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再発スキルス胃がん、樹状細胞ワクチン療法で完全寛解した80歳男性の症例

胃がん 80歳 男性

再発スキルス胃がんの患者さまですが、重度の肺気腫を患っていたため手術は適応になりませんでした。抗がん剤の継続もできなかったため、免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の局所投与(腫瘍内投与)を開始。結果、スキルス胃がんは完全に消失し、30ヶ月以上の寛解が維持されています。本症例は、国際査読誌「World Journal of Surgical Oncology」に掲載された著効例です(Kobayashi et al., 2014)。

診断名:スキルス胃がん(印環細胞がん)

経過:
重度の肺気腫により根治的な手術はできず、また内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)もスキルス胃がんであるために適用外と判断されました。抗がん剤は副作用により継続できなかったことから、樹状細胞ワクチン療法(WT1・MUC1を標的とした局所投与)を実施。内視鏡(上部消化管内視鏡:EGD)を用いて、胃のスキルス病変に直接ワクチンを投与しました。7回投与後から1ヶ月経過時にはスキルス胃がんは縮小し、病理検査をしたところスキルス胃がんの細胞は消失しました。投与終了後、30ヶ月以上にわたり寛解が維持されています。

※スキルス胃がんは、がんの中でも治癒が困難ながんの1つです。20代でも発症し、極めて予後が不良の病気です。今回は、抗がん剤等の標準治療は行っていないにもかかわらず、樹状細胞ワクチン療法の局所投与のみで無再発状態が30ヶ月以上続いています。スキルス胃がんの詳しい解説と治療法については、別記事で網羅的にご紹介しています。

免疫機能:
樹状細胞ワクチンの局所投与によって、患者さまの体の中にスキルス胃がんと戦うT細胞が3倍以上に増加していました。WT1・MUC1という2つのがん関連抗原に対する特異的な免疫応答が誘導されたことが確認されています。

治療期間・回数:
樹状細胞ワクチン療法(4ヶ月・7回投与)

費用:
治療費の詳細は料金表ページをご覧ください。

副作用・リスク:
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められることはありませんが、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。以下に、可能性のある副作用等についてお示しいたします。

樹状細胞ワクチン療法
成分採血時:めまい、吐き気(迷走神経反射)、口の周り・手足のしびれ等
細胞培養時:培養時の細菌等の汚染等
ワクチン接種時:注射部位の発赤、皮疹、発熱

樹状細胞ワクチンの局所療法で寛解を実現した、希少な症例

本症例は、国際査読誌「World Journal of Surgical Oncology」(BioMed Central発行)に2014年に掲載された症例報告です。オープンアクセス論文として全文が公開されており、世界中の医療従事者・研究者に閲覧されています。

この症例が医学的に注目される3つの理由

  • 標準治療が選択できなかった患者さんへの新たな選択肢
    重度の肺気腫により手術が不可能で、抗がん剤も副作用で継続困難という、極めて治療選択肢が限られた状況でした。一般的な進行・再発がん治療では「打つ手がない」と判断されかねないケースで、樹状細胞ワクチン療法の局所投与が新たな選択肢となり得ることを示した症例です。
  • 樹状細胞ワクチン療法の局所投与単独での完全寛解
    抗がん剤などの標準治療は併用せず、樹状細胞ワクチン療法の腫瘍内投与のみで、病理検査でがん細胞が消失するレベルの完全寛解に至りました。これは免疫療法単独での効果として、極めて希少な症例報告です。
  • 30ヶ月以上の長期寛解維持
    スキルス胃がんは予後が極めて厳しいがんとして知られ、5年相対生存率は10〜20%未満との報告が多い難治がんです。本症例では、投与終了後30ヶ月にわたり無再発状態が維持されており、樹状細胞ワクチン療法による免疫記憶の長期持続が示唆されます。

治療メカニズム(論文に基づく)

本症例で用いられた樹状細胞ワクチン療法は、WT1(Wilms tumor 1)とMUC1(mucin 1)という、2つのがん関連抗原を標的としています。WT1は米国国立がん研究所(NCI)が「最も優先度の高いがん抗原」と位置付けた抗原で、MUC1は胃がんで93%という高い発現率が報告されています。

事前に腫瘍検体の免疫組織化学検査(IHC)で、WT1とMUC1が両方陽性であることを確認したうえで、ワクチンを設計しました。「効きやすい症例を、効きやすい標的で狙う」という、プレシジョン(精密)医療の考え方に基づく治療設計です。

投与方法も特徴的です。通常の樹状細胞ワクチン療法は皮下・皮内投与が一般的ですが、本症例では内視鏡(上部消化管内視鏡:EGD)を用いて、胃のスキルス病変に直接ワクチンを投与する「局所投与(腫瘍内投与)」を行いました。腫瘍局所に高濃度のワクチンを届けることで、効果を高める狙いがあります。

本症例の限界

本症例は1例の症例報告(n=1)であり、すべての再発スキルス胃がんの患者さんに同様の効果が期待できるわけではありません。樹状細胞ワクチン療法の効果は、標的抗原(WT1・MUC1など)の発現状況、患者さんの免疫状態、がんの進行度・組織型、過去の治療歴などによって大きく異なります。当グループでは、こうした個別の条件をゲノム解析・免疫解析で評価したうえで、最適な治療設計を行っています。

論文の引用情報

Kobayashi M, Sakabe T, Chiba A, et al.

Therapeutic effect of intratumoral injections of dendritic cells for locally recurrent gastric cancer: a case report.

World Journal of Surgical Oncology. 2014; 12: 390.

論文全文を読む(外部リンク・英語)

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【監修者】岡崎 能久

大阪大学医学部を卒業後、同大学院の修士課程を終了したのち、関西地方を中心に医療に従事、現在はプレシジョンクリニック名古屋院長として活躍中。専門は内視鏡診断および治療・研究開発。日本内科学会認定医や日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医などの認定医を保有。

略歴:

2001/3

大阪大学医学部卒業

2001/6

大阪大学医学部附属病院内科研修医

2002/6

大阪厚生年金病院 内科 研修医

2003/5

国立循環器病センター内科レジデント

2004/5

大阪大学内科大学院生・研究生

2005/4

大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 入学

2009/3

大阪大学大学院 外科系臨床医学(修士課程) 終了

2010/3

社会医療法人若弘会若草第一病院消化器内科

2011/4

川崎病院消化器内科)

2012/4

愛染橋病院消化器内科

2014/4

近畿大学医学部附属病院(大阪府内)消化器内科

2016/4

近畿大学医学部附属病院(奈良県)消化器内科

2018/1

大阪府立羽曳野医療センター消化器内科

2022/4

医療法人社団プレシジョンメディカルケア プレシジョンクリニック名古屋院長

専門分野:
内視鏡診断/治療・研究開発

認定医・資格等:
日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医
日本医師会認定産業医

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