NLR(好中球リンパ球比、Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio)は、血液検査で測定される好中球数とリンパ球数の比率です。この指標は、シンプルながら特に炎症反応や免疫応答を反映するマーカーとして注目されており、がんや感染症、慢性疾患などの重症度や予後を評価するために広く使われています。NLRの主なポイントを以下にまとめます。
1. NLRの算出方法
- NLRは、末梢血の白血球検査から得られる「好中球数」を「リンパ球数」で割ることで算出されます。
- 数値が高い場合、好中球が増加しリンパ球が減少していることを示します。
2. 炎症マーカーとしてのNLRの意義
- NLRは、体内の炎症反応を反映し、急性や慢性の炎症状態を示すマーカーとされています。
- 特にがん患者において、NLRの上昇は腫瘍微小環境の炎症と関連が深く、予後の悪化と関係があるとされています。
3. がん治療におけるNLRの役割
- 多くのがん種で、NLRが高い患者は低い患者と比べて予後が悪い傾向にあることが報告されています。
- 例えば、NLRが高いことは、免疫応答が抑制されている状態を示しており、腫瘍の成長や転移のリスクが増すと考えられています。
- NLRは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療や化学療法の反応予測因子としても研究が進んでいます。
4. 基準値と臨床的意義
- 一般的に、健康な成人のNLRは1.5〜3.5程度とされますが、基準値は個人や年齢、性別によって異なります。
- がん患者においては、NLRが5を超える場合、予後不良の可能性が高まることが示唆されています。ただし、NLRのカットオフ値は病状や個人差により異なるため、他の臨床的指標と併用して評価されるべきです。
5. NLRの限界と課題
- NLRは安価で簡便に測定できる一方で、様々な要因(感染、ストレス、薬物治療など)が値に影響を及ぼす可能性があるため、単独での診断指標として用いるには限界があります。
- 他のバイオマーカー(例えば、PLR:血小板リンパ球比やSII:Systemic Immune-Inflammation Index)と併用することで、炎症や免疫応答の状態をより包括的に評価するアプローチも提案されています。
NLRは予後マーカーや治療の指標として利用可能ですが、総合的な診断には他の要因も考慮し、医師の判断と組み合わせる必要があります。