分子標的薬治療

膵臓がん、大腸(直腸)がん、横紋筋肉腫、GIST(消化管間質腫瘍)の新たな治療の可能性(プレシジョンメディシン)

私どものクリニックでは、ゲノム医療(プレシジョンメディシン)を提供させて頂いております。

遺伝子パネル検査で、異常遺伝子、対応分子標的薬が見つかった場合は、内服治療をお薦めしております。

しかし、残念ながら、一部の患者さまでは、薬の効果が無くなる=薬剤耐性が出現します。

この、分子標的薬の薬剤耐性の問題を解決する試みの一つが、今回の論文で試みられている、

2個の分子標的を同時攻撃する方法です。

一部の患者さまでは、効果が認められているようです。

『Concomitant MEK and Cyclin Gene Alterations: Implications for Response to Targeted Therapeutics』
Clin Cancer Res  2021 May 15.

この研究は、進行性悪性腫瘍患者において、サイクリン(CDK4/6)およびMEK経路の両方を標的とする療法の可能性を発表しています。

このアプローチの理論的背景は、CDK4/6またはMEK経路を単独で標的とする治療法がしばしば失望を招くことから、サイクリンおよびMEK経路の遺伝子に変異が共存する場合には、がん遺伝子のコドライバーの活性化が起こる可能性があると考えられています。

治験デザインは、CDKN2Aおよび/またはCDKN2Bの変異(CDK4/6を上昇させる)と同時にKRASまたはBRAFの変異(MEK経路を活性化させる)を有する進行性悪性腫瘍を持つ9人の患者を対象としました。

これらの患者は、palbociclib(CDK4/6阻害剤)およびtrametinib(MEK阻害剤)の組み合わせ治療を受けました。

(結果)
2人の患者で部分的寛解(PR)を達成し、全患者の56%が臨床的有効性(少なくとも6か月以上の安定した疾患またはPR)を経験しました。

無増悪生存期間は約7~17.5+ケ月でした。

特筆すべきは、MEK標的療法でPDであった1人の患者が、palbociclib(CDK4/6阻害剤)追加後に、約1年間経過良好であった症例です。

(結論)
腫瘍が、経路の両方を活性化するゲノム変異を有する場合に、サイクリンおよびMEKシグナルを同時に標的とすることで治療効果を高まる可能性を示唆しています。

この研究は、単一標的療法で見られる抵抗性を克服するために、組み合わせ療法の可能性を強調しています。

抵抗性を克服するためのさらなる前向き研究が必要です。

腫瘍のゲノム変異特性を理解して、より効果的で個別化された治療戦略を設計する重要性を強調しています。

プレシジョンクリニックグループ
岡崎医師 監修

【監修者】岡崎 能久

大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。

略歴:

2001/3

大阪大学医学部卒業

2001/6

大阪大学医学部附属病院内科研修医

2002/6

大阪厚生年金病院 内科 研修医

2003/5

国立循環器病センター内科レジデント

2004/5

大阪大学内科大学院生・研究生

2005/4

大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 入学

2009/3

大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 終了

2010/3

社会医療法人若弘会若草第一病院消化器内科

2011/4

川崎病院消化器内科)

2012/4

愛染橋病院消化器内科

2014/4

近畿大学医学部附属病院(大阪府内)消化器内科

2016/4

近畿大学医学部附属病院(奈良県)消化器内科

2018/1

大阪府立羽曳野医療センター消化器内科

2022/4

医療法人社団プレシジョンメディカルケア プレシジョンクリニック名古屋院長

専門分野:
内視鏡診断/治療・研究開発

認定医・資格等:
日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医
日本医師会認定産業医