この症例のポイント
Case Report ─ 当院で治療を行った胃がんの症例
胃がんで胃の全摘手術を受け、術後の抗がん剤の副作用と体重の減少が続く中で、当院へ相談があった患者さまの経過をご紹介します。胃がんの術後治療の解説は、症例のあとにまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 胃がん |
| ステージ | ステージⅢa |
| 年齢・性別 | 70代 男性 |
| 実施された手術・薬物療法 | 胃全摘術、術後の抗がん剤(カペシタビン+オキサリプラチン。オキサリプラチンは副作用で一時中止し、6クール目に減量して再開) |
| 当院での治療 | 樹状細胞ワクチン療法 |
20XX年2月に胃がんと診断され、手術で胃を全摘されました。手術のあとは、2種類の抗がん剤による治療が始まりました。カペシタビン(商品名:ゼローダ®)とオキサリプラチン(商品名:エルプラット®)です。
抗がん剤の副作用で血液の数値が悪化し、オキサリプラチンは一時中止となりました。6クール目に量を減らして再開しています。抗がん剤の影響と、胃を切除したあとに起こるダンピング症候群もあって食事がとれず、体重は手術前より20kg減っていました。
当院へのご相談は、その時期でした。検討の課題は、副作用がある中で、術後の治療と並行して加えられる治療があるかどうかでした。同年10月から樹状細胞ワクチン療法を始めました。倦怠感や感覚の麻痺・しびれといった抗がん剤の副作用がある中で治療を続け、抗がん剤は11月に終了しています。
12月、手術後の評価のために行ったCTで、腹膜播種と腹水が確認されました。その後も、樹状細胞ワクチン療法を続けました。その後のCTでは腹水が減少し、転移・再発なしと診断されています。抗がん剤は使わず、腫瘍マーカーとCTで定期的に経過を確認しています。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 20XX年2月 | 胃がん(ステージⅢa)と診断。手術で胃全摘。 |
| 術後 | 抗がん剤(カペシタビン+オキサリプラチン)を開始。副作用で血液の数値が悪化し、オキサリプラチンを一時中止。6クール目に減量して再開。抗がん剤の影響とダンピング症候群で食事がとれず、体重が手術前より20kg減少。 |
| 同年10月〜 | 当院で樹状細胞ワクチン療法を開始。 |
| 同年11月 | 抗がん剤を終了。 |
| 同年12月 | 術後評価のCTで腹膜播種と腹水を確認。樹状細胞ワクチン療法を継続。 |
| その後 | CTで腹水が減少し、転移・再発なしと診断。抗がん剤は使わず、腫瘍マーカーとCTで定期的に経過観察。 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、術後の抗がん剤に、免疫を活性化することをねらう〈アクセル〉として、樹状細胞ワクチン療法を組み合わせました。12月に腹膜播種と腹水が確認されてからも、樹状細胞ワクチン療法を続けています。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。
また、併用した抗がん剤(カペシタビン・オキサリプラチン)では、手足のしびれ(末梢神経障害)、手足症候群、吐き気、食欲の低下、白血球や血小板の減少などがみられることがあります。本症例でも、血液の数値の悪化、倦怠感、感覚の麻痺やしびれがみられました。
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。
胃がんのステージⅢは、がんが胃の壁の深いところまで達しているか、リンパ節への転移が多い段階です。手術でがんを取りきったあとも再発のリスクが高いため、術後に抗がん剤を行うのが標準です。
カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせる方法は、その一つです。胃の切除後に行うことで、再発せずに過ごせる期間が長くなることが、臨床試験で示されています(Bang ほか, Lancet 2012)。ほかに、S-1を中心とした方法も用いられます。
胃を切除すると、食べたものが急に腸へ流れ込むため、食後に動悸やめまい、だるさなどが起こることがあります。これをダンピング症候群といいます。一度に食べられる量も減るため、手術のあとは体重が減りやすくなります。
体重の減少や副作用のために、抗がん剤を予定どおり続けられないこともあります。治療の続け方は、体の状態をみながら主治医と相談して決めます。
腹膜播種は、がん細胞がおなかの内側をおおう膜(腹膜)に散らばった状態です。胃がんの再発でみられる形の一つで、腹水がたまることもあります。
当グループでは、主治医のもとで進める標準治療を土台にしています。そのうえで、免疫の働きを後押しする樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる設計を検討することがあります。樹状細胞ワクチン療法は、患者さまご自身の樹状細胞を体外で培養してがんの目印を覚えさせ、体内に戻すことで、キラーT細胞にがんを攻撃させることを目指す治療です。
標準治療に加えた場合の上乗せの効果は、大規模な臨床試験で確立されたものではありません。適するかどうかは、病状と体の状態をみて個別に判断します。

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