2024.10.17
免疫が、がん細胞を攻撃するのに目印となる重要な物質が、がん抗原です。これまで様々ながん抗原が発見されていますが、「WT1」は、がん抗原として優れている(優先度が最も高い)物質※として、世界で評価されているがん抗原です。
※Cheeve MA. Clinical Cancer Research 2009
WT1(Wilms’ Tumor 1)は、もともとウィルムス腫瘍という腎臓がんで発見された遺伝子で、腫瘍抑制遺伝子としての役割を持ちますが、特定のがん細胞では異常な発現が見られることが知られています。がん抗原としてのWT1は、腫瘍細胞で過剰に発現することが多く、がん治療における免疫療法の標的として注目されています。
WT1は、白血病、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がんなど、多くのがんで発現が報告されており、正常な組織ではほとんど発現していないため、がんに特異的なターゲットとして利用されています。このため、WT1に対する免疫反応を誘導することで、がん細胞を特異的に攻撃する治療が研究されています。
具体的には、WT1を標的としたがんワクチンやT細胞療法が開発されています。これらの治療では、患者の免疫系を活性化させ、WT1を持つがん細胞を特異的に認識して攻撃するように訓練された免疫細胞(例えば、WT1に反応するT細胞)を利用します。これにより、正常な細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、がん細胞を効率的に排除することが期待されています。
WT1を標的にした治療は、特に再発がんや治療抵抗性がんに対する新しい治療オプションとして注目されており、研究が進んでいる領域です。
プレシジョンクリニックグループでは、樹状細胞ワクチン療法にこのWT1タンパクの一部分である「WT1ペプチド」を用いることで、より多くのがん患者さまに樹状細胞ワクチン療法を提供できるようになりました。