正確に狙うことができるため、効果的な治療法として注目されています。
光免疫療法の仕組みは、まずがん細胞に特異的に結合する抗体に、光感受性物質(フォトシンセタイザー)を結合させます。この抗体は、がん細胞の表面に存在する特定のタンパク質に結合するよう設計されており、正常細胞にはほとんど影響を与えません。この抗体ががん細胞に結合した後、近赤外線を照射すると、フォトシンセタイザーが活性化され、がん細胞膜が破壊されて細胞が死滅します。この過程で、周囲の正常組織へのダメージが少ないことが大きなメリットです。
光免疫療法の主な特徴
高い選択性: がん細胞に特異的に結合する抗体を利用するため、正常細胞をほとんど傷つけず、がん細胞のみをターゲットにできる。
低侵襲性: 光を使った治療なので、手術や化学療法と比べて体への負担が少なく、副作用が軽減される。
即効性: 光を照射することで迅速にがん細胞を破壊できるため、短期間での効果が期待できる。
代表的な光免疫療法:アキャルックス(Akalux)
アキャルックスは、光感受性物質「IR700」と、がん細胞表面に存在するEGFR(上皮成長因子受容体)をターゲットとしたモノクローナル抗体「セツキシマブ(Cetuximab)」を組み合わせた薬剤です。
この薬剤は、がん細胞表面に特異的に結合することで、近赤外線を照射した際に選択的にがん細胞を破壊します。
照射装置: BioBlade(バイオブレード)
アキャルックスと併用される近赤外線の照射装置で、がん細胞に薬剤が結合した後に、この光を患部に照射します。これにより、IR700が活性化され、がん細胞の細胞膜を破壊して細胞死を引き起こします。
対象となるがん種:
頭頸部がん(再発または難治性): 頭頸部がんは治療の難しいがんの一つであり、再発や進行がんの場合には手術や化学療法、放射線療法の効果が限定的です。アキャルックスはこのような患者に対して効果を示しています。
臨床応用と今後の展望
光免疫療法は、現在進行中の臨床試験で有望な結果を示しており、特に頭頸部がんなどで有効性が確認されています。さらに、今後は他のがん種にも適用範囲が拡大される可能性があります。特に、免疫チェックポイント阻害薬との併用など、他の治療法との組み合わせによって治療効果の向上が期待されています。