2024.4.12
膵臓がんの特徴
膵臓がんは、食べ物を消化し、血糖値を調整する働きを持つ膵臓にできるがんで、そのほとんどは膵管にできます。また、膵臓がんは高齢になるほど多くなるがんで、年間約3万人が膵臓がんを新たに発症しており、ここ数年は増加傾向にあります。膵臓がんは、診断時点で既に進行例が多く、膵臓がんの5年相対生存率は7%(地域がん登録2005)の難治性のがんです。
膵臓がんの原因
膵臓がんの発症には不明な点が多く、はっきりとした原因はわかっていません。しかし、膵臓がんの原因としては、喫煙や過度の飲酒、糖分の多い炭酸飲料やコーヒーの摂取、動物性タンパク質や脂肪分の取りすぎなどが考えられています。
喫煙しない人に比べて、喫煙する人の膵臓がんの発症率は2~3倍との報告もあります。
また、慢性膵炎や糖尿病などのほかの膵臓の疾患がある場合、膵臓がんを発症しやすい傾向があります。糖尿病患者においては、健康な人に比べて膵臓がんになりやすく、膵臓がんによって糖尿病が悪化するといわれています。
膵臓がんの原因はいずれも生活習慣に関わるものですが、日本で膵臓がんが年々増加傾向にある背景には、食生活の欧米化や野菜不足があることも指摘されています。
膵臓がんのリスクファクターとして膵臓がんの家族歴があります。特に両親、兄弟姉妹に2人以上の膵臓がん患者がいる家族性の膵臓がん家系は一般人口に比べて6.79倍と優位に高く罹患します。
膵臓がんの種類
膵臓がんには、主に「膵管がん」と「神経内分泌腫瘍(神経内分泌がん)」があります。
膵臓がんの約90%は「膵管がん」で、膵臓の中心を通る膵管の上皮(膵管細胞)に発生します。
口から入った食べ物の消化を助ける消化酵素を含む膵液は、この膵管を通って、十二指腸に流れ込んでいます。膵臓は膵頭、膵体、膵尾に分けられますが、膵臓がんの多くは、十二指腸に隣接した膵頭部に発生します。膵頭部には、脂肪の分解を促す胆汁を肝臓から十二指腸に送り込む胆管が通っているため、膵管にできたがんが胆管を圧迫するようになると黄疸が出やすくなります。
「神経内分泌腫瘍」は、悪性腫瘍全体の1~2%と発症率は少ないものの、子どもから高齢者まで年代を問わずに見られます。膵臓には、ランゲルハンス島という、血糖値を調整する働きを持つホルモンを分泌している細胞の塊が散在していますが、このランゲルハンス島にできるのが、「神経内分泌腫瘍」です。
「神経内分泌腫瘍」には、「膵管がん」より治りやすいとされる悪性度の低い「神経内分泌腫瘍」と、進行が早く悪性度の高い「神経内分泌腫瘍」があります。
膵臓はからだの奥深くに存在するため、がんを見つけにくく、症状に気が付いた時にはがんが進行していることも少なくありません。
早期発見が難しく、治療困難ながんとして知られる膵臓がんですが、近年では新しい治療法の開発も進み、これまで通りの生活を送ることもできるようになってきています。
膵臓がんの治療
膵臓がんの治療は、全身状態が良好で切除適応となる場合は、外科的切除が治療の第一選択肢となります。一方、切除不能な膵臓がんについては、全身状態が良好であればFOLFIRINOX、ジェムザール(GEM)+アブラキサン(nab-paclitaxel)の併用療法が第一選択肢になります。一方、これらの副作用は強いため継続が困難になる場合が多く、それらが難しくなるとジェムザールの単剤、TS1の単剤、またはその併用などが行われます。
膵臓がんに対する免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ等)についてですが、これまでいい結果が出ていないのが現状です。その原因として膵臓がんの周りの組織の特殊性や遺伝子(ミスマッチ修復遺伝子)の異常の有無などが挙げられています。
一方、プレシジョンクリニックグループでは1,000例以上の膵臓がんに対する免疫療法の実績を持っておりますが、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダ)とプレシジョンクリニックメソッドで行う樹状細胞ワクチン療法の併用することで、良好な成績が出てきています。
膵臓がんに対して免疫療法で効果が出てきている理由としては、プレシジョンクリニックメソッドの樹状細胞ワクチンを投与することで、膵臓がんやその周辺組織に浸潤し、膵臓がんを攻撃するT細胞が体内で増殖するからと考えています。実際に膵臓がんを攻撃するT細胞は、体内で2倍程度、多い患者で400倍弱まで増えていることが研究の結果明らかになっています。
また、抗がん剤(FOLFIRINOX、ジェムザール、アブラキサン)と比較して、副作用も軽度であるため体力が温存されるという利点もあります。
現在、プレシジョンクリニックグループのこれらのデータを活用して、日本初の膵臓がんに対する樹状細胞ワクチン療法の治験が和歌山県立医科大学で開始されています。