大腸癌は、近年日本人に増加している病気の一つです。「癌」と聞くと不安を感じるかもしれませんが、医学の進歩により、早期に発見できれば治る可能性の高い病気でもあります。本記事では、ステージごとの症状の特徴や、検査方法、治療方法などについて解説します。
大腸癌は、大腸に生じる悪性腫瘍です。大腸は結腸と直腸から構成されており、日本人の場合、特にS状結腸や直腸の部分に発生しやすい傾向があります。
この病気は主に二つの経路で発生します。
一つは腺腫と呼ばれる良性のポリープが時間をかけて悪性化するパターン、もう一つは健康な腸の粘膜から直接がん細胞が生まれるパターンです。
初期の段階では症状がほとんど現れないため、気づかずに過ごされる方が多いのが現状です。病気が進むにつれて、便に血が混じったり、便の表面に血液が付着したりといった変化が見られるようになります。
大腸癌はステージ1からステージ4の段階があり、ステージ別の症状があります。ここでは、大腸癌のステージ別の症状について解説します。
ステージ1の大腸癌は、がん細胞がまだ大腸の内側の層に留まっている状態で、最も早期の段階といえます。この時期は、がんが大腸の外側やリンパ節には広がっていないため、適切な治療を受けることで完治の可能性が高い段階でもあります。
残念ながら、この段階では体に明らかな変化を感じることはほとんどありません。時折、軽い便秘や下痢、わずかな血便といった症状が現れることもありますが、多くの方がこれらを一時的な体調不良として見過ごしてしまいがちです。特に血便については、痔と勘違いされることが多いため、放置してしまうケースもよくあります。
ステージ2では、がんが大腸の壁を突き抜けて外側まで広がっていますが、まだリンパ節や他の臓器への転移は見られない状態です。この段階になると、体に現れる症状も少しずつはっきりしてきます。
よく見られる症状として、以下が現れます。
がんが大きくなることで腸の通りが悪くなり、腸閉塞という状態を引き起こすこともあります。これにより、お腹の張りや不快感が強くなったり、排便のパターンが大きく変わったりします。さらに、なんとなく食欲がわかない、体重が減ってきた、疲れやすくなったといった全身の症状も現れ始めることがあります。
ステージ3の段階では、がんが大腸の壁を越えて広がり、さらに近くのリンパ節にも転移している状態となります。この時期になると、体の変化がより明確に現れてくることが多くなります。
体が病気と闘うために多くのエネルギーを使うため、以前のような元気がなくなったと感じられるかもしれません。
ステージ4は、がんが大腸を越えて肝臓や肺などの他の臓器にも転移している、最も進行した状態です。この段階では、元々あった消化器系の症状に加えて、転移した臓器特有の症状も現れてきます。
血便や便通の異常は続きますが、それに加えて体重減少や強い倦怠感がより顕著になります。肝臓に転移した場合には黄疸が現れることがあり、肺に転移した場合には息苦しさを感じることもあります。お腹の痛みや腫れも強くなり、腸閉塞による激しい症状が現れることも。転移した場所によってそれぞれ異なる症状が加わるため、体調の変化が急激に進むこともあります。この段階では、症状の管理や生活の質の向上に重点を置いた治療が中心となることが多くなります。
大腸癌が疑われる場合は、いくつかの検査をしていきます。ここからは、大腸癌の検査方法について解説します。
便潜血検査は、健康診断でよく行われている大腸癌のスクリーニング検査です。
2日分の便を専用のスティックで少量採取します。食事制限は必要ありません。
大腸癌の初期段階では症状がほとんど現れませんが、病気が進行すると便に血液が混じるようになります。人間の目では見えないほど微量な血液でも検出できるため、非常に有効な検査です。通常、健康な状態では食べ物が便として体外に出る過程で血液が混じることはありません。そのため、この検査で陽性反応が出た場合は、大腸に何らかの異常がある可能性が考えられます。2日間のうち1回でも陽性が出た方は、念のため消化器内科を受診することが大切です。
注腸検査は、肛門からバリウムと空気を入れて、大腸の内部をレントゲンで詳しく観察する検査方法です。この検査により、大腸の形や粘膜の状態を鮮明に映し出すことができます。
検査を受ける前には、大腸内をきれいにするために下剤を飲んでいただきます。便が残っていると正確な診断ができないからです。検査当日は、腸の動きを一時的に止める薬を注射してから検査を始めます。
検査中は、バリウムを大腸全体に行き渡らせるために、検査台の上で体の向きを変えたり、台を傾けたりします。
この検査では、癌やポリープ、潰瘍、憩室といったさまざまな病変を発見することができ、大腸の形の異常も詳しく調べることができます。異常が見つかった場合は、より詳しい大腸内視鏡検査を行ったり、経過を観察したりします。
大腸内視鏡検査は、柔らかいカメラ付きの管を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸全体をくまなく観察する検査です。この検査の特徴は、病変を直接目で見て確認できることです。気になる部分があれば、その場で組織を少し採取して詳しい検査(病理検査)を行うこともできます。
大腸内視鏡検査は、診断から治療まで一度に行える検査方法であり、大腸癌が疑われる場合の最も重要な検査として位置づけられています。検査への不安がある方には、体への負担を軽減したCT検査という選択肢もあります。
病理検査は、採取した組織を顕微鏡で詳しく調べて、病気の正体を明らかにする検査です。大腸ポリープや大腸癌の疑いがある場合、採取した組織の中にがん細胞が含まれているかどうかを調べます。
大腸癌の病理検査では、まず、がんが完全に取り除かれているかどうか、がんが大腸の壁のどの深さまで広がっているか、リンパ節や血管への転移がないかどうかを詳しく調べます。さらに、がんの種類や性質についても詳しく分析します。
これらの情報は、今後の治療方針を決める上でとても重要な材料となります。病理検査の結果により、手術が必要か、追加の治療が必要か、経過観察で良いかなど、一人ひとりに最適な治療計画を立てることができるのです。
検査方法や状況、患者さまの希望をもとに、治療を行っていきます。ここからは、大腸癌の治療方法を解説します。
手術は大腸癌治療の中心となる治療法で、がんが大腸にとどまっている早期から中期の段階で非常に効果的です。手術では、がんのある部分だけでなく、その周りの正常な組織や近くのリンパ節も一緒に取り除きます。これにより、目に見えない小さながん細胞も確実に除去し、再発のリスクを大幅に減らすことができます。
手術の種類は、がんのできた場所や進行具合によって決まります。結腸にできたがんには結腸切除術、直腸にできたがんには直腸切除術が行われます。最近では、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術が多く選ばれるようになりました。この方法は体への負担が少なく、回復が早いという大きなメリットがあります。
進行したがんの場合は、手術だけでなく、その後に化学療法や放射線治療を組み合わせることで、より確実にがんの再発を防ぐ治療を行います。
薬物治療は、手術後の再発を防いだり、進行したがんに対処するための治療方法です。現在の治療は大きく分けて化学療法、分子標的療法、免疫療法の3つがあり、それぞれ違ったやり方でがん細胞を攻撃します。どの治療法を選ぶかは、がんがどのくらい進んでいるか(病期)と、患者さま個人のがんの性質を調べる検査(RAS/BRAF、MSI/MMR、HER2などのバイオマーカー検査)の結果が重要になります。
抗がん剤を使ってがん細胞が増えるのを抑える治療法で、術後補助療法から進行したがんの治療まで、幅広く使われています。
術後補助化学療法(主に結腸がんステージ3、一部の再発リスクが高いステージ2)
FOLFOX(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)
CAPEOX/CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
手足のしびれなどの副作用や再発の危険度を考えて、3〜6か月間の治療が勧められています(再発リスクが低めのステージIIIでは、CAPEOX 3か月という選択肢もあります)。
進行・再発(手術で取り切れない場合)
FOLFOX、CAPEOX、FOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+イリノテカン)
体力や全身状態が良い患者さまには、FOLFOXIRI(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン+イリノテカン)も検討されます。
これらの化学療法は、次に説明する分子標的薬と一緒に使うのが一般的です。
他の治療を既に受けた後の治療
トリフルリジン/チピラシル(TAS-102)+ベバシズマブ:SUNLIGHT試験という研究で、生存期間が延びることが確かめられています。
レゴラフェニブ、フルキンチニブ(フルザクーラ®):飲み薬タイプの薬で、フルキンチニブは日本でも承認済みです。
がん細胞の特定分子を標的とした精密医療の中核をなす治療法です。分子検査結果によって使用可能な薬剤が決まります。
抗VEGF系(血管新生阻害):ベバシズマブ、アフリベルセプト(FOLFIRIと併用)、ラムシルマブ(FOLFIRIと併用) 最初の治療から後の治療まで、化学療法に追加することで効果が高まることが期待できます。
抗EGFR抗体(RAS野生型が必須条件、左側結腸原発で特に有効):セツキシマブ、パニツムマブ 最初の治療でFOLFOXやFOLFIRIと組み合わせて使うのが代表的です。
BRAF V600E変異:エンコラフェニブ+セツキシマブ(他の治療を受けた後) 最初の治療では、mFOLFOX6にエンコラフェニブ+セツキシマブを組み合わせる臨床試験(BREAKWATER)で良い結果が報告されています。
HER2陽性(多くはRAS野生型):トラスツズマブ併用レジメン トラスツズマブ+トゥカチニブ、トラスツズマブ デルクステカンなどが治療の選択肢になります。
KRAS G12C変異(限定的な症例):アダグラシブ+セツキシマブ(米国で承認)、ソトラシブ+パニツムマブ(米国で承認) どちらも他の治療を受けた後の患者さまが対象で、日本で実際に使えるかどうかは最新の承認状況の確認が必要です。
体が本来持っている免疫の力を引き出して、がんと闘う治療法です。MSI-High/dMMRという検査結果があるかどうかが、治療を選ぶ上で重要な指標になります。
MSI-High/dMMRの大腸がん
進行・再発:ペムブロリズマブ(最初の治療の有力な選択肢)、ニボルマブ±イピリムマブ(他の治療を受けた後の患者さまを含む)
局所進行直腸がん:ドスタルリマブ単独の研究で非常に高い効果が報告されていて、治療の新しい選択肢をもたらしています(研究段階を含みます)。
局所的に進行した直腸がんでは、手術前に化学放射線療法と化学療法(FOLFOXやCAPEOXなど)を集中的に行う「TNT(Total Neoadjuvant Therapy:術前集学的治療)」が標準的な方法になりつつあります。患者さまによっては、手術をせずに経過観察する方法(Watch & Wait)も検討されますが、これには厳しい条件と医療体制が整っていることが前提です。
放射線治療は、特に直腸がんに対して大きな効果を発揮する治療法です。高精度の放射線を使ってがん細胞を攻撃し、がんの増殖を抑えたり、がんを小さくしたりすることができます。
この治療の大きなメリットは、手術前にがんを小さくして手術をより安全で確実にできることです。また、手術が困難な場所にあるがんや、再発のリスクが高い場合には、手術の後に追加で行うこともあります。放射線治療は、がんの部分をピンポイントで狙うことができるため、周りの健康な組織への影響を最小限に抑えられます。
治療中には、治療部位の軽い炎症や皮膚の赤み、お腹の調子が悪くなることがありますが、これらの症状は治療が終わると次第に改善していきます。進行したがんや再発したがんの場合は、化学療法と一緒に行うことで、より良い治療効果が期待でき、患者さまの生活の質を保ちながら治療を進めることができます。
上記の章で、大腸癌の治療方法について詳しく解説しました。プレシジョンクリニックでは、抗がん剤とプレシジョン免疫療法を組み合わせた治療法をおすすめしており、実際にこの治療法により、大腸癌が完全に消滅した事例があります。

■患者さま:59歳 女性
■診断名:大腸がん ステージ4(多発肝転移あり)
■治療開始時の状況:手術適応外の進行がん
■実施した治療:
①抗がん剤治療
・薬剤名:XELOX(ゼローダ+オキサリプラチン)
②プレシジョン免疫療法
・治療法:樹状細胞ワクチン療法
・治療期間:4ヶ月間
・投与回数:7回
・費用:約280万円
■治療効果
・大腸の原発がん:完全消失
・肝転移:完全消失
・病理検査結果:完全緩解(CR)を確認
■免疫機能の変化
樹状細胞投与後、がんと戦う免疫細胞(キラーT細胞)が30倍に増加
結腸がんの原発巣における完全緩解(CR)は極めて稀なケースです。医学文献調査(1983年〜2013年)によると、結腸がん原発巣のCR報告例はわずか6例のみです。
肝転移でのCR報告は多いですが、原発巣でのCRは非常に貴重な症例といえます。
■副作用・リスク:
プレシジョン免疫療法の副作用は基本的にほとんど認められることはありませんが、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。以下は、可能性のある副作用等です。
樹状細胞ワクチン療法
成分採血時:めまい、吐き気(迷走神経反射)、口の周り・手足のしびれ等
細胞培養時:培養時の細菌等の汚染等
ワクチン接種時:注射部位の発赤、皮疹、発熱
このように、抗がん剤とプレシジョン免疫療法を組み合わせることで、大腸癌が完全に消滅することが期待できます。大腸癌の完全消滅を目指すために、具体的な治療法を一緒に決めていきましょう。
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