2024.4.12
従来のエックス線による放射線治療を超えるものとして期待されているのが、粒子線(炭素イオン線:重粒子線 ・ 水素イオン(陽子):陽子線)による放射線治療です。
エックス線はそもそも原子核の周囲を回っている質量の小さい電子に電圧をかけて加速し、金属にぶつけることで発生させている放射線です。これに対し、粒子線は電子よりも千倍以上も重いとされる原子核や原子核を構成する粒子にエネルギーを与えて放射線にしたものです。つまり、質量の大きい粒子を元にする分、発生する放射線のパワーも大きいのです。
通常のエックス線はがん細胞のDNAに切り込みを入れてダメージを与えるのに対し、粒子線はDNAを切り刻んでしまうほどのエネルギーがあるのです。使用する粒子によって、「重粒子線治療」、「陽子線治療」などに分かれます。
粒子線にはもうひとつ、大きな特徴があります。それは腫瘍に対してピンポイントに照射できるということです。エックス線は、エネルギーを放出しながら体を通り抜けていくため、がん細胞まで効率よく届くとはいえず、がん細胞に行き着く前に他の正常な細胞に影響を及ぼしやすいのです。
これに対して粒子線は、エネルギー保ったまま体の奥深くに進み、届かせたいところまでいってからそのエネルギーを一気に放出させるという特徴があります。つまりがん細胞をめがけてピンポイントに照射し効率よく攻撃することができる上、正常な細胞には影響を及ぼしにくいということなのです。
このことから粒子線は特に、広がりの少ない限局したがんの治療に適しています。悪性黒色腫(メラノーマ)、頭蓋底腫瘍、肝がん、体幹部にできたがんなどがよい適応です。一方、食道がんや胃がんといった、おもに消化器系のがんにはあまり適していません。管腔臓器の壁が薄いため、がん組織にピンポイントに照射できたとしても周囲の組織に大きなダメージを与える可能性が高いからです。