無料医療相談

FREE CONSULTATION

TOP コラム がんの原因となる細菌・ウイルスと発がんのメカニズム【最新の研究】

投稿日:2023.8.4/更新日:2024.12.31

がんの原因となる細菌・ウイルスと発がんのメカニズム【最新の研究】

がん原因の一つが細菌・ウイルスであることは良くご存じかと思いますが、によって発症する病気ですが、中でも細菌感染ががんの悪化の引き金になっている可能性がある

がわかっています。これらの細菌は長期にわたる感染や慢性炎症を通じて細胞にダメージを与え、がんの発生を促進することがあります。本記事では、がんの原因となる細菌の種類や、発がんのメカニズム、予防策などについて詳しく解説します。

がんの原因となる細菌とは?

がんの原因となる細菌・ウイルスにはいくつかの種類があり、臓器や組織に感染することで、がんのリスクを高めることがあります。直接的にDNAを損傷させるだけでなく、慢性的な炎症を引き起こすことで、細胞の異常増殖を促進することも。ここでは、がんの原因となる代表的な細菌をご紹介します。

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)は、胃に感染する細菌です。慢性的な胃炎や胃潰瘍、そして胃がんのリスクを高めます。胃の内壁に住み着き、炎症を引き起こすほか、ウレアーゼという酵素を分泌し、胃の酸性環境を中和して生存しようとします。この過程によって胃の防御機能を低下させ、がんの発生につながります。

ヒトパピローマウイルス(HPV)

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性行為を通じて感染するウイルスで、子宮頸がん・中咽頭がん・肛門がんなどとの関連が強いとされています。HPVには多くの型があり、中でも高リスク型(16型と18型)は、がんの発生に関係しています。

HPVは感染した細胞のDNAに影響を与え、異常な細胞増殖を引き起こします。HPVワクチンを接種することで、感染予防の対策ができます。

肝炎ウイルス(HBV, HCV)

B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)は、肝臓に感染するウイルスで、慢性的な肝炎を引き起こします。肝細胞に持続的なダメージを与え、肝硬変や肝がんのリスクを高めます。このウイルスも、ワクチン接種や適切な治療が重要となります。

エプスタインバーウイルス

エプスタインバーウイルス(EBV)は、ヘルペスウイルス科の一種で、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、胃がんなど多くのがんと関連しています。EBVは、主に唾液を通じて感染し、体内でBリンパ球に感染します。感染した細胞は異常な増殖を始め、がんの発生につながることがあります。特にバーキットリンパ腫は、アフリカなどの一部の地域で高い発症率があると言われています。予防策や早期発見が、EBV関連のがんのリスクを軽減するために重要です。

ヒトT細胞白血病ウイルスI型

ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)と関連するウイルスです。HTLV-1は主に母乳や性行為、血液製剤を介して感染し、一度感染すると体内でTリンパ球に潜伏します。HTLV-1に感染したTリンパ球は異常な増殖を始め、数十年の潜伏期間を経てATLに進行することがあります。HTLV-1感染の予防には、母乳を通じた感染を防ぐための対策や、感染者との性行為をしないことが有効です。

細菌・ウイルスによる発がんのメカニズム

細菌による発がんのメカニズムは非常に複雑で、さまざまな要因があります。

 

病原体が細胞に感染すると、遺伝子変異が引き起こされることがあります。例えば、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)は胃の細胞に感染し、DNA損傷を誘発することでがん遺伝子の変異を促します。この変異が細胞の増殖を制御不能にし、がんの発生を引き起こすのです。

 

またがん関連遺伝子の発現制御にも影響を与えます。ヒトパピローマウイルス(HPV)はE6やE7というタンパク質を産生し、細胞の増殖を抑える遺伝子を抑制します。その結果、細胞は異常に増殖し続け、がんのリスクが高まります。

さらに、慢性炎症もがんの発生に関係しています。細菌・ウイルスによる感染は慢性的な炎症を引き起こし、細胞にダメージを与えます。炎症の過程で細胞の修復が繰り返される際に遺伝子変異が蓄積されることも。例えば、H. pylori感染による慢性胃炎は長期にわたる炎症によって胃がんのリスクを高めます。炎症に伴うサイトカインの過剰産生や免疫細胞の活性化も、がんの進行を促す要因となります。

細菌感染とがんの最新研究

最新の研究によると、口腔がん(口腔癌大腸がん(大腸癌でも、ある種の細菌が、腫瘍細胞・免疫細胞と相互作用し、腫瘍悪化の引き金になっているのではないかと考えられるようになってきました。

驚くことに、脳腫瘍組織内にも、細菌が発見されることがあるようです。

最新の研究では、ある種の抗生剤が、抗がん剤として使える可能性等を示唆しているとのこと。

細菌によって抗がん免疫能を高める‘善玉菌‘も存在する一方、細菌と腫瘍が関係を持っている場合も考えられ、複雑なようです。

参考文献:がんの中にすむ細菌、がんの増殖や転移を助ける仕組みで新発見 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

細菌・ウイルス感染の予防とがんリスクの軽減

細菌・ウイルス感染の予防は、がんの発生リスクを抑えるために非常に重要です。ここでは、リスクを軽減させる方法について解説します。

ワクチンや抗菌治療の役割

ワクチンは、細菌やウイルスによる感染を予防するための大きな手段です。例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、子宮頸がんやその他の関連がんの予防に非常に効果的とされています。また、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンは、慢性肝炎や肝がんのリスクを大幅に減少させます。さらに、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染に対する抗菌治療は、胃がんリスクを低減する効果が期待できます。このように、ワクチンや抗菌治療は、がんの発生を抑えるために重要です。

健康的な生活習慣の重要性

健康的な生活習慣も、細菌感染の予防とがんリスクの軽減に重要な役割を果たします。バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠は免疫力を高めて、感染症に対する抵抗力を強化します。また、タバコや多量のアルコール摂取を避けることも、がんリスクを低減するために重要です。衛生的な環境を保つことや、食事前の手洗い、調理器具の清潔さを保つことなども、細菌・ウイルス感染の予防に効果的です。日常生活においてこれらの習慣を実践して、がんの発生リスクを軽減させていきましょう。

監修医師

岡崎 能久医師

内視鏡診断/治療・研究開発

大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。