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TOP 用語集 HDAC阻害剤

2024.10.23

HDAC阻害剤

HDAC阻害剤(Histone Deacetylase Inhibitors, HDAC inhibitors)は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の機能を阻害する薬剤です。HDACは、遺伝子の発現を制御する重要な役割を持つ酵素であり、DNAが巻き付いているヒストンタンパク質のアセチル基を除去することで、遺伝子の発現を抑制します。HDAC阻害剤は、このアセチル化の除去を阻害することで、遺伝子の発現パターンを変化させ、特定の遺伝子の活性化や抑制を引き起こします。

HDAC阻害剤の主な効果

  • がん細胞の成長抑制:HDAC阻害剤は、がん細胞の異常な増殖を抑える効果があります。特に、がん細胞が異常な遺伝子発現を行う際に、HDAC阻害剤はそのプロセスを調整し、アポトーシス(細胞の自然な死)を誘導することができます。

  • がん細胞の分化誘導:HDAC阻害剤は、がん細胞が正常な細胞に近い分化を促進することで、がんの進行を抑制します。

  • 免疫反応の増強:HDAC阻害剤は免疫系の反応を高め、がん細胞に対する免疫攻撃を強化します。特に、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせることで、より強力な抗腫瘍効果を発揮することが期待されています。

  • 抗血管新生効果:がん細胞は新しい血管を作り出して栄養を供給し、増殖を促進しますが、HDAC阻害剤はこの血管新生を阻害する効果もあります。

HDAC阻害剤の治療用途

HDAC阻害剤は、特に以下のがん種に対する治療で使用されています:

  1. 血液がん:特に、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)や末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)などに対して、効果があることが確認されています。
  2. 固形がん:乳がんや肺がん、膵がんなどでも研究が進んでおり、特定の患者においては効果が期待されています。

代表的なHDAC阻害剤

  • バリノスタット(Vorinostat, ゾリンザ):主に皮膚T細胞リンパ腫の治療に用いられています。
  • ロミデプシン(Romidepsin, イストダックス):同様にT細胞リンパ腫に使用されます。
  • ツシジノスタット(Tucidinostat, ハイヤスタ):主に乳がんに対する効果が研究されていますが、その他のがん種でも臨床試験が行われています。

副作用

HDAC阻害剤は有効性がある一方で、副作用も報告されています。代表的な副作用には以下のものがあります:

  • 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)
  • 血液の異常(血小板減少、貧血など)
  • 疲労感や感染リスクの増加

HDAC阻害剤は、がん治療における革新的な薬剤の1つであり、特に他の治療法と組み合わせることでより効果的な治療が期待されています。