ナチュラルキラー細胞（NK細胞）に注目！進化する自然免疫の代表、ナチュラルキラー細胞を用いた新たな免疫療法。

当グループの主な免疫療法は樹状細胞ペプチドワクチン療法ですが、ナチュラルキラー（NK）細胞療法も治療オプションとして提供しています。

最近、このNK細胞療法ががん免疫細胞療法薬として注目を集めています。NK細胞は自然免疫系に属し、キラーT細胞が苦手とするがん細胞（MHCが消失した腫瘍細胞）を攻撃できるだけでなく、他人のNK細胞を使った治療も可能であるなど、柔軟性に富んでいます。

ナチュラルキラー細胞（NK細胞）に注目！

『Natural killer cells may broaden access to advanced cancer therapy』 Nature Research Custom, 1 Apr 2024

ナチュラルキラー細胞（NK細胞）は、遺伝子治療との相性が良いかもしれません。CAR-T細胞療法とは異なり、CAR-NK細胞療法は多くのがんに対してオフ・ザ・シェルフ（他人の細胞でも使用可）で使用できる可能性があります。

2010年に、初めてがんに対するCAR-T細胞療法が行われました。この治療法は、患者のT細胞にCAR（キメラ抗原受容体）の遺伝子を導入し、がん細胞を排除する能力を大幅に向上させました。しかし、CAR-T細胞療法には治療コストや個別化製造の複雑さ、関連する毒性の改善が必要です。

そのため、T細胞とは異なる特徴を持つナチュラルキラー細胞（NK細胞）にCAR遺伝子を導入することが検討されました。NK細胞は自然免疫系であり、T細胞とは異なるメカニズムでがん細胞を認識して殺す能力に優れています。また、NK細胞はGVHD（移植片対宿主病）を引き起こさないため、他人ドナーから供給することができます。

したがって、1人のドナーからのナチュラルキラー細胞（NK細胞）を複数の患者に使用することが可能になります。これは治療コストを削減し、オフ・ザ・シェルフでの治療を提供できる可能性があります。

ナチュラルキラー細胞（NK細胞）の資源としては、臍帯血を選んでいます。臍帯血は健康な個人から多数のNK細胞を得ることができ、がん患者から得られるものよりも優れた効果があります。通常のNK細胞は持続性を維持するためにサイトカインが必要で、1〜2週間で死んでしまいます。臍帯血を使用することで、NK細胞の増殖と生存が向上しました。

臍帯血から採取されたNK細胞に、CD19を標的とするCARとIL-15の遺伝子を組み込み、CD19を発現するB細胞腫瘍に対して臨床試験を行いました（Marin, D. et al. Nature Medicine, https://doi.org/mdqq; 2024）。

CD19陽性B細胞腫瘍を持つ37人の患者をこのCAR-NK細胞療法で治療した結果、いずれも重篤な毒性はなく、安全性が確認されました。患者の約半数が治療に反応し、3分の1の患者ではがんが1年以内に進行しなかったという結果が得られました。また、最良の反応は24時間以内に凍結された臍帯血から得られたことが分かりました。

「私たちのグループでは、様々な抗原を標的とする免疫治療アプローチを検証しています。このNK細胞アプローチは、多くのがんの治療に適用するだけでなく、オフ・ザ・シェルフのNK細胞がん治療を現実にする可能性もあります。これらのデータには非常に感銘を受けました。患者を助けるために、CAR-NK細胞療法の未来を楽しみにしています。」

プレシジョンクリニックグループ
岡崎能久