投稿日:2024.10.15/更新日:2024.10.26
膵臓がん(膵臓癌)における遺伝子変異は、がんの進行や治療の選択に大きく影響します。膵臓がんで頻繁に見られる主要な遺伝子変異には、次のようなものがあります。
KRAS変異:臓がんの約90%で見られる最も一般的な変異です。KRASは細胞の増殖や分裂に関与する遺伝子で、変異すると異常な細胞増殖が引き起こされ、がん化につながります。
TP53変異:TP53は腫瘍抑制遺伝子であり、細胞が損傷したDNAを修復したり、不要な細胞をアポトーシス(細胞死)させたりする役割を果たします。膵臓がんではTP53の変異が50-70%で見られ、がん細胞の生存や増殖を促進します。
CDKN2A (p16)変異:CDKN2Aは細胞周期を制御する遺伝子で、この遺伝子が変異すると、細胞の増殖が制御不能になりがん化します。膵臓がんでは20-30%の患者に見られます。
SMAD4 (DPC4)変異:SMAD4は細胞の増殖や分化を調節する遺伝子で、膵臓がんの30-50%で変異が見られます。この変異はがんの進行や転移と関連しているとされています。
BRCA1/BRCA2変異:これらの遺伝子はDNA修復に重要な役割を果たします。BRCA1やBRCA2に変異があると、がんの発生リスクが高まります。膵臓がん患者の約5-7%でBRCA遺伝子の変異が見つかり、特に家族歴のある患者で重要な変異です。この変異は、プラチナ製剤やPARP阻害薬など特定の治療の標的としても利用されます。
PALB2変異:BRCA2と相互作用してDNA修復を助ける遺伝子です。PALB2の変異は膵臓がんの一部の患者で見られ、特定の治療選択に影響を与えます。
これらの遺伝子変異は、膵臓がんの診断や治療戦略において重要な役割を果たします。特に、BRCA1/BRCA2やPALB2変異を持つ患者では、PARP阻害薬が有効であることが示されています。また、KRAS変異などは標的治療の研究対象となっています。
遺伝子検査は個々の患者に最適な治療法を選択するために重要です。
【監修者】矢﨑 雄一郎
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。
略歴:
1996/3
東海大学医学部卒業
1996/4
東海大学附属病院消化器外科勤務
2000/11
遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社