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TOP コラム 膵臓がん(膵臓癌)は、なぜKRAS(ケーラス)タンパクの遺伝子変異が多いのか?

投稿日:2024.10.31/更新日:2024.11.12

膵臓がん(膵臓癌)は、なぜKRAS(ケーラス)タンパクの遺伝子変異が多いのか?

膵臓がんにおけるKRAS遺伝子変異の高頻度は、膵臓がんの特性と発がんメカニズムに関わるいくつかの要因が関係しています。

  1. KRASの役割: KRAS遺伝子は、細胞の増殖や分化、運動、アポトーシス(細胞のプログラムされた死)などのシグナル伝達に重要な役割を果たしています。KRASが活性化されると、細胞は成長と分裂を促進されます。正常な場合、KRASは制御されて動作しますが、変異が生じるとこのシグナルが常に「オン」の状態になり、細胞の無制御な増殖を引き起こし、がんの発生に繋がります。
  2. 膵臓がんの特徴: 膵臓がん(特に膵管腺癌)は、非常に高い頻度でKRAS遺伝子の変異が見られます。研究によると、膵管腺癌患者の90%以上でKRAS変異が確認されています。膵臓は化学物質や食事中の毒素にさらされやすい臓器であり、これらの影響でKRASのようながん遺伝子に変異が蓄積しやすいとされています。
  3. 膵管細胞における選択的プレッシャー: 膵臓の腫瘍細胞は、KRAS変異がん細胞の成長を促進するような選択的な進化的圧力にさらされています。つまり、KRAS変異を持つ細胞が他の正常細胞よりも生き残りやすく、増殖しやすい環境が膵臓がんの発生に寄与しています。
  4. KRAS変異の早期発生: KRAS変異は、膵臓がんの非常に初期の段階で発生し、病気の進行に大きく関与しています。この変異はがんの始まりから存在するため、膵臓がんの進展に重要な役割を果たしています。KRAS変異は膵臓がんの発がん経路の一部であり、他のがん抑制遺伝子(TP53やSMAD4など)の異常と共に膵臓がんの発生を促進します。

膵臓がんにおけるKRAS変異は、その高い治療抵抗性や進行の早さに関与しているとされており、治療法の開発が難しい理由の一つでもあります。

 

【監修者】矢﨑 雄一郎

東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック神戸院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

略歴:

1996/3

東海大学医学部卒業

1996/4

東海大学附属病院消化器外科勤務

2000/11

遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社

2003/4

東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング寄附研究部門研究員

2004/6

テラ株式会社設立 代表取締役社長

2010/1

株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 取締役

2012/3

テラ株式会社代表取締役社長 社長執行役員

2013/3

テラ株式会社代表取締役社長

2013/5

タイタン株式会社 取締役(現任)

2014/1

テラファーマ株式会社 代表取締役社長

2014/2

株式会社オールジーン 代表取締役社長

2014/8

テラ少額短期保険株式会社 取締役会長

2015/12

株式会社オールジーン 取締役

2016/6

株式会社オールジーン 代表取締役社長

2016/10

テラファーマ株式会社 代表取締役会長

2017/3

テラ株式会社代表取締役社長CEO

2019/4

医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事

2019/10

プレシジョンクリニック神戸院長

専門分野:
一般外科・消化器外科

著書:
著書『免疫力をあなどるな!』