この症例のポイント
Case Report ─ 当院で治療を行った乳がんの症例
重要症例
トリプルネガティブ乳がんの手術と抗がん剤を終えたあと、樹状細胞ワクチン療法を前の施設から当院へ引き継ぎ、投与の間隔を少しずつ延ばしながら続けてこられた患者さまの経過をご紹介します。トリプルネガティブ乳がんの解説と標準治療は、症例のあとにまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 左乳がん(トリプルネガティブ)ステージ2A |
| 既往歴 | 橋本病 |
| 年齢・性別 | 60代 女性 |
| 治療法 | 乳房切除+腋窩郭清術、化学療法(FEC・タキソール)、樹状細胞ワクチン療法 |
左乳がん(トリプルネガティブ・ステージ2A)と診断され、がんセンターで乳房切除と腋窩リンパ節郭清を受けられました。術後は FEC とタキソールによる化学療法を終えました。この方が治療を受けた当時、トリプルネガティブ乳がんには、ホルモン療法や抗HER2療法のように抗がん剤のあとに続ける薬がなく、治療を終えると経過観察になりました。
この方は、化学療法を終えた翌年から、別の施設(M大学)で樹状細胞ワクチン療法を受けておられました(52回)。その4年後に当院へ相談があり、同じ治療を当院で引き継ぐことになりました。検討の課題は、再発予防を目的とした治療をどのくらいの間隔で、どこまで続けるかでした。
当院では1か月ごとの投与から始め、経過を確認しながら2か月ごと、3か月ごと、5か月ごとへと間隔を延ばしました。術後10年でがんセンターでの経過観察は終了となりましたが、樹状細胞ワクチン療法は、ご本人の希望で現在も続けておられます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 20XX年8月 | がんセンターにて左乳房切除+腋窩郭清術を施行。 |
| 20XX年10月 | 化学療法(FEC100 4コース→タキソール毎週12回)を開始。 |
| 20XX+1年7月 | M大学にて樹状細胞ワクチン療法(52回投与)を実施。 |
| 20XX+5年5月 | 当院にて免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)を開始(1か月毎投与)。 |
| 20XX+5年12月 | 投与間隔を2か月毎に変更。 |
| 20XX+7年2月 | 投与間隔を3か月毎に変更。 |
| 20XX+9年7月 | 投与間隔を5か月毎に変更。 |
| 20XX+10年9月 | がんセンターでの経過観察は終了。 |
| 術後12年時点 | 再発は確認されていない。CTで異常なし。樹状細胞ワクチン療法を継続中。 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、手術と化学療法(FEC・タキソール)という標準治療のあと、再発予防を目的として、免疫を活性化することをねらう〈アクセル〉である樹状細胞ワクチン療法を続けています。投与の間隔は、経過と検査結果を確認しながら段階的に延ばし、当院では約7年にわたって治療とフォローアップを続けています。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。
治療効果には個人差があります。同様の効果を保証するものではありません。
院長から
標準治療を終えたあとの時間を、免疫の面から引き受けるのが、私たちの考え方のひとつです。この方は、投与の間隔を1か月から5か月まで段階的に延ばしながら、樹状細胞ワクチン療法を続けてこられました。免疫の備えを長く続けたことが、術後12年という経過に寄与できた可能性があると考えています。
乳がんにはホルモン受容体(ER・PgR)とHER2タンパクの発現状態によって複数のサブタイプがあります。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、ER・PgR・HER2のいずれも陰性であるサブタイプで、乳がん全体の約15〜20%を占めます。ホルモン療法も抗HER2療法(トラスツズマブなど)も効かないため、化学療法が治療の中心となります。
TNBCは他のサブタイプに比べて再発が起こる場合、術後2〜3年以内に集中する傾向があるとされますが、個人差があります。そのため早期発見時のステージが早くても、術後のフォローアップが重要とされています。
| 乳がんステージ | 特徴 |
|---|---|
| ステージ1 | 腫瘍径2cm以下・リンパ節転移なし |
| ステージ2A(本症例) | 腫瘍径2〜5cmまたはリンパ節転移1〜3個など |
| ステージ3以降 | リンパ節転移が広範囲、または腫瘍が皮膚・胸壁に浸潤 |
ステージ2Aでは手術(乳房切除術または温存術+腋窩リンパ節郭清・センチネルリンパ節生検)に加え、再発リスクを下げる目的で術前後に化学療法を行うのが標準的です。代表的なレジメンにはアンソラサイクリン系(FEC・AC)とタキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)の組み合わせがあります。
手術・化学療法を終えたあとの経過観察期間中に再発リスクをさらに下げる目的で、免疫療法の併用を検討するケースもあります。
TNBCはホルモン療法・抗HER2療法の維持療法が使えないため、標準治療を終えたあとの再発予防手段が限られます。当グループでは、標準治療後の再発予防を目的として樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を長期的に継続する設計を行うことがあります。
| SynerTri®の役割 | 本症例での対応 |
|---|---|
| 標準治療(手術+化学療法) | 乳房切除+腋窩郭清術、FEC・タキソールによる化学療法として実施済み |
| アクセル(免疫活性化) | 樹状細胞ワクチン療法を長期継続し、再発予防を目的とした免疫賦活を図る |

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