用語集 DICTIONARY

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がん治療の目標

がん治療の目標を大雑把に分けると、がん細胞を体内から一掃する「根治(完治)」、一掃は無理でも当面命を取られないようにする「共存・延命」、苦痛を抑えたり取り除いたりする「緩和」となります。 それぞれの目標に応じて、基本となる治療法が様々に組み合わせられます。まずは基本となるがん治療を、がんの分類に照らしながら押さえることが大切です。がんは、がん化する細胞の種類によって、癌、肉腫、白血病などに分かれます。 がんと肉腫、つまり固形腫瘍の場合、早期で原発部位に留まっているのであれば、丸ごと完治を望むことが可能です。このような場合に行われるのが「局所治療」で外科的に切除する「手術」が最も一般的です。がんの種類と広がりや全身状態によっては「放射線療法」が選ばれることもあります。

放射線療法はX線やガンマ線、重粒子線、陽子線といった放射線をがん細胞へ照射して死滅される方法です。最大の特徴は「切らずに治す」点。低侵襲、つまり臓器の形態や機能を温存でき、多くは手術よりQOL(生活の質)の低下が少なくて済みます。 白血病など全身性のがんや、固形腫瘍でも血管やリンパ管を通じてがん細胞が全身へ回ってしまっている場合(遠隔転移)には、「全身療法」が選択されます。具体的に行われるのは「化学療法」と呼ばれる抗がん剤の投与です。最近では、がんを狙い撃ちにする「分子標的薬」が進歩しています。また、乳がんや前立腺がんなど、ホルモンによく反応する性質がある場合にはホルモン剤等を使った「ホルモン療法」も選択肢となり得ます。

ほとんどの抗がん剤は細胞分裂を阻止したり、細胞の自殺を促すように働きます。がん細胞以外の細胞分裂の多い細胞にも作用しますので、副作用が生じます。効果自体も場合によって異なるので、向き不向きを見極めながら副作用を上手にコントロールする必要があります。なお、近年、多くの分子標的薬が誕生しています。分子標的薬は、がん細胞以外に悪影響がないことをめざした抗がん剤として開発が進んできたものです。したがって、副作用がこれまでの抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)に比べて副作用は少ない薬剤がほとんどです。これらは、根治率向上を目指すため、手術や放射線療法、免疫療法と組み合わせることも多くなっています。

免疫療法については前述の治療に比較して、直ぐに効果が表れる治療法ではありません。それは自己の免疫を回復させることで治療効果を得るものだからともいえます。一方、、一旦効果が表れてくると長く効果が持続することが分かっており、副作用も少ないことから、がんの一掃は無理だとしても共存・延命が期待できる治療ともいえます。医学的には、Long SD(長期的な進行停止)、Slow PD(緩慢な進行)と表現することもあります。