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TOP 用語集 Cold Tumor/Hot Tumor

2024.10.30

Cold Tumor/Hot Tumor

“ホット・チューマー (Hot Tumor)” と “コールド・チューマー (Cold Tumor)” は、腫瘍内の免疫細胞の活性度や、免疫系による反応の強さに基づいて腫瘍を分類する概念です。この区別は、がん免疫療法の効果に大きく関わると考えられています。

ホット・チューマー (Hot Tumor)

ホット・チューマーとは、腫瘍内部に免疫細胞、特にT細胞が豊富に存在し、活発な免疫応答が起こっている腫瘍です。ホット・チューマーは以下のような特徴を持ちます:

  • 高い免疫細胞浸潤:腫瘍内に多くのT細胞や他の免疫細胞が浸潤しています。
  • 高い免疫原性:がん細胞の変異が多いため、免疫系に「異物」として認識されやすいです。
  • PD-1/PD-L1経路:多くのホット・チューマーは、免疫抑制をかけるためにPD-1やPD-L1といった免疫チェックポイント分子が発現しています。これにより、がん細胞は一部の免疫応答を抑えますが、免疫チェックポイント阻害剤を使って免疫反応を再活性化しやすい特性もあります。

ホット・チューマーは免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法が比較的効果的とされ、がん治療において良好な反応が得られる可能性が高いとされています。

コールド・チューマー (Cold Tumor)

一方、コールド・チューマーとは、腫瘍内に免疫細胞の浸潤が少なく、免疫応答が弱い腫瘍です。コールド・チューマーの特徴は次の通りです:

  • 低い免疫細胞浸潤:腫瘍周辺に免疫細胞があまり存在しないため、免疫反応が十分に起こりません。
  • 低い免疫原性:変異が少ないため、がん細胞が「自己」として認識されやすく、免疫系によって異物として認識されにくいです。
  • 免疫抑制性の腫瘍微小環境:がん細胞が免疫抑制性の因子を分泌し、免疫細胞の浸潤や活性化を阻害しています。

コールド・チューマーでは免疫チェックポイント阻害剤の効果が薄いため、T細胞を腫瘍へ呼び込むための別の戦略が必要です。例えば、放射線療法、ウイルス療法、または低用量の化学療法などで腫瘍の免疫原性を高め、ホット・チューマーへと転換させる方法が研究されています。

ホット・チューマーとコールド・チューマーの治療アプローチの違い

ホット・チューマーに対しては免疫チェックポイント阻害剤が有効である一方、コールド・チューマーに対しては、次のような方法が効果を高めるために検討されています:

  1. 腫瘍の免疫原性の向上:放射線療法やウイルス療法などでがん細胞の抗原提示を高め、免疫系が認識しやすくします。
  2. 免疫細胞の腫瘍への誘導:腫瘍微小環境に免疫細胞を呼び込むための治療法(例えば、ケモカインの誘導など)を使用します。
  3. 免疫抑制性因子の阻害:T細胞の抑制を解除するために、免疫抑制因子や分子標的薬の併用が試みられます。

今後の展望

ホット・チューマーとコールド・チューマーの区別は、個別化医療(プレシジョン・メディシン)においても重要です。患者ごとの腫瘍特性を考慮した治療戦略が、より効果的な治療結果をもたらす可能性が高く、この視点が免疫療法の最適化や新たな治療法の開発に役立っています。