投稿日:2026.10.6/更新日:2026.11.6
この記事でわかること
肺がんと告げられたとき、これからの治療や生活に不安を感じる方は少なくありません。病期や遺伝子のタイプにより治療方針は大きく異なります。2026年9月は術後の長期予後から進行期の薬剤選択、脳転移への局所治療まで実臨床に直結する知見が相次ぎました。最新の知見を知ることは納得のいく治療を選ぶ力になります。現在治療中の方もこれからの治療を考える方も、ご自身の状況と照らし合わせて参考にしてください。
EGFR変異陽性の切除可能非小細胞肺がんにおいて、術後オシメルチニブ療法の8年全生存率が7割を超えたことが世界肺がん学会で示されました。手術後の再発リスクを抑えるだけでなく、長期生存に確実に寄与することが臨床試験ADAURAの追跡解析で証明された形です。
従来の抗がん剤による術後化学療法では、生存率の上乗せ効果は数パーセントにとどまっていました。本解析では病期2期から3A期の集団でも7割以上の生存率が維持されており、分子標的薬を術後に用いる意義が明確になりました。
この治療法はすでに保険診療として確立しており、今すぐ実臨床で受けていただけます。一方で内服期間が3年に及ぶため、爪囲炎や皮疹、下痢といった副作用の管理が欠かせません。
外来でも患者さまから「術後の分子標的薬をいつまで続けるべきか」と質問されることがあります。長期的な安全性を保ちながら治療を完遂するためにも、不安や体調の変化があれば主治医や当グループにご相談ください。
EGFR陽性の進行非小細胞肺がんにおいて、TP53遺伝子の共変異が初回治療の選択指標として注目を集めています。分子標的薬単剤で進めるか抗がん剤を併用するかを判断する手掛かりになるためです。
一次治療ではオシメルチニブ単剤に加え、プラチナ併用化学療法を組み合わせる選択肢があります。併用療法は奏効期間を延ばす期待がある一方、骨髄抑制や強い倦怠感など通院治療への負担が増します。
EGFR陽性例の約半数に認められるTP53遺伝子の変異を事前に調べることで、毒性を冒してでも強力な併用療法を行うべき集団を絞り込める可能性が示唆されました。これは遺伝子変異の組み合わせに基づく個別化医療の進展を意味します。
遺伝子パネル検査は現在保険適用で実施可能ですが、TP53共変異に基づく治療選択の最適化は現場での議論が続いています。ご自身の遺伝子プロファイルに応じた治療の組み合わせについて、ぜひ主治医や当グループにご相談ください。
小細胞肺癌の脳転移に対して、病変部位を狙い撃ちする定位放射線治療が全脳照射と同等の全生存期間を示すことが第3相試験で明らかになりました。米国放射線腫瘍学会で発表された知見です。
転移数が中央値2個という限局した状況において、周囲の正常脳組織へのダメージを抑えつつ生存期間が保たれました。認知機能低下の有意な予防までは示せなかったものの、治療の選択肢を広げる結果です。
小細胞肺癌ではこれまで予防的あるいは治療的な全脳照射が標準とされてきましたが、照射後の倦怠感や認知機能への影響が懸念されていました。今後は転移個数が少ない場合に限り、定位照射が有力な選択肢となります。
この手法は既存の放射線治療装置で直ちに臨床応用が可能です。局所治療の選択がその後の生活の質を大きく左右しますので、脳転移の治療方針に迷われた際は遠慮なく主治医や当グループへご相談ください。
第一三共は進展型小細胞肺がんに対する抗体薬物複合体イフィナタマブ デルクステカンの米国における迅速承認申請を取り下げました。迅速承認に必要な要件を満たしていないと判断したためです。
本剤は化学療法後に病状が悪化した患者さまを対象に開発が進められている新規薬剤です。開発自体が中止されたわけではありませんが、速やかな臨床現場への導入には一定の遅れが生じる見通しとなりました。
早期の実用化を期待していた患者さまやご家族にとっては慎重な見極めが必要な状況です。現在は進行中の臨床試験データの集積を待ち、確固たる有効性と安全性の証明が求められる段階にあります。
国内でも治験段階であり、一般診療で使えるようになるにはまだ時間がかかります。最新の治験情報や代替となる治療選択肢について詳しく知りたい方は、主治医や当グループにご相談ください。
肺がん領域では、手術後の長期生存データの蓄積から遺伝子プロファイルに応じた治療選択、脳転移への低侵襲な放射線治療まで個別化医療が着実に進んでいます。プレシジョンクリニックグループが創業以来最も取り組んでいるがん種が肺癌です。当グループではゲノム解析や腫瘍微小環境の評価に基づき、患者さま一人ひとりに最適な治療方針を見極める診療を積み重ねています。
治療の選択肢に迷われた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
受けられます。EGFR変異陽性の切除可能な非小細胞肺がんに対する術後オシメルチニブは、保険診療として確立しています。内服期間は3年に及ぶため、爪囲炎や皮疹、下痢などの副作用の管理が欠かせません。体調の変化があれば主治医にご相談ください。
EGFR陽性の約半数に認められ、オシメルチニブ単剤にプラチナ併用化学療法を加えるかを判断する手がかりになります。併用は奏効期間を延ばす期待がある一方、骨髄抑制や強い倦怠感など負担が増します。遺伝子パネル検査は保険で受けられますが、TP53共変異に基づく選択の最適化は現場で議論が続いています。
使えません。進展型小細胞肺がんを対象とした抗体薬物複合体で、米国では迅速承認の申請が取り下げられました。開発が中止されたわけではありませんが、導入には遅れが生じる見通しです。日本では未承認で、保険診療では使えません。
監修:矢﨑 雄一郎 医師
プレシジョンクリニック 東京院長/医療法人社団プレシジョンメディカルケア 理事長 | 専門分野:一般外科・消化器外科
がんゲノム情報に基づく個別化医療と免疫療法を専門とし、標準治療と組み合わせた治療設計に取り組んでいます。著書『免疫力をあなどるな!』。
【免責事項】本記事は2026年9月に公表された公的機関の発表・査読論文・主要医学メディアの報道に基づいて作成しています。一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の患者さまへの診療を行うものではありません。記載した治療のなかには、国内の保険適用や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療方針は、主治医または専門医にご相談ください。
【最終更新日】2026年10月1日
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。