この症例のポイント
Case Report ─ 当院で治療を行った上咽頭がんの症例
重要症例
放射線と抗がん剤のあとも再発を繰り返し、主治医から「治療選択肢はない」と告げられた患者さまの経過をご紹介します。上咽頭がんの特徴と、再発を繰り返す場合の治療の考え方は、症例のあとにまとめています。
| 患者さま | 50代 男性 |
|---|---|
| 診断名 | 上咽頭がん |
| ステージ | 4(リンパ節転移) |
| 標準治療 | 放射線治療+抗がん剤(シスプラチン+5-FU、カルボプラチン+ドセタキセル) |
| 治療内容 | 樹状細胞ワクチン療法 局所投与(4か月・7回) |
| 初回治療 | 上咽頭がんの診断で放射線治療+抗がん剤(シスプラチン+5-FU)を実施 |
|---|---|
| 1年後 | リンパ節に再発し、抗がん剤を再開。その後は経過観察 |
| 3年後 | 原発部位が再発。放射線治療+抗がん剤(カルボプラチン+ドセタキセル)を再開 |
| その後 | 上咽頭周辺の再燃とリンパ節転移を認め、外来で抗がん剤(カルボプラチン+ドセタキセル)を実施。増悪傾向で「治療選択肢はない」と告げられる |
| 当院受診 | 樹状細胞ワクチン療法の局所投与を開始(4か月・7回) |
| PET-CT | 原発への集積は低下。左内深頸リンパ節の異常集積は消失し、全身に転移を疑う異常集積を認めず |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、免疫を活性化する〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を、がんの場所が明確な頭頸部がんの特性を活かして局所投与で行いました。標準治療を使い切ったあとに、免疫の側から働きかける設計です。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)では副作用が認められることはほとんどありませんが、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。主な副作用は以下のとおりです。
本症例は、放射線と抗がん剤のあとも再発を繰り返した上咽頭がんステージ4に対し、樹状細胞ワクチン療法の局所投与でPET-CT上の原発の縮小とリンパ節転移の消失を確認した一例です。ただし治療効果には個人差があり、すべての患者さんに同様の結果が得られるとは限りません。
院長から
「治療選択肢はない」と言われた段階でも、免疫の側から働きかける道は残っていると、私たちは考えています。この方は、がんの場所がはっきりしている頭頸部がんの特性を活かし、樹状細胞ワクチンをがんの近くに届ける局所投与を4か月で7回行いました。免疫細胞を高い濃度でがんの近くに届けたことが、原発への集積の低下とリンパ節の異常集積の消失という経過に寄与できた可能性があると考えています。
上咽頭がんは、鼻の奥、のどの最も上の部分(上咽頭)にできるがんです。頭頸部がんの中では比較的まれで、EBウイルスとの関連が知られています。首のリンパ節の腫れ、鼻づまり、鼻血、耳の詰まり感などで見つかることが多く、発見時にすでにリンパ節転移を伴っていることが少なくありません。
| 内視鏡・生検 | 鼻から内視鏡を入れて上咽頭を観察し、組織を採って診断を確定します。 |
|---|---|
| CT・MRI | がんの広がりと、頭蓋底や周囲の組織への浸潤を調べます。 |
| PET-CT | リンパ節転移や離れた臓器への転移の有無を調べます。治療の効果判定にも使います。本症例でも効果判定に用いました。 |
| EBウイルスDNA | 血液中のEBウイルスDNA量が、病勢や再発の目安になることがあります。 |
上咽頭がんは放射線が効きやすく、初回治療は放射線治療と抗がん剤の組み合わせ(化学放射線療法)が基本です。しかし、リンパ節や原発部位に再発を繰り返す方がいます。再発のたびに抗がん剤の種類を変えたり、放射線を再度あてたりしますが、同じ場所への再照射には限界があり、抗がん剤も回数を重ねるほど効きにくく、副作用も蓄積します。
本症例は、化学放射線療法の1年後にリンパ節へ再発、3年後に原発部位へ再発、さらに周辺の再燃とリンパ節転移を認め、外来での抗がん剤でも増悪傾向となり、主治医から「もう治療選択肢はない」と告げられました。標準治療を使い切った段階で、何ができるかが問われる状況でした。
| 初回治療 | 放射線治療に抗がん剤(シスプラチン+5-FUなど)を組み合わせる化学放射線療法が標準です。 |
|---|---|
| 再発・転移 | 抗がん剤(プラチナ製剤、タキサン系など)や、再照射が可能な場合は放射線を検討します。近年は免疫チェックポイント阻害薬も選択肢に加わっています。 |
| 標準治療を使い切ったあと | 治験や、当グループで行う免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)などを個別に検討します。 |
| 局所投与という方法 | 樹状細胞ワクチンを皮下ではなく、がんの近く(腫瘍内や所属リンパ節付近)に直接投与する方法です。がん局所に高い濃度で免疫細胞を届けることを狙います。 |
当グループでは、患者さんご自身の免疫細胞を使う樹状細胞ワクチン療法を、免疫を活性化する〈アクセル〉として治療設計の中心に置きます。再発を繰り返した頭頸部がんでは、がんの場所が明確なことを活かし、局所投与でがんの近くに免疫細胞を届ける方法を検討します。免疫チェックポイント阻害薬や放射線と組み合わせる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に設計します。
「治療選択肢はない」と言われた段階でも、免疫の側から働きかける道が残っていると私たちは考えています。本記事の症例は、その一例です。
できます。本症例も同じ状況で当グループを受診し、樹状細胞ワクチン療法の局所投与を行いました。これまでの治療歴と画像をうかがったうえで、検討できる選択肢をご説明します。
ワクチンを皮下ではなく、がんの近くや腫瘍内に直接投与する方法です。がん局所に高い濃度で免疫細胞を届けることを狙います。本症例では4か月・7回の投与を行いました。
できます。樹状細胞ワクチン療法は患者さんご自身の免疫細胞を使う治療で、放射線や抗がん剤の治療歴があっても検討できます。体力や血液検査の結果をみて開始時期を決めます。
PET-CTで、がんへの集積の低下や消失を確認します。本症例では、原発の集積低下と、左内深頸リンパ節の異常集積の消失を確認しました。治療効果には個人差があります。
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