無料医療相談

FREE CONSULTATION

TOP › コラム › テーマ › 免疫療法 › 膵臓がん治療で注目されているmRNAワクチンのメカニズムとコロナ禍での活躍

免疫療法

投稿日:2023.7.13/更新日:2026.10.21

膵臓がん治療で注目されているmRNAワクチンのメカニズムとコロナ禍での活躍

この記事でわかること

  • mRNAワクチンは、患者さんご自身の細胞にがん由来のたんぱく質を作らせ、免疫に覚えさせる治療です
  • 膵臓がんの約90%にKRAS変異があり、mRNAワクチンはこうした変異を標的にします
  • 単独ではなく、化学療法や放射線と組み合わせて効果を高める設計が検討されています
  • 個別化がんワクチンはまだ臨床試験の段階です。同じ仕組みでいま受けられるのが樹状細胞ワクチン療法です

膵臓がんは再発しやすく生存率が低いと言われているがんですが、新しい治療法としてmRNAワクチンが注目されています。開発が早く、作るまでに時間がかからないことから、コロナ禍において活躍したワクチンでもあります。本記事では、mRNAワクチンのメカニズムやターゲットにする遺伝子変異などについて詳しく解説します。

膵臓がんの治療で注目されているmRNAワクチン

膵臓がんの治療には、外科的療法や化学療法などが行われていますが、その中でも注目されているのがmRNAワクチンです。ここでは、mRNAワクチンのメカニズムやターゲット、併用について解説します。

mRNAワクチンのメカニズム

mRNAワクチンは、タンパク質の合成を促すメッセンジャーRNAを使用して免疫応答を引き起こします。ワクチンによってmRNAを細胞内に送り込み、患者様自身の細胞を利用して特定のタンパク質(例えば膵臓がん由来のタンパク質)を合成させます。このタンパク質が細胞の表面に現れると、免疫システムは脅威と認識して、対抗するための抗体とT細胞を生成するのです。

mRNAワクチンがターゲットにする遺伝子変異

mRNAワクチンは、膵臓がんで多くみられるKRAS遺伝子の変異由来のタンパクをターゲットとする能力を持っています。KRAS変異は膵臓がん患者の約90%に見られる遺伝子ですが、ターゲットとすることでがん細胞のみを効率的に攻撃することが可能になります。KRAS以外にもターゲットとなる遺伝子は数多くあります。

TP53 「がん抑制遺伝子」として知られており、多くのがんで変異が確認されています。変異TP53タンパク質は、がんワクチンのターゲットとして研究されています。
EGFR(上皮成長因子受容体) 肺がんや大腸がんなどで過剰発現や変異が確認されており、がんの増殖や進行に関わる重要な遺伝子です。
HER2(ERBB2) 乳がんや胃がんで過剰発現している遺伝子で、既存のHER2ターゲット治療に加え、mRNAワクチンでもターゲットとされています。
NY-ESO-1 多くのがんで発現するが、通常は健康な組織では発現しない「がん・精巣抗原」の一種。免疫系ががん細胞を特異的に認識できるため、ワクチンのターゲットとして注目されています。
MUC1 乳がんや膵臓がん、卵巣がんで異常に発現している細胞表面タンパク質で、免疫療法の標的として広く研究されています。
TERT(テロメラーゼ逆転写酵素) 多くのがん細胞で高い活性を示す酵素で、がん細胞の不死化に関与しています。これを標的としたmRNAワクチンの研究も進められています。

他の治療法との併用が可能

mRNAワクチンは他の治療法と組み合わせて使用することが可能です。例えば、化学療法や放射線療法と併用することで、治療の効果を高めることが期待されます。また、mRNAワクチンは標的治療薬との相乗効果を生む可能性もあります。

mRNAがコロナ禍で話題になったのはなぜか?

コロナ禍において、mRNAワクチンが注目を集めました。mRNAワクチンは、遺伝子の情報を使ってタンパク質を生成し、それに対する免疫応答を促す仕組みです。従来のワクチンとは異なり、mRNAワクチンは活性化されたウイルスを使用せずにウイルスの遺伝子の一部の情報だけを利用するため、早く開発することができ、生産が容易であるため、大量生産に適しています。この柔軟性を生かして、2020年初頭にコロナウイルス対策のために急速に開発されました。短い期間で設計され、臨床試験に成功すると、数ヶ月という驚異的な速さで全国に配布が始まりました。このスピードの速さと高い効果、安全性によって、世界中で注目されることとなり、パンデミックの流れを変える重要な役割を果たしたのです。

【臨床治験結果】他治療との併用で免疫応答の誘導を示す

コロナウイルス対策で広く知られるようになったmRNAワクチンですが、膵臓がん治療への応用についての興味深い研究結果が『Nature』誌に掲載されました。

【研究内容】
・膵管腺がんの患者16名を対象に、個別化されたmRNAワクチン「autogene cevumeran」を使用したアジュバント療法を実施。
・患者たちはmRNAワクチンと化学療法、免疫療法を併用した治療を受診。

【研究結果】
治療を受けた患者の半数に強いT細胞応答が観察され、mRNAワクチンが効果的に免疫応答を引き起こすことが確認されました。
さらに、18ヶ月にわたる追跡調査では、これらの患者が持続的な免疫反応を示し、がんの再発までの期間が延長されたことが明らかになりました。

このワクチンの作用メカニズムは、コロナウイルス用ワクチンと同様に、樹状細胞に取り込まれた後、リンパ節でキラーT細胞を活性化させるというものです。樹状細胞は免疫療法においても中心的な役割を果たしており、将来的にはこれらを使用せず、直接mRNAワクチンの投与だけで治療が行われる可能性も考えられます。この新しい治療法に対する期待が高まっています。

参考文献:https://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/research/14490?fbclid=IwAR0IxwMZ5gsX2wLN3JbDj0YMmP3bJnnzaIDYmBPpb7bNJFeI6yxV0P9XSAo

当院の実例

上腸間膜動脈への浸潤で手術も放射線も適応外だった膵頭部がんステージ3が、抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法で半分に縮小し、陽子線治療が可能になった60代男性

慢性的な下痢の精査で膵頭部がんと診断され、リンパ節・遠隔転移はないものの動脈浸潤のため手術・放射線の適応がなく、抗がん剤(FOLFIRINOX)と樹状細胞ワクチン療法を開始しました。腫瘍は半分に縮小し血管浸潤も半減したことで陽子線治療(20回)と抗がん剤(TS-1)が可能となり、終了後のCTでさらに半分、診断時の1/4まで縮小。腫瘍マーカーも大幅に低下し、元気に外来へ通院されています。mRNAワクチンが目指す「免疫にがんの目印を教える」治療を、樹状細胞という形でいま実施している一例です。

症例の詳細を見る →

※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

よくある質問

膵臓がんのmRNAワクチンは日本で受けられますか?

2026年時点では臨床試験の段階で、日本で承認された膵臓がん向けmRNAワクチンはありません。当院では、同じ「免疫にがんの目印を教える」仕組みを持つ樹状細胞ワクチン療法を提供しており、抗がん剤や放射線と組み合わせて設計します。

mRNAワクチンと樹状細胞ワクチンは何が違いますか?

mRNAワクチンは体内の細胞にがん抗原を作らせて樹状細胞に届ける方法、樹状細胞ワクチンは患者さんの樹状細胞を体外で培養し、がん抗原を直接覚えさせて戻す方法です。どちらも最終的に樹状細胞がキラーT細胞を教育する点は共通です。

KRAS変異の型は調べておいた方がよいですか?

調べておくことをおすすめします。ワクチンや分子標的薬の多くは変異の型(G12D・G12V・G12Cなど)ごとに対象が決まります。遺伝子パネル検査やリキッドバイオプシーの手配と結果の読み解きは、当院のRAS変異がん専門外来で行っています。

膵臓がんのワクチン治療に関心のある方へ
いま受けられるワクチン療法を、当院に相談してみませんか?

mRNAワクチンは臨床試験の段階ですが、がんの目印を狙う考え方は共通です。
当院では樹状細胞ワクチン療法として、個別化したがんワクチンを提供しています。
これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、ひとつずつご説明します。ご相談は無料です。

お電話でご相談

お近くの院をお選びください(平日10:00〜18:00/休診日はホームページをご確認ください)

または、フォームでご相談

フォームで相談する▼入力は2項目のみ/24時間受付







    お電話・メールのどちらか一方で結構です





    監修医師:岡崎 能久医師

    監修医師

    岡崎 能久医師

    内視鏡診断/治療・研究開発

    大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。

    CATEGORY

    カテゴリー

    CATEGORY

    関連記事