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この記事でわかること
大腸がんの腹膜播種・腹水でお困りの方へ
複数の抗がん剤を試しても腹膜播種が制御できない場合、バイオマーカーに基づく治療選択や免疫療法の併用を検討できることがあります。これまでの治療歴・画像・遺伝子検査結果をもとに、次に確認すべき選択肢をご提案します。
大腸がんは日本でも罹患数の多いがん種のひとつです。手術や抗がん剤で治療が進む一方、腹膜播種(腹膜転移)を来した場合は予後が厳しくなります。本記事では大腸がん腹膜播種の特徴・治療・最新レジメンを解説し、複数の抗がん剤を経ても腹膜播種と腹水が消失した63歳女性の症例をご紹介します。
腹膜播種とは、がん細胞が腹腔内に散らばり腹膜(お腹の内側を覆う膜)に定着・増殖した状態です。大腸がんでは術後再発のかたちで現れることが多く、腹水・腹部膨満・腸閉塞などを引き起こします。診断時点ですでに腹膜播種を伴う場合(ステージⅣ)と、手術後に再発として現れる場合があります。
大腸がんが漿膜(腸の外側)を貫通したり、手術操作でがん細胞が腹腔内に散布されたりすることが原因とされています。腹膜の豊富な血管・リンパ管を介して播種巣が形成され、腹水産生や腸管癒着につながります。
初期は無症状のことも多く、画像検査(CT・MRI・PET)で偶然発見されるケースもあります。進行すると、腹部膨満・腹水・腹痛・食欲不振・体重減少・排便障害(腸閉塞)などが現れます。
CT・MRIによる画像診断が基本です。腹腔鏡検査(diagnostic laparoscopy)で腹膜播種スコア(PCI:Peritoneal Cancer Index)を直接評価することで、手術適応の判断に役立ちます。腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)の推移も経過観察に利用されます。
治療方針はPCIスコア・全身状態・バイオマーカー(RAS/BRAF変異・MSI・HER2)によって異なります。限局例では腹膜切除術(CRS)などを含めて根治を目指す治療が検討される場合があり、広範囲例では全身化学療法が基本となります。HIPECの位置づけは、施設や治療方針によって異なります。
腹腔内の転移巣をできる限り取り切る腹膜切除術(CRS)と、手術直後に抗がん剤を温めて腹腔内に還流するHIPECを組み合わせる治療法です。PCIスコアが低い(播種範囲が限局した)症例で検討されることがありますが、HIPECの上乗せ効果については試験結果に幅があり、適応は慎重に判断されます。日本でも一部の施設で実施されています。
腹膜播種が広範囲の場合や手術適応外の場合は、全身化学療法が中心となります。RAS/BRAF変異・MSI状態・HER2などのバイオマーカーに応じて薬剤を選択します。
1次治療の代表例
2次治療以降の代表例
Case Report ─ 当院の改善症例
重要症例
この症例のポイント
複数の抗がん剤を経ても腹膜播種が制御できない状況で、4種類目の抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を組み合わせることで腹膜播種と腹水が消失した症例をご紹介します。
| 患者さま | 63歳 女性 |
|---|---|
| 診断名 | 大腸がん術後、卵巣・腹膜転移 |
| ステージ | Ⅳ(腹膜播種・腹水) |
| 治療期間・回数 | 樹状細胞ワクチン療法:4か月間、7回投与 |
| 治療費 | 料金表ページをご覧ください。 |
| 初回手術+ 抗がん剤① |
大腸がんの診断で手術後、1種類目の抗がん剤を実施 |
|---|---|
| 再発・再手術+ 抗がん剤② |
卵巣・腹膜に転移(再発)。再手術後、2種類目の抗がん剤を開始。約1年半は有効だったが再々発 |
| 抗がん剤③ | 3種類目の抗がん剤を開始するも効果が減弱 |
| 抗がん剤④+ 免疫療法 |
4種類目の抗がん剤に樹状細胞ワクチン療法を併用開始 |
| 4か月後 | 画像上、腹膜播種と腹水が消失。元気に日常生活を送ることができるように回復 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、患者さまの治療歴・全身状態・免疫状態をふまえて、免疫療法を組み合わせる余地を検討します。進行がんでも免疫応答を考慮した治療設計を行うために、患者さまの状況に応じてSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、複数の抗がん剤を経た難治例に対し、4種類目の抗がん剤に樹状細胞ワクチン療法を組み合わせました。併用後、画像上で腹膜播種と腹水の消失が確認されています。
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)では重篤な副作用は多くないとされますが、体調や併用治療によってリスクは異なります。主な副作用・注意点は以下のとおりです。
本症例は、手術と複数の抗がん剤治療を経ても腹膜播種が制御できず、有効な抗がん剤の選択肢が限られていた状況で、抗がん剤と免疫療法の併用後に腹膜播種と腹水の消失が確認されたケースです。ただし治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。
当グループでは他のがん種でも、胃がん76歳男性で腹膜播種が消失したケース、スキルス胃がんで症状が改善したケース、再発スキルス胃がんで完全寛解に至った80歳男性のケース(国際査読誌掲載)などを経験しています。
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。
当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台に、患者さまお一人おひとりの状況に応じてSynerTri®(免疫療法)を設計します。バイオマーカー・治療歴・全身状態をもとに、次に検討すべき選択肢をお伝えします。

【監修者】岡崎 能久
大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。
略歴:
2001/3
大阪大学医学部卒業
2001/6
大阪大学医学部附属病院内科研修医
2002/6
大阪厚生年金病院 内科 研修医
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